ラスティ・メタモルフォーゼ
読んでくださり、ありがとうございます‼︎
予約投稿、忘れてました……。
昨日は予約時間を間違えるし……これぞ踏んだり蹴ったり。
まぁ、今のところはほぼ毎日更新できてますが、急に不定期になるかもなので、ご了承ください‼︎
今後ともよろしくどうぞ(*´ω`*)
祈りの時間が終わった後ーー。
神官達は食堂で朝食をするらしいが……アニスとラスティは神獣の私室で、二人っきりで食事を摂ることになった。
「まぁ、アレだな。俺と同じところで食事をすると、気が休まらないからって理由だ。大神官も他の人達に配慮して、私室で食事するらしいし」
「…………まぁ、確かに。偉い人と同じ場所で食べると緊張するもんねぇ」
アニスは納得した様子で頷きながら、ハティアがカートに乗せて持ってきてくれた朝食を長テーブルに置いていく。
ラスティも隣で魔法を使いながら、配膳を手伝う。
全てを並び終えたところで……二人分しかない食事に、アニスはキョトンと首を傾げた。
「あれ? ハティア達は一緒に食べるんじゃないの?」
カートに手をかけ、部屋を出て行こうとしたハティアに声をかけるが……彼女は呆れた顔で答えた。
「食べないわよ、(美少女ともふもふの食事風景なんて萌えるとは思うけど……)馬に蹴られたくないし」
「…………うま?」
「いいえ、なんでもないわ。というか……ラスティ様って他の人と一緒に食事しないって聞くから、アタシ達は最初っから一緒に食べるつもりないわよ?」
「えっ⁉︎ そうなのっ⁉︎」
アニスは驚いた様子で、ラスティの方に振り返る。
すると、彼はちょっと言いにくそうな顔で……頷いた。
「……あぁ、うん。食事は他の人を部屋に入れないで、一人でしてる」
「えぇっ⁉︎ じゃあ、私も一緒じゃない方が良いのっ⁉︎」
「いやいやいや‼︎ アニスは特別だから良いって‼︎」
アニスはそこで、ふと思い返せば……アニス達幼馴染〜ズでも、ラスティと共にちゃんとした食事(いつもお茶会ばかり)をしたことがなかったことに気づいた。
ハティアは今更ながらにそれに気づいて、固まるアニスにひらひらと手を振った。
「という訳で。アタシは食堂に行って食事をしてくるわ。オルトとティーダは、廊下で待機してるらしいから……二人っきりの食事の時間を楽しんで頂戴」
「はい。何かあったらお声がけください」
「あ、神殿騎士は先に朝メシ食ってるから心配すんなよ。じゃあ、ごゆっくり〜」
ハティア達はそう言って、ラスティの私室を後にする。
二人っきりで残されたアニスとラスティは互いに顔を見合わせて……少ししてから、話し始めた。
「幼馴染なのに、ラスティがご飯食べるところ見たことなかったね」
「…………そりゃそうだ。アニス達でも見せようとしたことなかったし」
「えぇ……そうなの?」
「そうなんだよなぁ」
アニスはそれに少しだけショックを受ける。
なんでも知っている幼馴染だと思っていたが……まだ知らないことがあったことに、なんとも言い難い……拗ねた気分になっていた。
どうしてそんな気持ちになるかが分からなくて、アニスは更に困惑する。
ラスティはなんとなく彼女が拗ねていることに気づき……困ったような顔をした。
「拗ねるなよ」
「拗ねてないもん」
「嘘つき。流石の俺も食事シーンを見せるには勇気がいるから、見せなかったんだよ。許してくれよ」
「………え?」
アニスは彼の弁明の意味が分からなくて、首を傾げる。
「………なんで食事シーンを見せるのに勇気?」
「だってさ……お茶会と食事じゃ、ちょっと違うじゃん? 食べてるところ見られるのは…………恥ずかしくて」
ラスティは少し恥ずかしそうに頬を掻きながら呟く。
アニスは怪訝な顔をして……更に首を傾げた。
「………なんで、恥ずかしいの?」
「………えぇ? なんでって……」
「…………あ。もしかして……フォークとかスプーンを使って、器用に食べれないから?」
ラスティの身体は獣だが、食事は人間と変わらない。
しかし、肉球がついた手では、人間のようにフォークやスプーンを持てないだろう。
お茶会の時は、ラスティは器用にティーカップを両手で傾けて飲んだりしていたが……食事になるとそうはいかない。
しかし、そんなアニスの直ぐに否定された。
「違う、違う」
「違うの? じゃあ、魔法を使って食べるから……とか?」
「…………飛行系の魔法を使えば食べれないこともないけど。食事中にまで集中したくないから、魔法という選択肢はない」
大きな物を浮かばせるならばそこまで集中しないが、食事のために魔法を使うとなると……浮かせるモノが小さいため、かなりの集中力が必要になる。
そこまでして食事をするつもりはないと、ラスティは首を振った。
「じゃあ、どうして?」
「……………あぁぁぁ……どうせ、アニスにはいつかは見せなきゃいけないし。よし、覚悟を決めろ。俺」
「えっ?」
「えいっ」
ラスティは唐突に前足を上げると……勢いよく床に叩きつける。
すると、彼の足元に魔法陣が浮かび、ぶわりと光の粒子がその身体を包み込む。
ぐんぐんと光を纏いながら、変わっていく身体。
そして……光が宙に消えた頃には、そこには………。
「…………………へ?」
ケモ耳と尻尾が生えた……白皙の青年が立っていた。
「…………あー……やっぱ、変な感じする……」
青年の口から溢れる声は、いつも聞いているモノ。
所々に金が混じる腰まで伸びた白髪に、若葉色の瞳。
平民が着るようなシャツとズボンというラフなスタイルであるが……胸元から覗く小麦色の肌やしなやかな筋肉を隠しきれていない。
アニスは口と目を大きく開けて……呆然と、彼を見つめ続けていた。
そんな彼女の視線に気づいた彼は、恥ずかし気に笑う。
そして……人の姿になったラスティは、胸元に手を当てて告げた。
「人型が恥ずかしい理由。分かったか?」
アニスは呆然としたまま、数秒間黙り込む。
そして……ハッと我に返ると、大声で叫んだ。
「いやいやいやっ‼︎ それが恥ずかしい理由って余計に意味分からないよっっっ⁉︎」
「えぇぇぇ……⁉︎」
「というかっっっ‼︎ ラスティって人の姿になれたのっっっ⁉︎」
アニスは、困惑しきっていた。
彼女(幼馴染〜ズも)が知るラスティとは、もふもふボディの獣姿だ。
人の姿になれることなど聞いたことなかったし、知りもしなかった。
そして、彼が食事するところを見せなかった理由が……人型と言われても、意味が分からない。
というか、ラスティの人の姿が衝撃的すぎて……アニスの頭はマトモに働いていなかった。
しかし、そんな彼女に……ラスティは頬を赤くしながら、告げる。
「………まぁ、うん。人の姿になれます」
「なんで教えてくれなかったのっ⁉︎」
「いや……だってさぁ。人型って恥ずかしくない?」
「いやいやいや‼︎ 元々、人の姿だから〝人型って恥ずかしくない?〟って聞かれても分からないってぇ‼︎」
「………はっ⁉︎ 言われてみれば、確かに⁉︎」
ラスティは目から鱗と言わんばかりにポンっと手を叩く。
そして、どうして人型が恥ずかしいか……理由を語り出した。
「えーっと……解説すると。俺の姿は神獣が普通で。こっちは……その……なんて言うか……すっごい過剰に着飾ってるって感じなんだよ。四足歩行から二足歩行に変わるのも、視線の位置が変わるのも変な感じするし。でも、流石に犬や猫みたいに口つけて食事は無理だし……人の姿になるしかないし。だけど、恥ずかしいからあんまり人に見せたくないし……だから、アニス達にも見せてなかったというか?」
「…………それは、ラスティ独特の感性だと思う……」
「……………そうなのか?」
「…………多分?」
無言で見つめ合うこと数秒。
ぐぅぅぅぅぅ……と同じタイミングでお腹が鳴ったことで、アニスとラスティは互いのお腹を交互に見て、苦笑を漏らす。
そして……。
「取り敢えず、ご飯にしよ。ラスティの人型が恥ずかしい云々の話は、ご飯食べた後で」
「だな……流石に腹減った」
そう言って、取り敢えず食事をすることにするのだった…………。




