三下聖女VS天才聖女
プリメラは正確に状況を分析していた。
ひとまず瘴気を押さえにかかっている天気予報女はあとまわしでいい。妖魔皇の瘴気など、天気予報では浄化できない。せいぜい、広げないのが精一杯。それもいつか力尽きて勝手に死ぬ。
まず片づけるべきは妖魔だ。相手は中級妖魔に取り憑かれた少年と上級妖魔。多少手間はかかるだろうが、勝てる――はずだった。
「アーク、右上! スレヴィさん、次は下からです!」
攻撃が当たらない。元々戦術よりは力任せが多いが、それでもここまで当たらないことに苛立ってプリメラは今まで眼中に入っていなかった少女をにらむ。
(あいつだ。聖女だ!)
何が視えるかわからないが、あの助言のせいで先が読まれている。
舌打ちしたプリメラは標的を変えた。妖魔たちよりも、あの聖女だ。
「うっとうしいなあ、黙っててくれる!?」
プリメラが突っこんでくる前に、少女は三歩横によけて叫んだ。
「アーク、さっきの私の位置です!」
「!」
急制動をかけたが、アークという少年の一撃をよけるだけで精一杯だった。背後からきた上級妖魔の蹴りをもろにくらって、壁に激突する。衝撃はすべて魔力の膜に吸収させたが、屈辱までは吸収できない。
(くそっこんな三下聖女に……!)
睨めつけるプリメラに、拳を握った少女がにらみ返す。
「おねえさまの邪魔はさせません!」
「……お姉様……?」
両目を開いたあとで、プリメラはふとおかしくなった。
「お姉様ってまさか、ボクのお姉様のこと?」
黙って少女はにらんでいる。その顔を正面から見て、プリメラは笑った。
「ロゼ、だったっけ。……喜びなよ。ボクが名前を覚えるなんて、滅多にないんだからさあ」
「あ、あなたはどうして、シルヴィアおねえさまがそんなに嫌いなんですか」
「はあ? 何言ってんの、大好きだよ! お姉様だけだ、このボクをゴミみたいな目で見てくれるのは!」
いつだって皆がプリメラを讃えてからっぽの目ですり寄ってくる中で、姉だけが冷めた目でプリメラを見てくれる。姉だけはみんな同じ顔に見える周囲と違う。そのくせ、姉は自分にどうあってもかなわないのだ。
そうでなくてはならない。
「どけよ、三下聖女」
すごんだプリメラにロゼは脅えたが、すぐににらみ返してきた。
「ど、どきません。ロゼは、おねえさまを助けます!」
「そう、でもボクの未来にお前はいないなあ!」
すぐに終わらせて、姉の目の前で妖魔皇を浄化してやる。
その先などどうでもいい。いつだってプリメラのいいように世界は回ると、聖眼は告げている。




