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幕間・信頼できる数少ない人の一人目


家の用事で更新できないかなぁと思ったけど、大丈夫でした〜‼︎


時間軸的には、アニスの家からの帰宅後になります。

次の話は、ラスティが帰った後のアニス側です‼︎



いつもその時その時で書き進めてきているのですが、シナリオが進んできたらタイトルと乖離し始めたので、作品タイトルを変えました。

お仕事改め「神獣に愛されるだけの、簡単な婚約者生活。〜甘やかしてね?未来の旦那様〜」を今後ともよろしくお願いします(*´∇`*)


 







 神獣が暮らす神殿で、大神官を務めているバルトラスは……唐突に執務室を訪れた神獣ラスティから告げられた言葉に、目を瞬かせた。





「大神官。俺の婚約者、アニスに変わるから」

「おやまぁ」


 挨拶もなしに第一声がそれである。

 バルトラスは丁度、この部屋に自分以外の人がいなくてよかったと心の中で安堵する。

 もしもこんなことを聞いてしまったら、人によっては失神ものだっただろう。


「しかし、それはまた急じゃなぁ……」

「後、明日からアニスが神殿で暮らすことになる」

「ありゃまぁ……じいじの心臓はびっくり仰天ですぞ?」

「じいじって……」


 ラスティはクスクスと笑う。

 その宣言通り、バルトラスは年老いた男性だ。

 髪も髭もとても白いし、肌に刻まれた皺は生きてきた時間を感じさせる。

 物心ついた時には既に、ラスティ達のお爺ちゃんという立場ポジションにいて。

 その茶目っ気だけは今も昔も変わらなく……今でも、公的な場以外では軽口を叩けるほどに信頼できる、数少ない人の一人だった。


「分かりました。明日までにはアニス嬢が部屋を使えるように手配しておきましょう。まぁ、(アニス嬢がラスティ様の部屋に入り浸りそうだから)必要ないかもしれませんがな」

「……………」


 ラスティはその返事を聞いて、驚いたように目を見開く。

 バルトラスはそんな彼の様子に目敏く気づき、クスクスと笑った。


「どうされましたかな、ラスティ様」

「………いや。あんまり、驚いてないし、納得早いなぁって」

「ほほほっ。それはそうでしょうな。なんとなくそうなる気がしておりましたし、いつアニス嬢とブリジット嬢の立場が変わってもいいように秘密裏に準備しておりましたし」

「…………えぇ……」

「お爺ちゃんは準備がいいのですぞ」


 長年、祖父ポジションで見てきたバルトラスはなんとなく見抜いていた。

 相性の問題、と言えばいいのだろうか。

 アニスとラフェル、ブリジットとラスティが婚約者であるというのに……あの四人はいつも一緒で。

 しかし、よくよく見ると……アニスとラスティ、ブリジットとラフェルでいることが多かったのだ。

 だから、いつしか婚約者が変わるなんてこともあるかもしれないと……そうなった際の準備を、秘密裏に進めていた。


 但し、あくまでも個人的に、だ。


 そうしたには、理由がある。

 何をまかり間違ったか……ブリジット()()に異常なほどに傾倒している者がいるのだ。

 神獣を盲信しすぎている者達も危険だが、神獣の婚約者(ブリジット)を崇拝するのは殊更タチが悪い。

 ゆえに、そういった者達を刺激しないように……隠れて、何が起きても大丈夫なようにと準備を進めてきたのだ。


「さて……アニス嬢が婚約者になるのは、そんな気がしておりましたから何も問題がございませぬ。けれど、その理由は?」

「…………もう王宮から報告がきてるだろ」


 公にはできない婚約者交換の真実だが、神殿の責任者……神獣の補佐としての役割を持つバルトラスには、王宮からの密書という形で報告がきていた。

 けれど、バルトラスが聞きたかったのはそこではない。


「えぇ。ですが、相性の一言で片付けられますかな? ブリジット嬢を崇拝する者達を黙らせられますかな?」

「できる。アニスは俺の力を譲渡できるぐらい、神獣()との親和性、相性がいい。はっきり言って、ラフェル達のことを覆い隠せるぐらいの理由になるとは思うし……ブリジットではなく、アニスを選んだ説明として申し分ないだろ」


 アニスが神獣の力を使えると()()()聞いたバルトラスは、目を大きく見開いて言葉を失う。

 そして、焦ったように叫んだ。


「ア、アニス嬢に神獣の力を譲渡できるっ……⁉︎ そんなの、初代神獣の花嫁様ぐらいじゃ……‼︎」

「だから、ラフェル達のことを誤魔化すぐらいの理由には充分だろう?」

「充分どころの騒ぎではありませんぞ‼︎ 下手をしたら、アニス嬢自身が危なくっ……‼︎」


 神獣を狙うような不届き者は()()()いないが、人間であるアニスならば狙い易いと()鹿()()()()を考える愚か者がいるかもしれない。

 バルトラスは今すぐアニスの身辺の安全を確保するべきだと判断し、神殿騎士の派遣を準備しようとする。

 しかし、実際に動き出す前に、ラスティから待ったがかかった。


「大丈夫だ。アニスには俺の力を分けてきたし……自動的にその身を守るように魔法をかけてきたから、アニスが傷つくことはない」

「…………っ‼︎」


 そう言われてはしまえば、神殿騎士を派遣することは、逆にラスティの力を信用していないと思われる。

 バルトラスは呆れたように溜息を零し……眉間に寄ったシワを揉んだ。


「はぁ〜……あいっかわらず、面倒ばっかり起こしますのぅ」


 疲れたように言うバルトラスに、ラスティは苦笑を隠せなかった。


「ごめん、ごめん」

「そんな軽く謝れても困るますわい。ただでさえ、最近のブリジット嬢崇拝者が増えてきてるのに……」

「…………確かに……ブリジットの件は、ちょっと異常だよな」


 ラスティもそこが気になっていた。

 ブリジットが優秀なのは分かる。

 神秘的な美しさを誇ると言われているのも……個人的にはアニスの方が好みだが……まぁ、そうなのだろうと思う。

 けれど、何故、神獣(自分)と同じように……彼女自身を神聖視する者がいるのかが、分からなかった。


「そっちは調査中ですな。ラスティ様は、アニス嬢のことだけ考えていてくだされ。ぶっちゃけ、ブリジット嬢の意思に反して、崇拝者がアニス嬢を害そうとするかもしれん。今はまだ、婚約者の交換が発表されてないが、それが発表されたらどうなるか……アニス嬢が心配ですのぅ……」

「それは大丈夫だ。アニスの家族に、命尽きる瞬間までアニスを守るって誓ったから」

「いつの間に」

「さっき。転移して話してきた」


 まさかの親への挨拶という、一般的な男女が通るようなことをラスティがしてきたことに、子供の成長を感じる。

 バルトラスはほんのりと感動しながら、「うむうむ」と頷き……大神官としてではなく、近所のじいちゃんのように砕けた口調で告げた。


「なら、男らしく自分の女ぐらい守り通してみせい‼︎ 後、女にはちゃんと愛してるってことを伝えるんじゃぞ。将来結婚する婚約者だから大丈夫だと、胡座を掻いちゃいかん。ちゃんと想いが伝わんないと拗れるからな。これ、大事」


 その声には無駄に実感が伴っていて。

 ラスティは、バルトラスが実際に拗れたことがあるんだろうなぁ……と察した。

 だが、そんなこと言われなくても……ラスティは元々、そのつもりだ。



 神獣は、自分のモノをとても大切にする性質タチなのだから。



「……あぁ、勿論。アニスは……ちゃーんっと俺が守るし。甘やかして、デロデロにして、俺に愛される幸せな婚約生活(期間)を送らせるさ。俺の幼馴染(大切)に手を出そうとする奴は、許さない」


 そう告げたラスティは、とても獰猛に。

 まるで飢えた獣のように笑っていて。



 ラスティの目は、獲物を狩る狩人の目をしていた。



(………………あれ? ラスティ様って……こんな獰猛に笑う人じゃったっけ?)






 バルトラスはラスティから放たれる肉食獣の気配(?)に思わず、頬を引きらせるのだった……。








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