神獣の力の、危険性
シリアスムーブになると、ギャグで終えたくなっちゃうこの季節……。
段々、ハティア達がギャグ要員(あれ?初めから?)になってきたよね。
【〜ご連絡〜】
明日の更新はできるか分かりません。
どうやら寝ている間に掛け布団をふん蹴ってしまったらしく……鼻風邪を引いてしまったのです。明日までに良くなってれば大丈夫なのですが……更新がなかったら、風邪が悪化したと思ってください。
取り敢えず、みんなも体調に気をつけて過ごそうね‼︎
今後とも、よろしくどうぞっ☆
再度、真剣モードに切り替え訓練を再開したのは……そこそこ時間が経ってからだった。
再度、中庭の中央で向き合ったアニスとラスティは訓練の目的を再確認した。
「まず……訓練の目的は、通常の魔法との差異を認識することと、自身の魔力の代わりに神獣の力を使うのに慣れることが目的だ」
「うん」
「俺は神獣の力しか使ったことがないから必ずこうだって言える訳じゃないが……それでもはっきり言って、神獣の力は〝危険〟だ。だから、ちゃんと使い方を学んでいこう」
「よろしくお願いします、ラスティ先生」
「っ‼︎」
〝先生〟と呼ばれた彼はじわりと頬を赤くして、固まる。
いきなり動きが止まったラスティに……アニスは首を傾げた。
「ラスティ?」
「………ハッ‼︎ な、なんでもない‼︎ 後、先生と呼ぶな‼︎」
「う、うん……? 分かった……」
キョトンとするアニスから少し目を逸らして、ラスティはごほんっとワザとらしく咳払いをする。
しかし、直ぐに意識を戻すと……真剣な顔で、口を開いた。
「まず、神獣の力を使って……いつもやるように魔法を発動させてみてくれ。魔力と神獣の力の差を認識してみよう」
「はいはーい。じゃあ、《爆華》」
アニスは手の平の上に魔法陣を出現させて……三センチほどの小さな黄金色の華を生み出す。
炎のように揺らめく花弁は、どこか幻想的で美しい。
アニスはその華をポイっと勢いよく投げ上げる。
すると、一番高くに持ち上がったところで小さく爆発をした。
規模で言うならば、人の顔サイズの爆発の規模だ。
それを確認したアニスは、納得した顔で頷いた。
「…………本当だ……私の魔力を使って発動するより、威力が強いね」
暢気なアニスに反して、ラスティは若干引いた顔をする。
そして、ぽつりと質問した。
「…………アニスさん。今の、何? 華が、爆発したんだけど」
「あれ? ラスティって私が得意な魔法属性が炎だって知らなかったっけ?」
「いや、知ってるけど」
魔力の質、本人の質によるとも言われているが……とにかく、魔法属性は個人個人によって、得意な属性が分かれる。
基本的には火・水・風・土・光・闇・無の七属性に分類されるが……得意属性は他にも存在する。
アニスが得意とする魔法属性は、基本の火の上位属性である〝炎〟であった。
「…………いや、随分と可愛らしい華だったのに……爆発とか物騒だなって……」
「そう? これでも最小規模なんだけどね?」
「最小規模」
「正式には《爆華繚乱》って言う、華のサイズと繁殖範囲で爆破規模が変わる広範囲爆撃魔法なんだけどね。流石に焼け野原にならないように、小さいの一輪にしたの」
「予想以上に物騒だったなっっっ⁉︎」
「えへっ」
「褒めてないっ‼︎」
思わず叫ぶラスティは、肉球のついた前足で器用に目元を押さえる。
だが、アニスは反省した様子もなくケロリと告げた。
「だって、炎属性は広範囲・高火力が売りだよ? 普通じゃない?」
「…………そうなのか……俺の魔法とは全然、違うな」
「そう言えば、ラスティって色んな魔法使ってるよね」
アニスは今までのラスティの魔法を思い出す。
魔法剣、盾、転移は部類だけで言えば無属性や特殊属性の空間属性に当て嵌まるだろう。
しかし、空を飛んだら、物を移動させたり……お湯を出したり、怪我を治したりと、風属性や火・水、光属性の魔法も使っている。
ラスティは彼女の言葉にコクリと頷いた。
「あぁ、神獣の力には得意属性がないんだ」
得意属性の魔法は、他の属性の魔法に比べて、とても上手く使うことができる。
アニスならば、炎系の魔法はほぼ使えるが……他はそうでもないといった感じだ。
逆に得意属性がないということは、どの魔法でもほどほどということ。
しかし……それを聞いてしまったアニスは、乾いた声で呟いた。
「…………うへぇ。それ聞いちゃうと、神獣の力のヤバさが分かるね」
「だよな。今のも見て、魔力との違いも分かっただろうし」
得意属性がないのに、ほぼできないことがない神獣の力。
他の人ならば、自分が得意とする魔法しか使えなくても、神獣の力であればそれに当て嵌まらない。
加えて、人の魔力よりも質がよく……同じ魔法であれど、威力は段違いときた。
なんて危険で……とても魅力的な力。
誰もが欲しがるだろう、力。
アニスは、今まで自分が秘密にしてきた秘密が……自分の身を守ることになっていたこと。
自分が使える力の危険性を再確認して、ぶるりと身体を震わせた。
何も考えず、学ばずに使っていたら……それが自分に、周りにどんな影響を与えるか分からない。
利用されてしまうことだって考えられる。
滅多に起きないと言われるが……もしも魔法が暴走したら、その被害はどうなるか。
考えたくもない。
「きちんと、使い方を学ばないと危険だね」
神獣の力が危険だがよく分かったからこそ、アニスはそう告げる。
ラスティは賢い婚約者の言葉に、柔らかく笑った。
「あぁ。だから、俺が教える」
「うん、お願いします」
「スパルタだぞ?」
「お馬鹿‼︎ こんな危険な力を持ってるんだから、スパルタは当然‼︎」
「あははっ、偉いな。じゃあ。やるか」
「うん‼︎」
それから、日がたっぷりと暮れるまで……アニスはラスティから神獣の力を使った魔法の使い方を学んだ。
*****
アニスの部屋の掃除を終えて、中庭にやって来たハティアは……遠い目をしながら、訓練を見守る幼馴染達に声をかけた。
「オルト、ティーダ。アニス様とラスティ様の訓練はどんな感じ? 問題ない?」
「…………ハティア……」
「どんな感じ……? 神獣の力のヤバさを、オレらも再確認したけど……?」
「というか、明らかに我々より強いところ見せられて……騎士としての必要性を自己に問うています……」
乾いた声で笑うオルトとティーダに、ハティアはちょっと引きかける。
どうやら、初めから護衛として足枷でしかないと分かっていても、改めてそれを感じさせられたらしい。
ハティアは困ったように苦笑した。
「何言ってんのよ。最初っから分かってたことじゃない。人間でしかないアタシ達は、足手纏いでしかないって」
「分かっててもレベルが違いすぎるのを見せつけられると、落ち込みますよね……」
オルトがそう言いながら指差す方に、視線を動かせば……そこには、黄金の光に包まれるアニスとラスティの姿。
光が乱反射して輝くその様は、どこかの絵画のように美しい。
しかし……その美しさに反して、二人の周りで起きる小爆発が………その光景を一気に物騒なモノへと変えていた。
ハティアはその光景を見て大きく目を見開き、口元を手で覆う。
「………………なんて……」
「「…………ハティア?」」
ただならぬ彼女の様子にオルトとティーダは、心配そうな顔をしたが…………。
次の瞬間には、ズッ転けた。
「なんてグッジョブ美少女‼︎‼︎‼︎ 幻想的な美しさと物騒すぎる小爆発という非日常的な光景が、美少女の妖しい魅力をより引き立ててーーーーぶはっ(←鼻血)」
「ギャァァァ‼︎ また鼻血ですかぁぁぁあ‼︎ そろそろ失血死しますよ、お前ぇぇぇぇ‼︎」
「こいつ、揺るぎねぇぇぇぇ‼︎ 美少女なら、なんでもいいんじゃねーの、こいつぅぅぅう‼︎」
「んな訳ないでしょ‼︎ 今のところ、こうなんのはアニス様とブリジット様だけよ‼︎」
「「あっそ‼︎」」
アニスとラスティの訓練も中々に騒々しかったが……外野達もそこそこ騒々しいのだった…………。
ちなみに、訓練内容は……神獣の力に慣れるために、まずは神獣の力verで魔法を発動させて、その威力の調整や制御練習をしていたとさ。
小爆発してたのは、アニスが炎が一番得意だからだよ‼︎




