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救世少女のアンチテーゼ  作者: 竜胆久遠
第二章 監獄都市ギルンセル 脱獄編
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第12話





 投獄されてから1日が経過した。同室のマーハとは色々とおしゃべりをし、かなり打ち解けることが出来たような気がする。といっても、相手がマーハみたいな良い子じゃなかったらギスギスフィールドを展開していたかもしれないけど。


「おい、そこの灰かぶり。検査の時間だ」


「灰かぶりって――、ああ、おれのことか」


 どうやら髪の色で勝手に命名されてしまったようだ。

 灰色というか、色素が薄いだけなんだけどな。周りからは灰色に見えるのだろう。


「こいつをつけてさっさと出ろ。獄長がお待ちだ」


 言われたとおりに腕輪をつけ、おれは牢屋をでた。

 この腕輪は、どうやら魔力と呼ばれるエネルギーを封じ込める力がある代物らしい。マーハは魔族なので、魔力を使った技が得意だからこの腕輪は効果的なんだろうが、おれに魔力とやらが備わっているかは自分でもまだ判らない。


 ……まあ、つけろって言われからここは大人しくつけますけども。


「検査って何をするんですか?」


 歩きながら、付添人に訊いてみた。


「魔力の検査だ。人の魔力と魔族の魔力は質が違う。それでお前が人間か魔族かがはっきりするわけだ」


「なるほど――」


 つまり、おれに魔族特有の魔力がなければ釈放されるってことか。


 でも、もしおれにそのような魔力があったらどうしよう。さすがに今すぐ死刑とかにならないよね……?


「お前に価値があるかどうかは獄長が判断する。ただの下級魔族だった場合、恐らく生かしておく価値はないということになるだろうな」


「それってまさか、死刑になったり?」


「かもな」


「まじか……」


 これは一刻の猶予もないかもしれない。異世界に逃げてきたのに、速攻でゲームエンドじゃ英美里教授に申し訳が立たないぞ。


 それからしばらく監獄内を進み、とある一室にたどり着いた。

 中は殺風景で、椅子が置いてあるだけだ。


「そこに座って待っていろ」


「座っているだけでいいんですか?」


「それでいい。あと腕輪は渡せ。必要ない。あとは勝手にこちらで判断する」


「わかりました」


 おれは付添人に言われたとおりに腕輪を返し、椅子に座った。


 扉は締まり、部屋に一人残されて待つこと数秒。どこからともなく男の声が聞こえてきた。


『君が捕らえられた魔族の子か。まだ若いな』


 獄長とやらだろうか。部屋のどこかにスピーカーでもあるのかな。


『私はギルンセル獄長のサイリュスだ。今から君の魔力の質を測定し、人類に害があるモノかどうかを判断する。目の前の球体に測定値を表示するから君も見ていてくれ。青はヒト級、黄色はヒト魔術師級、赤は魔族級だ。わかるかね?』


「つまり、赤じゃなければいいと?」


「そういうことだ。君が魔族ではないことを祈っている」


「――ゴクリ」


 おれは唾を飲み込んだ。

 目の前の浮遊する球体を注視する。今はまだ色は白く、魔力は観測できていないということなのだろうか。


 そして、色が変わり始めた。

 すぐに、おれは首を傾げることになる。


「なんだろう、あの色……?」


 さっき獄長のサイリュスさんが言っていたどの色とも違う。

 おれの世界の色彩でよければ、あれは紫色が近いが……。


『紫、だと……! まさか……。君はいったい何者だというのだ!?』


 驚きと焦燥が入り混じったような声を上げる獄長。

 もしかして測定は失敗したのだろうか。それとも他に何か意味があるのか。


『紫は魔王級の証……! そんな測定値、あるわけがない! そこまで魔力が強いのならば一目見ただけで判るはずだ! そうだ、そんなこと、あるわけがない――あるわけがないのだ……――』


 しばらく静かになり――


『すまない、取り乱した。しかし、その色は本来なら出るはずのない色なんだ。紫は魔王級の魔力の波動を感知した時に現れる色。君が魔王級の存在なわけがないのは判っている。恐らく何かの不具合だろう。だが、何者か判らない間は、牢にいてもらわなければならない』


「そんな……」


『帝都の高位の魔術師をこちらに呼ぶ。その方に判断してもらうことにしよう』


「わかりました。とりあえず待っておけばいいんですね?」


 といいつつ、待つ気はないんだけども。

 ここから出るために、トワが頑張ってくれている。監獄の事情に付き合う必要はない。冤罪もいいとこだしな。


『すまないが、そういうことになる』


 そうして、おれは再び牢屋へ戻ることとなった。


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