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消えたいちご大福

作者: 雨久猫

木田家の朝は、いつもにぎやかで慌ただしい時間が流れる。母の節子がキッチンで朝食の準備をしていると、「おはよう」と言って長女の春奈が眠そうな顔で起きてきた。

「おはよう、春奈。朝ごはんの準備ができてるよ」と節子は味噌汁や玉子焼きをそれぞれの皿に装いながら言った。

「ありがとう。いただきます」と言うと春奈は、味噌汁を一口飲みゆっくりと卵焼きに箸を入れ食事を始めた。

すると、父の俊夫も起きて来て、満面の笑みを浮かべ

「おはよう。昨日、駅前に新しくできた大福屋さんを見つけたんだ。なんか、いちご大福が美味しそうだったので、今日仕事帰りにいちご大福を6つ買ってくるよ!」」と興奮気味に話し始めた。俊夫は甘いものに目がなかった。


すると、春奈と節子は目を輝かせてうなずき、「それは楽しみだね!ありがとう、パパ!今日の晩御飯の食後のデザートはいちご大福だね。」と節子が言った。そして、俊夫は朝食を済ませた後いちご大福の事で頭がいっぱいになりながら出勤した。


それから、三女の冬美が眠そうな顔で起きてきた。節子は冬美に俊夫が仕事帰りにいちご大福を買ってくることを伝えると、冬美はさっきまでの眠そうな顔が嘘のようにキラキラと目を輝かせて喜んだ。なぜなら冬美は家族の中で一番のいちご好きだからだ。


冬美は朝ごはんを食べていると

「あれ?夏彦兄ちゃんと、秋江姉ちゃんは?」と言うと、春奈が

「夏彦は大学の授業が午後からだから、ゆっくり寝ているかもしれないよ。でも秋江は昨日の夕方から帰ってきてないんだよね?」

節子は心配そうに顔を曇らせました。「そうだったわ、秋江はまだ帰ってきていないのよ。どこにいるのかしら?」

すると春奈は

「また、彼氏と夜ずっと遊んでるんじゃないの?大学生って気楽でいいわね?」

と少し呆れたような表情で行った。しかし、節子は心配そうな表情で

「でも、何かあったら困るわよ。」と言った。

冬美は「ふーん。そうなんだ?」と少し興味が無くなったような反応をした。


その後、春奈は出勤して、

冬美は「行ってきまーす。」と言って、嬉しそうな様子で俊夫と同様にいちご大福の事で頭がいっぱいになりながら学校へ向かった。

節子は皿洗いや、洗濯など家事を始めた。そして、昼前には木田家は静かになった。夏彦は朝は授業がないため、朝の食卓には姿を見せず、11時過ぎに起きて大学に行き、次女の秋江は昨日の夕方から昼近くになってもまだ家に帰って来なかった。


すると12時頃に俊夫から節子の携帯にメールが入った。

「あら?今日は午後を有給にして帰ってくるの?」と少し驚いた様子だったが、甘味好きの俊夫を理解して

「よっぽど いちご大福が気になるのね!!」と言って節子は小さくつぶやいて微笑んだ。


その後、節子は秋江のことよりもいちご大福のことを考えてワクワクしながら家事を進めた。そして、昼の1時過ぎに俊夫が帰宅した。俊夫は嬉しそうな様子で、いちご大福の箱を節子に渡した。


「わー、美味しそう!!大きな大福!!いちごの良い香り!!」と節子は想像以上の大きな大福に驚いた。

そして、節子は喜んでいちご大福を受け取り、冷蔵庫に入れた。俊夫は仕事が早く終わったため、1人で銭湯でも行って昼はのんびりすることにした。一方、家の中では、節子がテレビを見てリラックスしていると、俊夫の母親である真由子が訪ねてきた。


「お母さん!!どうしたんですか?」と節子が尋ねると、真由子は

「ちょっと、美味しいケーキ屋さんを見つけたので来てみたら、丁度、俊夫の家が近いと思ったのでちょっとお裾分け!!それに、冬美ちゃん いちご大好きでしょう?」

と言うと手にはショートケーキが6つ入った箱を節子に渡した。


節子は「ありがとうございます。」と言って真由子を茶の間に通した。

しかし、真由子にお返しのお菓子を用意していなかったことを気づいた。すると、節子はキッチンに行くと俊夫が買ってきたいちご大福を思い出し、

「仕方ないか?自分が食べる分を出せば特に問題ないし」

と言って節子はいちご大福とお茶を出した。


すると、真由子は美味しそうに満面の笑みを浮かべながらいちご大福を食べ、しばらく、節子と真由子は茶の間で楽しくおしゃべりをした。その間に、長男の夏彦が大学から帰宅したが、節子は夏彦の帰宅に気づいたが真由子との会話に夢中になった。


そして、しばらくして冬美は帰宅すると茶の間に誰か来ていることに気づき

「あ、おばあちゃん!!いらっしゃい!!」と笑顔で言った。すると真由子は

「冬美ちゃん、ショートケーキ買ってきたから後でみんなで食べてね。」と言うと、いちご好きの冬美はいちご大福とショートケーキのことで嬉しさ2倍になった。


夏彦がリビングでくつろいでいると、冬美が現れた。冬美はニヤリと笑って言った。「ねえ、夏彦兄ちゃん。今日の晩ご飯のデザートはいちご大福とショートケーキだよ!」


しかし、夏彦は「あーそう!俺、甘いものに興味がないから」と言って冬美の楽しそうな会話に興味を示さず、2階に上がった。夏彦がいなくなったあと、冬美は我慢出来ず、どんないちご大福かちょっと見るだけのつもりで冷蔵庫を開けた。

「わー、美味しいそう!!」と言うとすぐに冬美は

「あれ?何で5個しかないの?」といちご大福が1つなくなっていることに気づいた。


その後、秋江は彼氏を連れて帰宅した。茶の間に誰か来ていて節子が応対しているこに気づき、節子に気づかれないようにこっそりと彼氏と一緒に自分の部屋に入った。

「あぶねー、ママ、うるさいから静かにね!!」と彼氏に軽く忠告するように言った。


真由子と節子の楽しいおしゃべりの時間はあっという間にすぎた。しばらくして、真由子のお茶が無くなったので、台所に一旦お茶を取りに行った。すると、節子は台所で水を飲んでる夏彦と偶然出くわした。

「おばあちゃん。来てるわよー。挨拶ぐらいしなさい!!」と言うと夏彦は

「わかったよ。後で挨拶するよ。あ、そうだ。母さん、俺、今日の晩ご飯は友達と外で食べるからいらない」と言った。そして、夏彦は茶の間に行って祖母の真由子に挨拶をして、そのまま遊びに行ってしまった。


そして時計は4時近くになり、真由子が帰ろうとすると節子は夏彦が晩御飯をいらないと言ったことを思い出し、

「お母さん、お父さんにもいちご大福を食べさせてください。」と言って

夏彦の分のいちご大福をお土産代わりに渡した。

「ありがとう。主人も喜ぶわ」と言って

真由子は喜んで受け取り微笑みながら帰宅した。その後、節子は晩御飯の準備のためにスーパーに買いだしに出掛けた。


一方、冬美は、ショートケーキといちご大福のことが楽しみ仕方なかった。すると、冬美は今日の晩御飯の食後にはショートケーキも出るから、いちご大福は、今おやつにして食べても大丈夫では?と思った!!

そして、冬美は一目散に台所に行き誰もいないことを確認して、静かに 冷蔵庫を開け

「シシシ、今日は2回もイチゴを食べれて幸せな気分なのだー!!」と無邪気な笑顔を浮かべて

いちご大福の箱を開けた。すると

「何故4つ?」と自分に問いかけた。

その時、冬美は1つの危機感を感じた。

「誰かが、いちご大福をこっそり食べている。このままでは自分のいちご大福がなくなってしまう!!」と思い、自分のいちご大福を確保して足早に自分の部屋に戻った。


そして、しばらくして、秋江はお腹が空いていたので、台所にやってきて冷蔵庫を開けた。するといちご大福とショートケーキを発見した。

「わー、美味そう。」

秋江はいちご大福が3つで、ショートケーキが6つだったのを見て、ショートケーキが家族用で、いちご大福は各々で勝手につまんで食べてると思い、彼氏と自分の分を合わせて2つのいちご大福を自分の部屋に持って行った。


夕方4時を過ぎ、俊夫が銭湯後の散歩から帰宅し、6時頃には春奈も会社から帰宅した。外で食事をしている夏彦を除いて、家族は揃って美味しい晩ご飯が終わった。


そして、待ちに待った食事の後、デザートの時間がやってきた。そして、俊夫の前には誇らしげに並んだのは大振りのいちごが入った良い香りのいちご大福。節子、春奈、秋江、冬美の前には真由子からもらったショートケーキが並んだ。


すると、春奈が不思議そうな顔をしながら家族に問いかけた。「えっ、今日のデザートっていちご大福じゃなかったっけ?」

俊夫は少し苦笑いしながら答えた。「そ、そうなんだよ!!!!でも、僕以外はみんなショートケーキなんだよね?」


家族の目は一斉に俊夫に集まった。節子は思わず笑いながら。「みんな、いちご大福があまりにも美味しそうだったから晩御飯まで待てなかったのよね!!」

と一同が笑いに包まれながら、それぞれの真実を忘れて家族は楽しいひとときを過ごした。そして、食卓に並んだいちご大福とショートケーキのユニークなデザートの組み合わせが、家族全員にどこか滑稽さを感じさせていた。


俊夫は満足した様子で美味しそうにいちご大福を頬張り、春奈はショートケーキの香りと甘さで、なぜいちご大福じゃないのかという疑問さえも忘れて笑顔になり、事情を知らなかった秋江は家族にバレないような苦笑いでショートケーキを静かに食べ、いちご好きの冬美は100点満点の笑顔でショートケーキを頬張った。


笑いに満ちたこの一夜は、家族の心に温かな思い出として刻まれた。次回のデザートでは、どんな不思議なことが起こるのか?それもまた、家族全員にとっては楽しみでもあった。

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