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時雨

作者: ねこんじゃらし

何気ない日だった。

五月になって雨のせいで地面がぬかるんだ日。

昼も夜もわからなくなるような明るさの中で君に呼ばれた。

「久々に遊べるの楽しみだな。お昼どこ行く?」

「話したいことがある。」

新宿駅中央東改札。 

喧騒の中で君の声は悲しくなるくらい通る声でこう言った

「別れたい。」

「え、なんで???」

「友達に、、この彼氏で大丈夫?って聞かれて色々聞いて裏切られた気持ちになって、ごめん。」

「、、??、?、?、???、?????」

「俺、、本当に付き合った日からその前からもずっと大好きだしスマホとかも何でも見せれる。本当に誤解だと思うんだ。

何で言われたの?」

「ごめんね。その友達のこともあって言えない。」

多分この時なんだろう。

彼女の綺麗で美しいガラスの天秤が片方だけ音を立てて地に落ち、割れたのは。 

俺は気が動転していた。付き合って半年、本当に本当に喧嘩も一度もなく、ただの最高のカップルだった。互いに最高の理解者であるとともにこんな人一生出会えないと思ってた。

だからこそ、なんで?が心の源泉のようなところから溢れ出してくる。

「俺、本当に何もしてないと思うんだ。俺のこと信じられないの?」

「ごめん、ごめん、、本当に裏切られた気持ちになっちゃって好きでいられなくなったごめん、、」


そのあとはもう覚えていない。

夢だと思った。本当に辛い夢だと思った。でも違う。

改札に入る機械音が体の全てを支配して何もできなくなるような苦しさがそこに生まれた。



家に帰り自室に引きこもった。

修学旅行中に撮ったフィルム写真を見て呆然とした。

そこには笑顔の2人がいた。 

やはり夢なんじゃないか、リビングの小窓から飛び降りれば目覚めるんじゃないか。

俺は現実から逃げようとしていたんだと思う。でも現実に冷たいナイフで喉を突きつけられる。

泣くにも泣けず、そのまま寝た。


五月だというのに18時ごろには外は夜だった。

部屋の電気をつける気力も生まれず、そのフィルム写真を眺めた。

ほとんど暗さで何も見えないのに表情が頭の脳裏に浮かんでくる。

涙が目から溢れた、五月の冷たい時雨のように。


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