果たすべきこと
さてヴァ―ナに来た目的を果たすとするか。
俺は冒険者組合の扉を思いっきり豪快に開けた。
勿論なんだ何だと俺に視線が集まる。
「あーあー。ごほん。えぇーとこれから言うことはとても大事なことだ、よく聞けよー。」
「なんだおめえ。」「誰が聞くかよ。」「もっと静かに開けろ!」
「じゃあ聞かなくてもいいがこれから言うことはちゃんと聞いたほうがいいぞー。
まずー。この街は滅びます。」
「マソさん出鱈目はやめてください!これ以上は冒険者規則に則って処分対象になります。」
あれはさっきの受付の人か。
「いいぞ別にこの元魔王の俺にそんなものは通用しないがな。」
この一言でまわりにいた住人、冒険者、門番などなどは驚いた顔をしていた。
「元魔王として現魔王ヴァ―ナに告ぐ、この街ヴァ―ナは俺が滅ぼす。ヴァ―ナ聞いてるんだろう、もう隠れることはやめてさっさと出てこい。」
大声で話したが周りの奴らはさっきから微動だにしない。
ヴァ―ナが出てこなければ俺はこれからひどいことをするつもりだ。
「冒険者に皆さん緊急討伐です。マソを捕縛あるいは生死問わずで討伐してください。関係者全員に報酬を出します。」
「おいおいどうする?」「お、俺は逃げるぞ。」「死にたくない!」
そうきたか。いい判断だなこの街も。ちゃんと統率が取れているんだな。
「逃げたいものは逃げるんだな。今から俺はこの街の中心地に魔法を落とす。これは魔王にしか使えない魔法だ。つまりヴァ―ナが出てこなければ止めることはできない。威力はそうだな、この街と周りの草原を抹消するぐらいかな。本当に逃げたい奴は逃げろよ。忠告はしたからな。では魔法準備に取り掛かる。攻撃したい奴は攻撃しろ。街の危機がかかってるんだ。どうするかはお前ら次第だ。」
「うわああああ。」
一人の冒険者が攻撃してきた。俺はそれを躱さず受け止めた。そして冒険者の首が吹き飛んだ。
「ひいいいいい!!。」
「俺は元魔王だぞ。もっと強い攻撃ではないと通用しないどころか跳ね返しちゃうぞ。ハハハ。」
「ヴァ―ナ様お助けを。」
「ヴァ―ナ様ぁああ!!!」
「嫌だあああ。」
まさに阿鼻叫喚、これから訪れる結末を想像でもしたのだろう。
俺は敢えて魔法構造式を見せつける。
大きな円が広がった後、何重にも重なった小さな歯車が浮き出てきた。
魔法使いならどういうことか分かるだろう。
「なんだあの構造式は...、あんなのどうやって制御してるんだ。」
「これはガチでまずいかもしれん。魔王マジか。」
あれは最初に会った門番のシエルか。
魔法使いとか言ってたな。
分かるやつには分かる魔法だ。
魔法を習得するうえで絶対に知っておかないといけないことがある。
魔法はとても強大な力だ。それ故に禁忌やら禁じ手などがある。
俺が使うのはその禁忌のうち魔王になったもののみしか扱えない魔法、通称【ラグナルージュ】
「今すぐ逃げろ!!あれは本当に危険だ!!!」
今更慌てて逃げようとしているがそろそろ準備が整う。
「ヴァ―ナ、いるならこの街を守ってみろ。行くぞ。滅んでしまえ。」
俺の放った魔法は天高く打ち上げられ瞬く間にはじけ飛んだ。
その中から小さな水滴が落ちてきた。
「魔法が失敗したのか?」
「今のうちに逃げろ!!」
「いや、失敗してない。むしろ最悪な意味で大成功だ。」
「もうだめだ。いっそのこと自殺したほうが。」
「神様ありがとうございました。」
「ヴァ―ナ様お助けを...。」
その次の瞬間水滴は地上に落ちてきた。それと同時に一瞬光が見え、水滴は黒く染まりはじけ飛んだ。
すさまじい衝撃波とともに莫大な爆音が全身を包み込む。
身体が燃焼して焦げ落ちそうになった時、魔法はなくなったように発散した。