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神殿暮らしは、友人の挨拶と共に


いつも読んでくださり、ありがとうございます‼︎

新キャラ出るよ、ふざけてるよ‼︎


この時期は体調を崩しやすいので、今後もいきなり更新がない日もあるかもしれませんが……許してね‼︎できる限り毎日更新できるよう頑張ります‼︎


今後とも、よろしくどうぞ‼︎








 柔らかな日差しと、もふもふの温もりに……アニスは頬を緩めた。




 微睡みながら、それに手を伸ばして。

 甘えるように頬を擦り寄せる。

 そうすると、そのもふもふはピクリッと驚いたように震えて。

 だが、逃げようとはしないその温かさにアニスは更に身体を沈めて…………。


「…………アニス。起きてくれ……ハティアが……失血死しそうだ……」

「…………ふへ?」



 そう懇願する声に……アニスはゆっくりと意識を覚醒させた。



 アニスは微妙に寝惚けた顔でもふもふ……ラスティの困ったような顔を見つめる。

 緩慢な動きで彼の身体に預けていた上半身を起こし、こてんっと首を傾げた。


「………………ラスティ?」

「あぁ、おはよう」

「…………なんで、いりゅの?」

「………なんでって聞かれたら……ここ、俺の部屋だからなんだが……お前が寝れないって来たんだからな?」

「あぁ……そうだっひゃ……」


 アニスはそう言われて、昨日のことを思い出す。

 話し合いの後、アドニスが帰った後……アニスはまだ婚約者が交換されたことが発表されていなかったため、部屋で大人しくすることにした。

 食事もお風呂も全て部屋で済ませ……後は寝るだけ、となったのだが。

 神殿暮らし初日とあって、緊張からか夜に眠れず……毛布とボードゲーム持参で、ラスティの私室を訪れ(に転移し)た。

 〝夜に未婚の男女が密室にいるのは……〟と動揺したラスティを説得して、一緒に夜遊び(健全)をして、どんどん白熱した戦いになり……そこからの記憶がないため、ゲーム最中に寝落ちしたのだろうとアニスは納得する。

 そして、寝ている間に無意識にラスティのもふもふを枕代わりにしていたらしい。

 アニスは目元を擦りながら、こてんっと頭を下げた。


「…………ごめんなしゃい……寝落ちし……ぐぅ」

「寝るな寝るな寝るな‼︎ お前が寝惚けてると、ハティアの鼻血が凄いことになるからっ‼︎」

「んぅ?」


 アニスはラスティの肉球に頬を押されて、廊下に繋がる扉の方へ向けさせられる。

 そして…………。




 ……二人の白い騎士服を着た男性が大慌てで、神官の服を着た女性の鼻に思いっきりハンカチ(※赤く染まってる)を押し付けていたのを見て、本格的に意識を覚醒させた。




「………………え、何この現状……怖っ……」


 アニスはギョッとしながら、ラスティに擦り寄る。

 しかし、三人の顔をよく確認して……知っている顔であったことに大きく目を見開いた。


「あれぇ? ハティアとオルトに、ティーダ?」


 緑の髪を三つ編みにした女性神官が、大神官バルトラスの孫娘でもあるハティア。

 焦げ茶色の髪の方の騎士がオルトで、赤毛の方がティーダ。

 この三人もアニスに理不尽な悪意を向けない人達であり……幼馴染達ほど長い付き合いではないが、少し歳上の友人とも言えるような関係で。

 アニスは友人達が朝っぱらから謎な行動をしていることに、思いっきり首を傾げた。


「……………何してるの?」

「はっ⁉︎ あぁぁぁ、おはようございますっ‼︎ アニス様‼︎ やっと起きてくれましたね⁉︎」


 オルトはアニスの声にハッとして、心底嬉しそうな顔をする。

 そして、同じような顔をしたティーダが、鬼気迫る様子で思いっきりハティアに叫んだ。


「おいっ、ハティア‼︎ アニス様が起きたから……もう萌え光景じゃなくなったからっ…………鼻血を止めろ‼︎」

「萌え光景とは」

「変態だと思われるぞっ‼︎」

「だから、萌え光景とは」

「それは困るわ‼︎」


 ハティアはギュッと自身の鼻を摘むと、水色の光を放つ。

 なんとなく状況から回復魔法かなぁ……と、その光景を見守っていたアニスは、念話でラスティに愚痴った。


『ねぇ、ラスティ。サラッと質問、無視されたんだけど』

『えっ……あー……その……ハティア達も人の話聞かない時ぐらいあるさ。うん』


 ラスティはどこか歯切れの悪い返事を返す。

 アニスはジトっとした目で彼を見つめながら……質問した。


『もしかして……ラスティ、萌え光景が何か分かってる?』

『…………俺の口からはなんとも。本人に聞きなさい』

『むぅ……はぁーい』


 ラスティが答える気がないと分かったアニスはちょっとムスッとする。

 しかし、鼻血を止めた友人ハティアに柔らかく聖母の如く微笑みかけられたことで、それどころではなくなり……アニスは思わず真顔になった。


「見苦しいところをお見せして、失礼致しましたわ。アニス様」

「いや、大丈夫だけど……ハティアの話し方が気持ち悪い」


 いつもと違って真面目な口調で話すハティアに、思わず言ってしまうアニス。

 ハティアはその言葉に貼り付けていた仮面を直ぐに外して、反論した。


「酷いわね⁉︎ 最初ぐらいは真面目にやるのよっ、アタシだって‼︎」

「「…………ハティア……」」

「はっ‼︎ ごほんっ……‼︎」


 オルトとティーダに名前を呼ばれて、ハティアはワザとらしい咳払いをする。

 そして、三人は優雅に動作でその場に跪いた。


「ご挨拶申し上げます。神官ハティア、並びに神殿騎士オルトと神殿騎士ティーダ。以上三名は本日よりアニス・レーマン様の専属神官及び護衛となりました。如何なるご用命でも、お申し付けくださいませ」

「「よろしくお願い致します、アニス様」」

「えっ…………」


 アニスは友人達の挨拶に驚いたように目を見開く。

 その顔は、もう友人として振る舞えないのかと問うているようで。

 しかし……それは杞憂で終わった。


「と、まぁ……真面目にやるのは最初と公的な場ぐらいで、後はいつもと変わらない態度でいくけどねっ☆」

「えっ? そうなの?」


 ハティアの言葉にアニスは驚く。

 そして、それに同意するようにオルトとティーダは力強く頷いた。


「はい。どうせ側仕えを付けなきゃいけないなら、友人の方が慣れない暮らしで心強いだろうというバルトラス様の配慮ですから……敢えて畏まった態度では察しませんよ。畏まった態度がいいと言えば、そうしますが」

「そんな訳ないじゃん‼︎」

「だよな‼︎ まぁ、流石にボロが出っかもだから、〝アニス様〟とは呼ぶけど……それぐらいしか変わらねぇーよ。つー訳で、〝そんな友人減っちゃうの……?〟みたいな顔しなくて大丈夫だって」


 真面目な雰囲気を崩して、いつもと変わらぬ姿を見せながら立ち上がる三人にアニスは嬉しそうに頬を緩ませる。

 そして……安堵したように、ラスティの身体にもたれかかった。


「あぁ〜……良かったぁ……私、友達少ないからこれ以上減ったら泣いてたよ〜」


 ビクリッ‼︎‼︎

 その一言に、ハティア達は大慌てする。


「えぇっ⁉︎ な、泣かないで頂戴な‼︎ 泣かせたらっ……‼︎ アタシ達がラスティ様にシバかれるわ‼︎」

「えぇ……⁉︎ ラスティがそんなことする訳ないよ〜」

「「「…………………(oh……)」」」


 ケラケラとアニスは笑うが、ハティア達にとっては笑い事ではなかった。

 現に彼女が〝泣いてたよ〜〟と言っただけで、ラスティからは凄まじい威圧感が放たれていたのだ。

 この三人はラスティとブリジットとの接点の方が多かったが……それでも、アニス達四人が〝幼馴染過激派〟であることは分かっている。

 それどころか……どうやらラスティがアニスのことになると、普段以上に過激に反応するらしいことも、今の反応で分かってしまった。

 ハティア達は互いに顔を見合わせ……アイコンタクトで〝気をつけるべし〟と合図をした。


「えーっと……取り敢えず、アタシ達の役割を説明しておくわね。アタシ達は、アニス様の専属というか側仕えというか。神殿暮らしのフォローを任せられてるわ。まぁ、ぶっちゃけ? お二人の邪魔をするつもりはないから、四六時中一緒って訳じゃないけどね」

「僕らも毎日二人で護衛する……とはいきませんので、毎日どちらかが付くことになります」

「ぶっちゃけ、ラスティ様がいっから……オレら必要ねぇ気もすっけどね……」


 ティーダの呟きに、ハティアもオルトも言葉にはしないが、心の中で同意する。

 神殿騎士の役割は、神獣とその伴侶の護衛(通常は、婚姻後に伴侶の護衛がつくが……アニスは神獣の力が使えるため現時点で護衛がつく)だ。

 しかし、人間を遥かに超えた存在である神獣を護る必要性など……ぶっちゃけ皆無に等しい。

 逆に人間に護衛される方が、ラスティの行動を妨げる(足枷になってしまう)可能性があるぐらいだし……神殿騎士よりも、ラスティの方が遥かにアニスを守る力に優れているだろう。

 だとしても、騎士をつけずにアニスとラスティに何かあれば……それはそれで問題になるため、護衛はつけざる負えない。

 なるべく負担にならないようにと……既知の神殿騎士であるオルトとティーダが任命されたのは当然だったが……。

 必要か必要でないかと言えば、明らかに後者だった。


「はぁ〜……ハティア達も大変だねぇ」


 アニスは間の抜けた声でそう告げる。

 だが、その言葉はまさに言った本人にこそ向けられる言葉だと、ハティアは呆れたような顔を返した。


「んもぅ。大変なのは貴女の方でしょ。これから周りが騒がしくなるんだから」

「あははっ、そうかも。だけど……私は大丈夫だよ? 私にはブリジットもラフェルも……ラスティもいるしね」

「俺が側にいるのは当然だろ。大切なんだから」

「うん、頼りにしてるよ?」


 アニスはそう笑って、ラスティの頬を撫でる。

 彼もまた、その手に甘えるように擦り寄り……優しい眼差しで応えた。

 ハティアはその〝()()()〟ともふもふが触れ合う萌える光景に、鼻血が出そうになりながらも……なんとか気合いで乗り越える。


「(うぐっ……美少女萌えるぅぅぅ……‼︎ あ、これだけは言っておかないと‼︎)アタシ達もラスティ様ほどの力はないけど、少しぐらいは手を貸せるんだから……お姉さん(アタシ)達にも頼りなさいよ?」

「うん、ありがとう。ハティア」


 ふわりと微笑んだアニスの笑顔を真っ向面から受けたハティアは「んぐぅ‼︎」と呻きながら、勢いよく鼻を摘む。

 アニスはそんな彼女を見て、ハッとしたように質問した。



「そう言えば、萌え光景って何?」



 ピクリッ‼︎

 オルトとティーダが身体を震わせ、どこか遠い目をしながらアニスを見つめる。

 そして、ゆっくりと首を振りながら……その質問に答えた。


「……………アニス様。(実はハティアが影で美少女見て、涎やら鼻血やら出してる事は)知らない方が幸せなことがありますよ」

「ぶっちゃけ、オレらでさえハティアの美少女好き(コレ)にはドン引きする時があるから……美少女(アニス様)は知らねぇ方が幸せだと思う」

「えっ……なんか怖いんだけど……?」

「「大丈夫(です)。一応、害はない(ですから)」」

「えぇぇぇ……気になるよ……ラスティ、教えーーーー」

「人の性癖はペロれません」

「けちっ」

「んふぅっ(拗ねた美少女かわえぇぇ)‼︎」




 ハティアに据わった目を向けるラスティと、オルト、ティーダの三人。

 それはどこか三人で通じ合うモノがあるようで……。





 仲間外れにされたアニスは教えてくれないことに拗ねたように頬を膨らませながら、八つ当たりするようにラスティの身体をもふもふするのだった。







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