幕間・誰だって面倒くさい話は御免被りたい
シリアスかもしれない〜。
幕間だよ〜。
今後ともよろしくね〜。
アニスがハティアから神殿のことを教わっている頃ーーーー。
ラスティは大神官バルトラスの執務室を訪れていた。
「ということで……ブリジット崇拝者が発生する理由に、操作系の魔法が動いてる可能性が上がってきたぞ」
「……………おぉぉぅ……なんということじゃ……」
バルトラスは頭を抱えながら、呻く。
神獣ラスティへの拝謁の申し込みの書類処理をしていた中、急にラスティが訪れ、他の人を退室させるようにと言われた。
そして、彼から聞かされた話は……確かに、他の人に聞かせられない話、現在調査中のブリジット崇拝者のことに関してで。
何者かの人的策略かとは思っていたが、まさか魔法まで使っているとは思ってもいなかった。
…………加えて、神殿に害ある魔法が無効化があるという初めて聞かされる話にもバルトラスは頭を悩ませていた。
「というか……儂、神殿にそんな効果があるの聞いたことなかったんじゃが……?」
胡乱な目を向けられたラスティは目を瞬かせる。
そして……悪びれる様子もなく、首を傾げた。
「…………言ったことなかったっけ?」
「ないわ、馬鹿たれ‼︎ 神殿と神官は神獣の補佐のために存在するのに、色々と聞かされてないことが多すぎじゃろぉっ‼︎」
「あー……ごめん、ごめん。いや……神殿には今までの神獣に関する報告書? 歴史書だっけ? があるから、そのことも書いてあって知ってるかと思ってた」
「そんなの書いておらんかったわっっっ‼︎」
「ふぅん? じゃあ、神獣から信頼を得たら伝えられる秘密ってヤツなんじゃないか?」
「っっっ‼︎」
それに怒るべきなのか喜ぶべきなのか感情の行き場を無くしたバルトラスは、執務机の隅に置かれていた水差しを取り、コップに水を注ぎ勢いよく飲む。
冷たい水を飲んだことで多少は冷静さを取り戻したのか……バルトラスは大きな息を吐きながら、眉間のシワを揉んだ。
「…………はぁ……とにかく。魔法の可能性があるならば……黒幕はかなりの技量を持っているか相当危険なモノに手を出しているということじゃな?」
「あぁ、そうなる」
魔法は便利ではあるが、万能ではない。
つまり、現時点のブリジット崇拝者の規模を考えると……。
かなり高位の魔法使いであるか、危険な代償や儀式を払っていることになる。
それか…………人間以外の黒幕か。
バルトラスは再度大きな溜息を零して、乾いた顔で遠くを見つめた。
「……………キナ臭くなってきたのぅ……」
「だよなぁ。でも、俺にとってはアニスの安全が最優先だから……面倒くさいことは、任せる」
「………誰だって面倒くさい話は御免被りたいんじゃが?」
「大神官の手に負えないレベル、アニス達にまで実害が出そうになったら、手を貸すよ」
「……………はぁぁぁ……そうなる前に、手を貸して欲しいんじゃがのぅ……」
「う〜ん……でも、そこまで問題視しなくても大丈夫な気がしてるんだよな」
軽く告げられた言葉にバルトラスは目を見開く。
そして、その不謹慎な(?)ことを言うラスティに据わった目を向けた。
「いやいや……絶対、そんな軽い話じゃないじゃろ。というか……どんな根拠があって……」
「勘でしかないけど?」
「勘かい」
「まぁ、多分。大丈夫だよ」
力強い声と、動じていないラスティの笑顔に……バルトラスは、なんとなく本当にこの件は〝大丈夫かもしれない〟と思い始めてしまう。
「んじゃあ、頑張ってくれ〜」
しかし、そう言って、大神官の執務室を勝手に後にしたラスティを見て……〝やっぱり気の所為だったかもしれない〟と思い直すのだった。
「もう少し老人を労ってくれんかのぅ……心労が祟るわい」
一人残されたバルトラスは……何度目か分からない溜息を零しながら、呟いた……。




