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013 旦那様(ニセ)を優先すると円満にいくらしい。


「私は・・・・お前と入りたかった。琥太郎や倫太郎が羨ましかったのだ」


「そんな事言われても姉弟以外の異性同士は、小学一年生から別お風呂になるんだよ? 銭湯とか男女別になっているでしょ。だから、仕方なくなの! 一矢が嫌とか、そういうのじゃないっ」


「本当か?」


「うん、ほんとう」


「それは良かった」


 ガウン越しにぎゅうっと抱きしめてくれた。濡れた一矢の肌が、ガウン越しとはいえ、私に当たっているのだと思うと、頭が沸騰してのぼせそうになった。


「そうだったのか。てっきり私と風呂に入る事を嫌がられていたのだと思っていた・・・・」


 どんだけ一般常識皆無なの、この人。

 そういうぶっ飛んだ所も、好きなんだなぁ。


「普通は年頃になったら、一緒にはもう入らないんだよ? わかった?」


「夫婦なら入れると聞いたが?」


「まあ、夫婦ならね」


「じゃあ、一緒に入っても問題は無いのだな? 解った。では金銭問題抜きにして、私の願いを叶えてくれ。伊織、楽しかったあの頃と同じ様にお前と一緒に風呂に入りたい。夫婦なら問題無いと今、お前が言ったのだ」


「はぁあぁ!?」


 何故、そーなるかな!?


 

「一矢が嫌とか、そういうものではないと、確かに聞いたがそれは嘘だったのか?」


「いや、嘘じゃないけど・・・・もう大人だし、恥ずかしいから無理だよ」


「じゃあ、お前が恥ずかしいと思わなくなるまで待てばいいか?」


 真顔で聞かれた。眼鏡をかけていない一矢の美しい顔が目の前にあるから、早くものぼせそうだ。


「あの、ちょっと・・・・昔とは違うから、一矢も随分男らしくなっちゃったし、私も一応女だから、お風呂を一緒にっていうのは・・・・ごめん。でも、身体を洗って欲しいっていうなら、お仕事頑張ってくれた一矢を労う嫁の役目として、喜んでやらせてもらうわ」


 今の私にはこれが限界だった。本当なら背中洗いも無理なのに。


「・・・・仕方ないな。残念だがそれで手を打とう。その代わり、水着になれ。なに、温水プールだと思えばいい。とにかくガウンは禁止だ」


「え“え”――っ」


「伊織の意見も聞いてやったのだ。次は私の番だろう。夫婦と言うのは、互いの意見を尊重し合うと聞いたぞ。明日はそのつもりで、入浴用の水着を一緒に買いに行こうではないか。それなら温水プールと同じ様に入れるではないか! ふっ、流石私だ。我ながら何時もナイスアイディアを打ち出すものだ」


 ・・・・話がおかしな方向へ行っているのですが。


 

「水着の事だが、もし買うのが嫌なら家から持ってきてもいいぞ」


「・・・・買いに行きます」


 家から持ってきたものを着用するとなれば、きっと鬼中松にクソ嫌味を言われるに違いない。


「そうか」一矢に顔を覗き込まれた。「好きな物を選んでいいからな。の水着の一枚や二枚、私が買ってやる」


「ち、近いっ! もう少し離れて! 距離感大切よ!」


 至近距離危険距離。だめだめ。心臓の音がドクドクと爆音でウルサイし、一矢に聞こえちゃう!


「お前の不細工な顔が、よく見えないのだ。眼鏡が無いから」


「不細工で悪かったわね! だったら見えなくて丁度いいじゃない」


「いいや、お前が見えないのは困る」


「なっ・・・・」



 今の・・・・どういう意味?




「何でもない。とにかく明日は伊織もグリーンバンブーの仕事は休みだろう。私も明日は会社が休みだ。今日は寝食を共にし、明日の朝一番で夫婦揃って出かけよう。水着を買いにデパートへ行こうではないか」


「えっ、今日は帰るよ。琥太郎にも帰るって言っちゃったし」


「私より琥太郎を優先するのか。主人のこの私を差し置いて、他の男の元へ帰ると言うのか!」


 突然一矢が怒り出した。

 しかも『主人のこの私を差し置いて、他の男の元へ帰ると言うのか』みたいな、聞き捨てならない言葉のオンパレードなんだけど!

 琥太郎は弟なのに、まるで浮気した女みたいな言われよう。どうよ?


「いやでも、無断外泊は出来ないよ。さっき琥太郎に連絡を取った時、今日は家に帰るって言っちゃったし、家族のみんなに何も言って来て無いし、勝手なことをして心配させられない。琥太郎だけじゃないから。美緒も倫太郎も雄太郎も明奈も、みんな私を待っているから!」


 多分待っていないと思うけど、一矢が怒るからそういう風に言っておいた。


 

「・・・・許可があれば、問題無いか?」


「あ、それはまあ」


 明日琥太郎にめちゃくちゃ怒られそうだけど、今目の前の一矢をとりあえず収めたいのでそれについては黙っておいた。一矢>琥太郎の方程式が私の脳内に浮かび上がった。

 琥太郎には、何かお昼ご飯でも奢ってあげればいいわ。

 ・・・・成程ね。中松が言っていた意味がよくわかったわ。




――今のお言葉、一矢様の前でおっしゃらないようにお願いします。たとえ弟とはいえ、琥太郎様が好きなどと伊織様がおっしゃいましたら、一矢様はご気分を害されます。くれぐれもお気をつけて



 《《ご主人様優先》》しなきゃいけないってコトよね!

 解って来た! 解って来たわよ、中松ぅ! 今のは良かったと思う! 花丸案件ね。

 とりあえず一矢の前では、一矢をたてまつろう。とにかく一番。なんてったって、私のご主人様だもんね! ニセだけど!!

数ある作品の中から、この作品を見つけ、お読み下さりありがとうございます。


評価・ブックマーク等で応援頂けると幸いですm(__)m


次の更新は、6/17 12時です。

毎日0時・12時・18時更新を必ず行います! よろしくお願いいたします。

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