015 ファースト・キスは、旦那様(ニセ)と!?
「何だ、色々話そうと思っていたのに、しかも主人を置いて先に眠ってしまうとは残念だな。まあ、無理な修行で中松にしごかれただろうし、疲れたのだろう。ゆっくり休むといい。明日に備えて私も寝るとしよう」
残念だと思ってくれていたの!
私と一緒で、色々話そうと思ってくれていたなんて!
嬉しい。・・・・嬉しいよ!!
室内の電気が消された。目を閉じているから解らないけれど、雰囲気で一矢が私のすぐ横にやって来た。
えーっ。このベッド、めちゃくちゃ広いのに、何でこんな密着しちゃうわけぇ!?
おおおおー。どうすればー。
焦っていると、頬をつつかれた。「伊織? 寝ているのだな? 本当に眠っているのだな?」
何の確認だぁ――! くすぐったいし、今更狸寝入りがバレたら怒られそうだから、ううーん、と寝がえりを打つフリをした。すると誤った事に、一矢の方を向いてしまった。
しまった・・・・! 焦って方向を間違えた・・・・!
しかし元には戻せず、そのままでいなくてはいけなくなってしまった。
一矢が更に近づく気配がする。
きゃああああ――――!
更に近い近い近い近いぃいいいいいい――――!!
ど、どどど、どうしよう。吐息が・・・・近い。感じる。一矢の息!
うわあああー。ちゃんと歯磨きしたけど、息臭くないよね!?
どうにか息を止めたい! でもそんなことをしたら死ぬ・・・・!!
「お前のファーストキスは、主人であるこの私のものだ。誰にも渡さない・・・・」
え? 何か言ってる?
一矢の低い呟き声がぼそぼそと聞こえた。何て言ったのか解らないからなんだろうと思ったら、次の瞬間――
柔らかい彼の唇が、私の唇を覆っていた。
えっ。
なんでっ。
どうして一矢が私にキスをするの?
ていうか、私のファーストキス・・・・!
目を開いた方がいいのか、そうじゃない方がいいのか、私には全然解らなかった。
正解が解らずに、とりあえずこのままで息をひそめていると、一矢に抱きすくめられた。
ぎゅっと優しく抱きしめられ、動悸がおかしくなりそうになった。
困っていると、暫くしてスースーと寝息が聞こえてきた。恐る恐る薄目で見ると、目の前に一矢の美しいアップがあり、ぎゃあああー、と叫びそうになったのを必死で堪えた。
どうしようどうしようどうしようどうしよう。
眠れない! 絶対に眠れない!
心臓がおかしい位に激しく波打ち、痛い位にドクドクと体内を駆け巡る。
身動きひとつ取れない状況で、私は一睡もできずにただひたすら夜が明けるのを待った。
旦那様ぁ(ニセ)ー。こんな状態、辛すぎますぅ―!
あーんっ。ニセ嫁って、大・変!!
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