最終決戦の終わりは……別れの笑顔と共に。
…………シリアスブレイクしたかなっと思ったら、またシリアスに戻っちゃったよ……(*・ω・)
ぶっちゃけ、主役がアニスとラスティじゃなくて魔王妃と魔王かなっと思い始めてる今日この頃です(笑)
とにかく! あと数話でこの作品が終わる予定(多分)なので……あと少しお付き合いくださいませ〜
では、よろしくどうぞっ!
『その鞭捌きっ……魔王妃様っっっ⁉︎』
魔族達は魔王妃の鞭捌きを見て、叫んだ。
それを聞いたラスティは思いっきり噴き出しながら……ツッコミを入れた。
「今言ったヤツの中に、変なヤツいただろ⁉︎ 女王様とか言ったヤツいただろっ⁉︎ というか、鞭捌きで魔王妃だって分かるって何っっっ⁉︎」
その正論すぎるツッコミはサラッとスルーされ、魔族達はボロボロと泣き出す。
そして、地面を転がった魔王はガバリッ‼︎ と勢いよく起き上がった。
『……まさかっ……⁉︎』
さっきまでの無表情とは違い、衝撃と困惑と喜びをない交ぜにしたような顔。
そして……魔王はボロボロと涙を零しながら、魔王妃に駆け寄った。
『魔王妃っ〜〜〜っ‼︎』
「嘘だろっ⁉︎ 魔王が正気(?)に戻ったっっっ⁉︎」
『あら、抱きつくのは駄目よ。この身体、借り物だし……アニスさんに抱きついていいのは、神獣さんだけだわ』
スパンッ‼︎
『ぶへっ⁉︎』
魔王妃(アニスの身体)に抱きつこうとした魔王は、再度鞭で地面に転がされる。
ラスティは思わず両手で顔を覆い……泣きそうな声で呟いた。
「止めて欲しい……見た目アニスで鞭振り回さないで欲しい……というか、本気でなんでこうなるんだ……物理的(?)に解決するヤツ、多すぎだろ……つーか、なんで鞭なんだ……もっと他の選択肢なかったのか……?」
『鞭は令嬢の嗜みよ?』
「絶対違う」
『うふふ、冗談よ』
魔王妃は鞭を消すーどうやら魔法だったらしいーと、地面に転がった魔王に近づく。
そして、ふわりと微笑んだ。
『久しぶり、愛しい旦那様。アクセル様』
『ココ……ココット……。君なのか……?』
『えぇ。今は貴方が乗っ取ろうとしてたアニスさんの身体を借りているわ』
『っっっ‼︎』
『ごめんなさいね、簡単に死んでしまって』
撫でるまではセーフなのか、魔王妃は子供のようになく魔王の頭を撫でる。
魔王はそんな彼女の手を取り……祈りを捧げるように、額を押し付けた。
『ほ、本当だっ……‼︎ なんでっ、お前がっ……‼︎』
『仕方ないことだったのよ。あの従兄弟が馬鹿だったの』
『でもっ……‼︎』
『起きてしまったことは変えられないわ』
諭すような声に、魔王は黙り込む。
どうやら魔王よりも魔王妃の方が随分と大人びているらしいく……もう死んでしまったことを割り切っているようだ。
魔王妃は握り締められた手を強く握り返すと……ふわりと微笑んで、告げた。
『それにね? わたくしが死んだことよりも貴方達の方が問題よ』
「『ヒョェッ……』」
にっこりーー冷たい笑顔に、魔王だけでなくラスティwith魔族達も、思わず後ずさる。
何故なら……それほどまでに怖かったのだ。
ゴゴゴゴゴ……と彼女の背後には黒い威圧が滲んでいて。
背筋に冷たいモノが走る。
本能的に、怒らせちゃいけないモノを怒らせたと理解した。
『わたくしが死んだのがいけないのだけどね? でも、だからっていろんな方に迷惑をかけてはいけないでしょう? 何をしているの? 馬鹿なのかしら?』
『うぐっ……‼︎』
『それほどまでに、わたくしを愛してくれてるのは嬉しいけど……していいことと悪いことがあるのよ? 逆恨みで関係ない方を巻き飲むなんて駄目に決まっているでしょう? 他の人達も、簡単に陛下の暴走に巻き込まれないで頂戴な』
『いやいやいや。魔王陛下は我ら魔族で一番強いから無ー……』
魔族の一人がぽつりと進言するが、魔王妃のスマイルで押し黙る。
『気合いで乗り越えるべきだったのよ』(←笑顔の威圧)
『……………はぃ……』
(……気合いで乗り越えろとか……無理じゃないか……?)
ラスティは遠い目をしながら、そう心の中で呟く。
いつの間にか魔王と魔族達は魔王妃の前に正座していて……懇々と続くお説教に頭が自然に下がっていく。
…………というか……あまりにも自然に正座しすぎだった。
多分、生前の王妃がいた頃もこんな感じだったのだろう。
魔王達はひたすら『はい、そうです……申し訳ありませんでした……』を繰り返していた。
それから体感一時間ほど……お説教を言い終えた魔王妃は大きく息を吐いた。
『…………ふぅ……お説教はこのくらいにして』
魔王妃は立ち振る舞いを正し、薄っすらと微笑む。
その笑顔に、魔王達は息を飲む。
彼女の笑みに滲むのはーーーー離別の意。
別れの言葉を告げることなく終わってしまったあの瞬間のーー。
……………〝さよなら〟のやり直し。
『わたくしは死にました』
淡々と、声が震えぬように。
魔王妃は言葉を紡ぐ。
『ですが……貴方達を救うために……神がわたくしを一時だけ、この世に戻してくださいました。自分を傷つけてきた人達を救うために、アニスさんは身体を貸してくれました。普通なら、怨む相手のために手を貸すなんてあり得ないのに』
『っっ……‼︎』
魔王はそれを聞いて、顔を歪める。
魔王妃を亡くした悲しみで狂ってしまったが……それでも、自分がしたことは許されることではないと、彼は理解していた。
復讐のために、理不尽な悪意に晒されたアニス。
その原因となった相手を救うために手を貸すというのは、どういうことなのか。
魔王は魔王妃……アニスに向かって、頭を下げる。
『すま、ないっ……本当にっ……すまない‼︎』
謝罪の言葉には、誰が聞いても分かるほどの後悔が滲んでいた。
その謝罪を受けたアニスは……魔王妃と意識を交換させ、呆れた顔で呟いた。
「……………仕方ないから、許してあげます」
『っっ‼︎』
「と言いたいところですが……ただ何も罰を与えられずに許したら、苦しいでしょう。だから、貴方達は……生きて、その天寿を全うするまで私の下僕ってことで」
「『えっ……』」
「また変わりますね、魔王妃様」
アニスの纏う空気が変わり、表に出ている意識が魔王妃に変わる。
魔王妃は『優しすぎるわぁ、アニスさんは』と困ったように溜息を零した。
『という訳で、貴方達は天寿を全うして頂戴ね』
『ココっ……‼︎』
『アクセル様』
魔王の言葉を遮るように。
彼女は……困ったように笑う。
『アニスさんは、わたくしを追って貴方が死なないようにと……配慮してくださったのよ』
『だがっ、君のいない世界なんてっ……‼︎』
『馬鹿ね。わたくしの所為で貴方が、皆が死ぬ方が辛いわ。それにね。貴方には生きて贖罪して欲しい。貴方がしてしまったことを、ちゃんと償ってから……わたくしに会いに来て?』
何度目か分からない涙が、魔王と魔族達の頬を伝う。
…………彼は、自分がしてしまったことの責任が取れないほど愚かではない。
魔王は……ゆっくりと片膝をつくと、騎士のように。
断罪を待つ罪人のように頭を下げる。
そして、その決意を口にした。
『その言葉の通りに。オレは自分がしてしまったことの責任を取ろう。すべきことを成そう。けれど、魔族達は……オレの暴走に巻き込まれてしまっただけだ。罪を背負うのは、オレだけでいい』
『いいえ、それは違います』
魔王の背後でそう告げた老人の魔族は……彼と同じように膝をつき頭を下げた。
『陛下の暴走に巻き込まれたのは否定しませぬ。しかし、魔王妃を殺した者を。魔王妃を守れなかった国を。怨み、なくなってしまえと思ったのは我らも同じ。ゆえに、我ら魔族も……その罪を背負いましょうぞ』
老人に続くように、魔族達全員が頭を下げる。
魔王妃(とアニス)、ラスティはそんな彼らの姿を見て……ゆっくりと頷いた。
「分かった。神獣ラスティの名の下、貴方達の贖罪の行く末を見守ろう」
『…………ありがとう。アニス嬢、神獣ラスティ』
魔王は再度頭を下げて、感謝の言葉を紡ぐ。
その姿を見た魔王妃はホッ……と安堵の息を零した。
『良かったわ。これで、ちゃんと……お別れができる』
『……………ココ……』
『アクセル様』
魔王妃は笑う。
その笑顔は一切の曇りがない、晴れやかな笑顔。
大切な人達に、悲しい思いをさせないようにと……優しい想いが込められていた。
『わたくし、幸せだったわ。とっても楽しかったわ。短い間だったけれど……好きな人と共に時間を過ごせたこと。それは何よりも素晴らしいモノだった』
『っっ……‼︎ ココっ……‼︎』
『輪廻転生の輪に入ってしまうかもしれないけれど。きっと貴方なら、わたくしを見つけてくれるでしょう? 沢山のお土産話を持って……会いに来て頂戴ね。何も覚えていなくても……きっと、貴方をずっと待ってるわ』
ふわり、ふわりと……床から光の粒が放たれ始める。
それは夜空のような空間を、優しく染め上げて。
光溢れる空間へと変えていく。
それが意味することは、封印術式の崩壊。
封印術式を解いた訳ではないが、術式内に侵入した以上……綻びが生じるのは当然で。
この崩壊は……遅かれ早かれ、起きるものだった。
『あぁ……もう時間みたいだわ』
それと同時に……魔王妃の存在も、光と共に消え始める。
魔王妃は……アニスの身体から抜け出ると、半透明の身体で今度こそ魔王に抱きついた。
『ココっ……‼︎ いつまでも君を愛してるっ……‼︎』
『うふふっ……わたくしも愛してるわ。ずっと、ずっと』
魔王妃は柔らかく微笑み、魔王の唇に触れるだけのキスを落とす。
そして……。
『また会いましょうね、愛しい魔王様』
パリンッーー。
硝子が割れるような軽やかな音と別れの言葉と共に、その空間は光に包まれたーーーー。




