第二回・幼馴染ーズ(+α)の作戦会議(3)
微妙にシリアスかも〜。
読んでくださり、ありがとうございます‼︎
でも……日々の気温が暑かったり、寒かったりで微妙に体調を崩してしまったので……もしかしたら明日は更新できないかもしれません……。
もし数日更新がなかったら、本格的に体調を崩したんだなぁ……と思ってください。
では、今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m
ブリジットは、幼馴染四人の中で……一番大人しいと言えるだろう。
アニスがいつも先を行き……ラスティがそれに悪ノリする。
ラフェルは呆れたように、でも楽しそうに見守り……ブリジットは最後について行くというのが、四人の距離感で。
しかし、ブリジットがそうなってしまうのも仕方ないことだった。
いつも道具扱いされ、求められるのは〝神獣の婚約者〟という立場のみ。
幼馴染以外は誰もがブリジット本人を見ようとしなかったし、ブリジットの意見なんて望んでいなかったのだ。
だが…………。
ブリジット本人を大切にしてくれる幼馴染の中でも……ブリジットに一番に手を差し伸べてくれるのは、いつもラフェルだった。
アニスとラスティが手を差し伸べてくれない訳じゃない。
ただ、ラフェルが一番初めに……後ろを振り返って、手を引いてくれるのだ。
今だって……ラフェルが一番初めに、ブリジットのことを気にしてくれる。
選択肢がほぼ決まっている状況であろうとなかろうと、ブリジット自身はどうしたいかを、聞いてくれる。
ブリジットの意思を、尊重してくれる。
不器用な言葉を、待ってくれる。
そんな風に大切にしてくれるからこそ……ブリジットは、ラフェルに惹かれた。
ブリジットは自分の好きな人が、ちゃんと自分を見てくれることに喜びながら……自分がどうしたいかを零し始めた……。
*****
「……………わたくしは、ラフェルと暮らしたいわ……だって、あのまま家にいたら……死にはしないでしょうけれど、それなりの八つ当たりをされるのは想像に容易いもの」
ブリジットは悲しげに笑う。
自分の父親が、自分を血の繋がった子供として慈しんでくれていないの……これまでの日々で嫌という程実感していた。
父にとって、ブリジットはどこまでいっても道具でしかない。
だからこそ、父親が望まぬ行動をしたブリジットは……これから先、父親からされるだろう行動を予想できた。
「…………お父様が怖いわ。でも……それでも。そんなお父様に逆らってでも……ラフェルと結ばれたかった。身の危険があることは分かっていたけれど……アニスとラスティに迷惑をかけると分かっていたけれど……ラフェルと共にいたいの」
「…………あぁ。わたしも、ブリジットと共にいたい」
ラフェルは優しく手を握り、真剣な顔で頷く。
ブリジットは……そんな彼の顔を見て、泣きそうになりながら告げた。
「わたくしのお父様の所為で、ごめんなさい。これからも迷惑をかけるでしょうけど……わたくしが王宮で暮らすことを許してくださいますか?」
「ブリジットが謝ることじゃないよ。勿論だ。わたしが君を守る」
ブリジットとラフェルの間に甘やかな空気が流れる。
愛おしいと言う気持ちを隠さずに微笑み合う二人の姿を、横で見ていたアニスは……。
ぽつりと、ラスティだけにしか聞こえないほどの小さな声で呟いた。
「………………というか。ブリジットがどう言おうが、あの家でこのまま暮らさせる訳ないのにねぇ?」
「……馬鹿アニス。言わぬが花。余計なことは言わない。俺らは壁になるんだよ」
「はぁーい」
ラスティはアニスが言ったことと同じことを考えていたが、敢えて口に出さなかった。
結局、ブリジットがどう言おうが……父親から暴行を振られる未来しかないのならば、ブリジットをそのまま暮らさせるという選択肢はない。
というか……幼馴染が傷つけられるのが分かっていて、他の幼馴染達(特にラフェル)が行動しないはずがないのだ。
それでも……こうして直接、口に出して本人に確認するという行動も必要なことだった。
ブリジットは周りの人達から、理想だけ押し付けられてきた。
つまり、彼女は自分の自己主張が乏しい。
ラフェルがわざわざ彼女にどうしたいかを聞いたのは、少しでもブリジットの自主性が取り戻せるようにと……自分の本音を言えるようになるようにと、配慮してなのだろう。
アニスは身体を解すように、グイッと伸びをしながら口を開く。
「さぁーて。結局、私達はブリジットが王宮で暮らすのを……ラフェルの説得を後押しすればいい感じかな?」
「だなぁ。ついでに、この後の話し合いでハフェル公爵への圧力をかける」
「それは当然。私達のブリジットに傷を負わせたんだもの」
ニヤリ……。
アニスはその美しい顔に、怒気を帯びた獰猛な笑みを浮かべる。
ラスティも一瞬だけ同じようにニヤリと笑うと……パンッ‼︎ と彼女の顔に肉球パンチを食らわせた。
「むぐっ……‼︎」
「今は怒りに蓋しとけ。下手に今出すと、本番で減るだろ」
「…………ぷはっ‼︎」
アニスは肉球パンチを退かし、さっきと打って変わって落ち着いた様子で笑う。
そして、ゆったりとラスティの身体へと凭れかかった。
「そうだねぇ。今は我慢、我慢」
「そうそう」
「というか……これ、作戦会議する必要あった? なんか、ブリジットとラフェルの惚気を見せられてるだけだった気がするんだけど……」
「まぁ、最初っからどうするかが決まってる作戦会議だったしな。取り敢えず、ブリジットを王宮で暮らさせるって話し合いの前に伝えておきたかったんだろ」
「というか、そろそろ行かないと皆さんキレるのでは?」
「「うぉっ⁉︎」」
いつの間にかにょろっと隣にしゃがみ込んでいたダラスが、肩を竦めながら告げる。
そう言われた二人は壁にかけられた時計を見て……アニスがこの部屋に来てからそれなりに時間が経っていることに気づいた。
「ありゃ〜……結構待たせちゃったかぁ」
「そう言えば、さっきから部屋の外で神官がオロオロしてたな……防音の魔法使ってたから聞こえてなかったが、もしかしなくても俺らを呼びに来た感じか?」
「もしかしなくもそうでしょうね〜」
ダラスはそう言うと立ち上がり、扉を開けて外にいる神官と何かしらの会話をする。
そして、くるりっと振り返ると四人に大きな声で告げた。
「ハフェル公爵が激怒してるらしいーんで、皆さん行きましょー‼︎」
ビクリッ……‼︎
ブリジットの身体が分かりやすく震え、アニス達は一瞬だけ鋭い視線をダラスに向ける。
しかし、彼も悪気があった訳でないことも理解していたから……場の空気を変えるように、軽口を口にした。
「えー。面倒くさいな〜」
「ほら、面倒くさがらない。行くぞ、アニス」
ラフェルも強張った彼女を励ますように、その手を取る。
「…………大丈夫だ、ブリジット。わたしがいる」
「えぇ……隣にいてね、ラフェル」
立ち上がり、歩き出したアニスの隣にはラスティ。
ラフェルはブリジットの手を取りエスコートしながら、その後に続き……その更に後に、ダラスが続いた。
四人(とダラス)は、やっと応接室から出てきたアニス達を見て、泣きそうなぐらいに安堵した表情を見せた神官を見て、微妙に申し訳ない気分になる。
なんとなく、この神官がここまで泣きそうになっている理由に……予想がついたからだ。
「待たせたようで、申し訳ありません。神官様」
「い、いえっ……あの……ハフェル公爵がとても怒っておりますので……できれば直ぐにでも……」
「(あーぁ、やっぱり〜。じゃなきゃ、こんなに泣きそうじゃないよねぇ。)えぇ、向かいましょう」
そうして神官の案内で辿り着いたのは、大人数対応の応接室。
アニス達は互いに顔を見合わせて、ゆっくりと頷き……。
真剣な顔で、決戦の場へと足を踏み入れた。




