誕生!!
さあ、頭のネジを緩めてお読みくださいまし。
時は十八世紀のイギリス。
首都、ロンドン。
工業発展を迎えて工場が建ち並び、都市開発や海外貿易で栄えていたその裏では、極端なまでの貧富の差、無宿の子供たち、そして、光化学スモッグの大量排出で霧の街ロンドンとも呼ばれいた。
そして、この時期のロンドンでは歴史上未解決な猟奇的犯罪が数多く起こっていた時でもある。しかし、今から始まる物語は、どの書物にも記されていない歴史の闇で語られている出来事だった。
ヴァン=ヘルシング神父。
殺害される!
この事件は、イギリス中を震撼させた。
霧の街ロンドンの闇を魔物達が跳梁して、街の住民たちを恐怖に陥れていたのだ。だが、その魔物達を退治する者が姿を現した。それが、ヘルシング神父だった。彼は、そのような力を持つ数ある神父たちの中でも特に秀でており、その力をもって次々と魔物達を消していったのだ。が、ある日それは突然と終わりを告げる。
ひとりのシスターの前で、ヘルシング神父は殺害されてしまう。父親同然の神父が殺されて、女の大きな碧い瞳からは次々に涙が流れ落ちていった。女は、無宿の子供たちの中から足を運び、自ら洗礼を受けてヘルシング神父の愛弟子となる。だが、もう、その神父もいない。
そして。
女は復讐に燃えた。
父親同然の神父の為に。
奴らの顔は焼き付けた。
必ず全滅させてやる。
信ずるは神父の教え。
信ずるは己の肉体。
己自身で道具を造り。
己自身が鍛える。
鋼のように。
そして、しなやかに。
イギリス式ボクシング?
そんなものは、知らん。
流派などは無い。
だが、敢えて云うなれば。
無手勝流。
完全なる復讐を誓い。
鍛錬に次ぐ鍛錬。
そして、十年の時が過ぎ。
女は完成した。
シスター・ルナ。二八歳、独身。
女は美しく成長していた。脅威的なまでの執念と復讐心。純粋なる信仰心と絶対的なまでに悪を赦さぬ心。自家製の武器を数々装備したルナが、キリスト像の前に片膝を突いて祈りを捧げる。
祈りを終えて、教会の扉を勢いよく両手で跳ね開けると、勇ましく歩み出た。朝日が眩しく輝き、小鳥たちの囀りが心地良い。絶好の復讐日和ととらえたルナが、大地に足を踏ん張って、気合いを込めた。
「ぃよっしゃああぁぁっ! 殴り込みじゃあぁぁっ!!」