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第19話




 その日の夕方。

 トワ曰く、市場に買い物に出かけたらしいマーハだったが、未だに宿に戻ってきていない。


 もしかしたら迷子になってるのかも……。

 捜しに行った方がいいだろうか。


「いや待て。おれもここの地理全然わからないぞ。おれも迷子になるのがオチなんじゃ」


 窓の外から見える街並みは、とても広大だ。都市自体が大きな坂になっているようで、入り口になる門はここからだとかなり小さく見える。


 頂上には、お城のような大きな建物がある。あそこにこの国の王様でも住んでいるのだろうか。トワが街に情報を集めに行ってくれているようなので、それを待ってもいいけども、任せきりなのも気が引ける。


「ここでジッと待っているのもなぁ。監獄都市ギルンセルのような場所じゃないみたいだし、眼が赤いだけで捕まったりはしないだろうけど――」


 捕まるのなら、マーハは再びお縄になっているはずだ。

 そんな危険があるのなら、トワが1人でマーハを買い物に行かせないはず。つまり、ここはギルンセルとは違って差別がない街のはずだ。それなら、おれが1人で出歩いていても大丈夫だろう。


「体力もすっかり戻ったし、うろつくくらいなら問題ないよな、うん」


 外に出ると決めて、おれは準備して部屋の外に出た。


 ここはどうやらアパートの一室のようだ。おれは階段を下り、街道へ出た。


「ひとまず市場へ行ってみよう。そこで聞き込みだ」


 おれはそれらしい場所があるところへと向かった。

 やけにシスターのような恰好をした人とすれ違うことに違和感を感じながら、おれは市場へ向けて歩みを進めた。


 昼過ぎということもあってか、人通りが結構多い。シスター達が闊歩しているのに、誰もそれを変に思っていないようだ。元からそういう街なのだろうか。


「あのお城みたいなのって、もしかして聖堂的なやつなのか……?」


 背後にそびえたつご立派な建物。見た目は荘厳で神聖な雰囲気を醸し出している。シスター達が多いのも、それと関係しているのかもしれない。


 色々と街について考察していると、大事なことに気づいてしまった。


「……って、待てよ、そもそも市場ってどこにあるんだ」


 ここはどんな街なんだろう――とか、考えている場合ではない。行先が判らなければどこに歩みを進めていいかも判らない。

 

 おれのばか。冷静に考えて、せめてトワと合流してから行動すべきだった。右も左も判らない場所を単独で行動するのはおろかだった。


 こうなったら道行く人に市場の場所を尋ねるしかない。


「あ、あの~……」


 道行くシスターに声をかける。


「はい? 私ですか?」


 顔を上げると、そのシスターは顔に大きな火傷の跡があった。

 傷跡はあるモノの、顔立ちは美しく、奇麗だ。

 そしてもう一つ特徴があって、彼女は褐色の肌だった。


「あっ、は、はい、そうです。道を教えて欲しいのですが……」


「構いませんよ。どちらに行きたいのでしょう?」


「市場に向かいたいのですが……」


「それでしたらこの大通りを南に下っていけば着きますよ。市場は賑やかなので見間違えることもないかと思います」


「ありがとうございます! 助かりました!」


 南に行けばいいんだな。大通り沿いなら迷うこともなさそうだ。


「よければ市場まで案内致しましょうか? 私もそちらに用事がありますので」


「申し出は嬉しいんですけど、本当にいいんですか?」


「ええ。まだこの街に慣れていないご様子ですし……。私でよければ、ですが」


「全然大丈夫です! ありがとうございます!」


 良い人で助かった。シスターさんだから乱暴な人ではないと踏んでたけど、ここまで面倒見のいい人だとは思わなかった。


「ふふ。では、行きましょうか。あ、それと私に敬語は不要ですよ」


「そ、そう? それじゃあ普通に話そうかな」


「はい。それでお願いします。そうしていただいた方が、私としても落ち着くので」


 言って、褐色のシスターは歩き出した。

 おれも一緒についていく。


 街並みは西洋風で、おれがいた国とはだいぶ雰囲気が違う。さすがは異世界。ファンタジックな景色で心が躍る。


「市場へは買い物で?」


 と、シスターがきいてきた。


「実は人を捜してて。市場に行ったきり戻ってこないから心配というか」


「なるほど、人捜しでしたか。ちなみに、その方の特徴とかはありますか?」


「特徴……」


 眼が赤くて立派な角がある魔族です、とは言いづらい。シスターだし、悪霊退散的な心情の持ち主だったらまずい。


「と、特徴がないのが特徴というか……ま、まあ、普通の女の子かな?」


「そうなんですね。普通の女の子でしたら、すれ違っていたとしても私の記憶には残っていないかもしれませんね」


「そ、そうだよね。ははは……。あ、ちなみに、この街って人間以外の種族の人もいたりするの?」


「ええ。いらっしゃいますよ。ただ――」


 言って、シスターは歩みを止めた。


「魔に属する種族の方は、場合によっては痛い目に合うかもしれません。基本的にこの街での暴行や殺人は重罪なんですが、秩序を司る教会の人間以外ですと見て見ぬふり……なんてこともあります。まあ、普通の女の子なら問題はないと思いますが」


「……っ!」


 そうか、やっぱり魔族はあまり好かれていないのか。

 牢屋行きにならないにしても、毛嫌いしている連中から嫌がらせを受ける可能性はある。そう認識しておいた方がよさそうだ。


 やはり、このシスターにマーハのことは言わない方がいいのかもしれない。魔族だとわかったら、態度が急変したりするかもしれないしな。


 それから再びを歩みを進め、シスターと他愛もない会話を交わした。

 そして、しばらく歩いたその先、坂を下ったところにそれらしい場所が見えてきた。


「さあ、見えてきましたよ。あそこが市場です」


「おお……」


 市場は活気があり、夕方だというのに人がたくさんいる。


「では、私はこれで。捜し人が見つかるといいですね」


「うん。ここまで付き合ってくれてありがとう」


「どういたしまして。それではまたどこかで」

 

 言って、シスターは人混みへと消えていった。

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