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夜のお茶会には、お菓子と紅茶と恋の話を


タイトル通り、恋バナ回だよ‼︎


鼻風邪から復活‼︎

熱中症じゃなくて風邪引くとか、ちょっと私の体調斜め上すぎるけどっ……みんなも体調気をつけようね‼︎


今後ともよろしくどうぞ☆


 







 朝起きて、ハティアの手を借り着替えをする。

 祈りを捧げてから、人型のラスティと共に朝食を食べて……。

 ハティア達から勉強を教わり、昼食を食べてから、神獣の力の訓練。

 そして、夕食を食べて、就寝の準備をして寝るーーーー。



 神殿に来てから数日ではあるが、既にルーティーン化した日々。



 しかし、そんな代わり映えしない日々であろうと……アニスの心中は穏やかではなかった。







 *****







「ヘルプミー、ブリジット‼︎」

「きゃっ……⁉︎ アニスっ……⁉︎」


 深夜の時間帯ーー。

 唐突に王宮の一室……今はブリジットの部屋となっている場所に、アニスは黄金の光を纏いながら現れた。

 ネイビー色のネグリジェに着替え終え、寝ようとベッドに入りかけていたブリジットは、びっくりしながら彼女を見つめる。

 しかし、顔が真っ赤になって若干涙目になっていたアニスに……〝これはただごとではない〟と判断したブリジットは、柔らかく笑いながら声をかけた。


「もう……驚かさないで頂戴な。びっくりしてしまったわ」

「ご、ごめんね? でもでもっ、ブリジットに助けて欲しくて……‼︎」


 淡いクリーム色のネグリジェの裾を軽く握りながら、アニスはそう言う。

 滅多に自分ブリジットに頼ってくれないアニスが、助けを求めてきたことにブリジットは目を瞬かせ……嬉しい気持ちと心配するような気持ちになりながらベッドの縁に腰かけ、隣をポンポンと叩いた。


「取り敢えず、座って頂戴な」

「う、うん……」

「今、お茶の準備を……」

「あ、大丈夫だよ。それは私が用意するから」


 アニスは黄金の魔法陣を出現させて、ティーセットを転移させる。

 そして、ベッドの上に広がったお菓子や紅茶を見て……ブリジットは口元に手を添えて、楽しげに告げた。


「まぁ……物語で読んだような……夜のお茶会(ティーパーティー)みたいだわ」

「………そうかな?」

「えぇ。いつか、こんなことをしてみたいと思っていたの。アニスと一緒に夜のお茶会(ティーパーティー)ができて、嬉しいわ」

「……………ブリジット……」


 ブリジットは、決められたことしかできない生活をしてきた。

 神獣の婚約者として、父親の監視の下で、全てを管理されてきた。

 そのため、こうやって夜にお菓子を食べるなんて悪いことをしたことがなかったのだ。

 さっきまで顔を赤くして動揺していたアニスは、ブリジットの子供みたいな笑顔を見て……落ち着いた様子で微笑んだ。


「ブリジットに喜んで貰えたなら、良かったよ」

「えぇ。ありがとう、アニス」

「お礼をされることはしてないけどね……」

「わたくしにとったら、お礼をするに足り得るの。本当にありがとう、アニス」

「……ふふふっ。どう致しまして」

「ところで……助けてってどういうことかしら?」

「んぐっ……‼︎」


 ティーカップに手を伸ばしかけていたアニスは、その一言で一瞬で顔を真っ赤にして変な声を出す。

 そろぉ〜……と目を逸らし、顔を真っ赤にしたまま涙目になる彼女。

 ブリジットは見たことがないアニスの姿に、呆然とした。


「その……あの……ラスティのことで……」

「…………ラスティ? ラスティが貴女に何かしたの?」


 心配そうな顔をしていたブリジットは、一瞬で目を鋭くして、ギュッと拳を握り締める。

 しかし、アニスは慌てて首を横に振った。


「ち、違うの‼︎ ちょっと今更ながらにラスティを意識しちゃって……‼︎」

「………………えっ⁉︎」

「ブリジットはラフェルに対してどうしてるのとか聞きたいというかっ……‼︎」


 ブリジットは、アニスから告げられた言葉を理解するのに数十秒の時間を有した。

 だが、それを理解した瞬間ーー剣呑な空気は霧散して、驚いた様子で口元を両手で覆う。

 そして、感動したように目をキラキラとさせた。


「……………まぁ……まぁまぁまぁまぁまぁ‼︎ アニスも、()()()恋愛に興味を持ったの⁉︎ というか、唐突ね⁉︎ 何があったの、教えて頂戴なっ⁉︎」

「ちょっ、待っ……待って、ブリジット‼︎ 〝まぁ〟が多い、興奮しすぎ‼︎ そんなに一気に言われても私、どう反応すればいいか分からないっ……‼︎」

「そ、そうね……‼︎ ごめんなさい、アニス。わたくし、興奮してしまったわ‼︎」


 二人は一度、大きく息を吐いて紅茶を飲む。

 そして……興奮を抑えるように、なるべく声をトーンを抑えながら口を開いた。


「……で? 何があったのかしら?」

「…………その……」


 アニスはぽつりぽつりと、語り出す。

 ラスティと共に神殿に暮らし始めて、とある日からラスティが幼馴染から男の人であると再認識したこと。

 そうしたら、今までのラスティとの接してた距離感が……未婚の男女にしては、アウトだったこと。

 そして、それからずっとラスティを意識してしまって……恥ずかしいやら照れるやら何やらでぐるぐるしちゃって、どうしようもないこと。

 アニスの独白を聞いたブリジットは……ティーカップを傾けながら、首を傾げた。


「……………アニスがラスティのことを、男性だと思ってなかったのは知ってたわ。令嬢としての教育を受けてきて……婚約者であったラフェルにでさえ、適度な距離感を保ってきたのに、ラスティは微妙に距離感がおかしかったから」

「……う、嘘ぉ……」

「あ、でも……それは幼馴染であったから分かっただけで、他の人から見たら……ラスティともちゃんと距離を置いてたように見られてたと思いますわよ? どちらかと言えば、わたくしとラフェルの方が距離感が近かったでしょうし……」


 ブリジットは少し申し訳なさそうな顔をして、指先を弄る。

 しかし、「今はその話じゃないわね」と呟くと、話を元に戻した。


「でも、本当に急ね? とある日、って……実際には何があって、意識するようになったの?」

「………そ、それは……秘密‼︎」

「あら……わたくしとアニスの仲じゃない。教えてくださらないの?」


 こてりっと、あざとく首を傾げながら質問するブリジット。

 しかし、アニスはブンブンと勢いよく首を振って、拒否した。


「だ、駄目‼︎ 恥ずかしいしっ……言ったら、ラスティに怒られるもん‼︎」

「わたくしが喋らなければいいのでしょう?」

「それでも駄目‼︎ バレたら私の心臓が死んじゃうことされちゃうから‼︎」

「まぁ……」

「いや、あのっ‼︎ ブリジットのことを信頼してない訳じゃないし、恋愛事に関してはブリジットの方がお姉さんだけどね⁉︎ でも、恥ずかしくて言えないの‼︎」


 ギュゥっと目を瞑ったアニスは、それはもう林檎のように顔が真っ赤になっていて。

 同い年であれど姉のような抱擁力で、ブリジットに優しくしてきてくれた幼馴染が……年相応の姿を見せることに。

 いつも頼りにしてばかりだったのに、やっと頼ってもらえたことに……ブリジットは喜びを隠せなかった。


「ふふふっ……分かったわ。なら、聞かないでおくわ」

「あ、ありがとう……」

「いいえ。それで……ラスティを意識しすぎちゃって、困ってるっていうことだったわよね?」

「う、うん。意識しすぎちゃって、なんか……ぎこちなくなっちゃうと言うか……。訓練してる時は大丈夫なんだけど、それ以外の時は分かりやすくラスティと距離置いちゃって……申し訳ない気持ちになっているというか」


 アニスは目を閉じて、ラスティのことを思い出す。

 神獣の力の訓練中は、危険な力を扱っているという意識があるからか……普段通りに話せる。

 しかし、それ以外の時には分かりやすく距離を置いてしまっていて。

 ほんの少しだけ寂しそうな顔を……ラスティにさせてしまったのだ。

 アニスはゆっくりと目を開けて、目尻を下げる。

 そして、自分よりも恋愛上級者である幼馴染に質問した。


「…………その……ブリジットは困るとかないの? 意識しすぎてとか、距離感とか……」

「そうね……」


 ブリジットは顎に手を添えて考え込む。

 そして……ラフェルのことでも思い出したのか、蕩けるような笑顔で答えた。


「いつも、困っているわ」

「………いつも?」

「えぇ。だって、婚約者になってから……ラフェルはわたくしへの気持ちを隠さなくなりましたもの」


 婚約者になったラフェルは、言葉だけでなく態度で、視線で、触れる指先で……全てを持って〝好き〟という感情を伝えてくる。

 それに恥ずかしいと思うこともあるけれど、ブリジットはただ一心に愛されることに……喜びを感じていた。


「いつもドキドキして、苦しくなるわ。恥ずかしくなることだって、沢山あるわ。でも、それよりも好いてもらえていることが嬉しいの。上手く話せないことが悲しいの。触れ合えないことが、寂しいの。アニスはどうかしら?」

「………………どうって……」

「意識してしまって困るのでしょう? けれど、今までみたいに触れ合えないのが寂しいから……わたくしに相談しに来たのではないのかしら?」

「…………そう、なんだけどさ……どうすればいいか分からなくて……」


 アニスは困りきったような顔で、目を逸らす。

 確かに、こうやって相談に来たのは……ラスティのことを意識しすぎて、照れてしまって。

 それの所為で上手く接せなくなっているのに、それが寂しくて。

 どうすればいいのかを誰かに相談したかったという理由があった。

 けれど、自分の気持ちを上手く言葉にすることができない。

 自分がどうしたいのかがよく分からない。

 アニスは困ったような顔を顰める。

 そんな彼女を見たブリジットは……ふわりと笑って、その手を優しく握り締めた。


「そうね。取り敢えず、ゆっくりでいいと思うわ」

「…………ゆっくり……?」

「えぇ。ラスティに慣れるのも。その気持ちの整理をつけるのも。アニスのペースでいいと思うの」

「…………そう、かな?」

「そうですわ。アニスの中に芽生えた()()は、アニス自身が育てていくものですもの。無理はいけないわ。それに……ラスティは貴女を大切にしていますもの。多少距離を置いたところで、ラスティがアニスを大切にしなくなる訳ではないわ」

「そうかな……?」

「えぇ」

「…………そっか……うん。なんか、そう言われたら少し楽になったかも」


 アニスはそう言いながら、穏やかな笑みを浮かべる。

 そして、紅茶をこくっと飲んで……大きく息を吐いた。


「ありがとう、ブリジット。話を聞いてくれて」

「いいえ。いつもはわたくしが助けてもらっているもの。わたくしでもアニスのためにできることがあって、嬉しいわ」

「…………私だって、いつもブリジットに助けられてるよ? それに、私は何もしてないよ」

「そんなことないわ。アニスが思うよりも、貴女はわたくしを助けてくださってるの」

「そんなことないって」

「そんなことあるわ」

「むぅ……‼︎」

「本当だもの」


 互いに少し頬を膨らませながら見つめ合い……自分達は何をしているのだろうと徐々におかしくなり、アニスとブリジットは同じタイミングでクスクスと笑い出す。


「あははっ‼︎ 私達、何してるのかな?」

「ふふふっ……変ね、わたくし達。でも、楽しいわ」

「そうだね。楽しいね」


 アニスとブリジットは、にっこりと笑い合って……そのまま他愛ない話をし始める。




 その後……幼馴染の夜のお茶会(ティーパーティー)は、夜深くまで続くのだった………。









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