見てるこっちが苛々する日々の終わり
初めての人も、そうでない方もこんばんは‼︎
島田莉音と申します‼︎
連載してる作品が他にもあるのに、書きたくなって始まってしまった新シリーズです(笑)
私の好きをぶん投げて詰め込んだので、ご都合主義ですよ‼︎
頭を空っぽにして読んでくださいね‼︎
ちなみに、更新頻度は現時点では不定期です。気分屋なので、書けたら投稿するスタイルですので。
それでは、よろしくどうぞっ‼︎
遠い昔ーーーー。
クリーネ王国のかつて国王が、獅子や虎に似た姿を持つ……神獣と契約した。
それは、神獣と共に生き、神獣と共に国を守るという契約。
つまり、神獣の対として相応しい王子が産まれると、次代の神獣も同じように生まれ……。
兄弟のように育ち、同じように人間の妻を娶り、同じ時期に子を産むのだ。
そのサイクルは約数百年ごと。
しかし、延々と繰り返されてきたその契約のおかげで、クリーネ王国は長い歴史を紡いできた。
そのため、王子と神獣が兄弟のように育つだけでなく……それぞれに嫁ぐ花嫁達も姉妹のように育てられるようになった。
そして……現在の王太子は、その神獣に選ばれた王太子であった。
今代の王太子の名はラフェル・ディスカヴィ・クリーネ。
神獣の名は、ラスティ。
王太子の婚約者となったのがアニス・レーマン公爵令嬢。
神獣の婚約者はブリジット・ハフェル公爵令嬢。
四人(?)は幼馴染として、将来の伴侶同士として、とても仲睦まじく暮らしてきた。
だが、学園を卒業し結婚するまであと一年と言った時期ーーーー。
王太子が暮らす王宮の応接室でーーーー事件は起きた。
*****
「本当に申し訳ない、アニス嬢……‼︎ ラフェルとブリジット嬢が男女の一線を越えてしまった……‼︎」
数日前にも謁見した時よりもかなりやつれ、白髪が増えたクリーネ王国の国王……ジルドレットにそう言われたアニスはとうとうこの日が来たかと心の中でほくそ笑む。
だが、その悪い笑みを顔に出さずに……ふわりと柔らかく微笑んだ。
「分かりました。私は直ぐにでも神殿に入ります」
「アニス嬢⁉︎」
「ふふふっ。《顔だけ令嬢》と呼ばれてる私でも、分かることぐらいありますよ」
アニスはとても美しい顔立ちをしている。
母親譲りのさらりと伸びた薄朱色の髪に、父親譲りの翡翠色の瞳。
華奢な身体つきと整った顔立ちも相まって、美麗という言葉がぴったりだろう。
しかし、そんな彼女よりも美しく頭脳明晰な令嬢こそがブリジットだった。
艶々とした黒髪に、瑠璃色の瞳。
可愛らしい顔立ちであるのに、神秘的な雰囲気を纏い……神獣の妃としてこれ以上ない適任者だと言われている。
そして、そんな彼女と姉妹のように育ってしまったからこそ……ブリジットより劣るアニスは《顔だけ令嬢》と揶揄されるようになった。
だが、そんなアニスも王太子妃としての教育を受けてきたのだ。
ブリジットより劣れど、馬鹿ではない。
国王がラフェルとブリジットのことを伝えてきたということは、その情報は一部の者が知ってしまっており……いつ外部に漏れ出すか分からないということ。
そして……その醜聞を覆い隠すには、アニスとブリジットの立ち位置を交換し、ラスティが暮らす神殿に入るのが得策だった。
「相性の問題、とでも言って私達の婚約者を交換し……私が早々に神殿に入ってしまえば、その信憑性は増すでしょう。そうすればもし二人のことがバレても、そんなに風当たりは強くならないと思います」
「…………そんな簡単に了承していいのか……?」
「構いませんよ。私もラスティも二人の気持ちには気づいてましたから」
「なっ⁉︎ 気づいていたのかっ⁉︎」
「逆に気づかない方が無理ですよ」
アニスはクスクスと笑う。
幼馴染で、いつも一緒にいたのだ。
分からないはずがない。
いつかは国が決めた婚約を無視して、こうなるんじゃないかと思ってすらいたぐらいだ。
「ラスティには伝えましたか?」
「………いや……それはまだだが……」
「では、今から私が伝えて来ますね。御前、辞させて頂きます」
アニスは優雅にカーテシーをして、王宮敷地内にある神殿に向かう。
だが、廊下を少し進んだところで彼女の足元に金色の魔法陣が浮かび、ぶわりっと光の粒子がアニスを包み込んだ。
「うぷっ⁉︎」
「ククッ、相変わらず女性らしくない声だ」
一瞬の浮遊感。
そして、ほんの少し高いところから落とされる感覚。
だが、アニスはふわふわとした金色の模様が入った白い毛並みに包まれ、怪我をせずに済む。
アニスは驚きのあまり、パチパチと瞬きを繰り返していたが……自分がいる場所が白亜の神殿……それも、神獣ラスティの寝床だと気づくと、少しムスッとしながら立ち上がる。
そして、成人男性並みの大きさの獣……神獣ラスティの前まで移動すると、彼の淡い若葉色の瞳を睨みながら、その頬を軽く抓った。
「ラスティ〜?」
獅子や虎に似た容姿であるが……彼は怒った様子のアニスを見て、ニヤリと人間らしい笑みを浮かべる。
そして、悪びれる様子もなく首を傾げた。
「なんだ? 神殿まで転移してやったんだ。感謝してもいいぐらいじゃないか?」
神殿と王宮は同じ敷地内にあるが、馬車で移動しなくてはいけない程度には距離がある。
アニスは彼が善意でやってくれたことが分かっているからこそ、転移自体には怒っていなかった。
「もう。確かに、歩かずに済んだのは有難いよ? でも、せめて一言ぐらい言ってくれないと……心臓に悪いよ。なんのための念話?」
「ふむ。そう言えば、アニスはブリジットとは違い、念話が通じるんだったな」
「そうだよ」
アニスは呆れたような顔をしながら、彼の頬から手を離す。
そして……さっきとは打って変わって、悪戯が成功した子供のようにほくそ笑んだ。
「私達の会話、聞こえてたね?」
「勿論」
互いにニヤリと笑い、ガバッと勢いよく抱きつくアニスとラスティ。
ついでに思いっきり叫んだ。
「あぁ〜〜‼︎ やぁぁぁっと結ばれたよ‼︎ 焦れったかったぁ〜〜‼︎」
「それなぁ〜‼︎ 見てるこっちが苛々する日々だったがっ……やっと結ばれてくれたな‼︎」
外面モードを止め、素の表情を見せるアニスとラスティは「やったー‼︎」と言いながら、二人が結ばれたことを喜ぶ。
四人はとても仲が良い幼馴染だったのだ。
だから、ラフェルとブリジットの気持ちに気づかないはずがないし……二人の仲を応援しようとするのも当然だった。
しかし、四人の婚約は国が決めるモノ。
問題が起きなければ、互いの婚約者を変えることはできなかった。
しかし、年々二人の雰囲気が良くなり……これは将来、問題を起こすぐらいするんじゃないか? とアニスもラスティも思い始めたのだ。
なら、そんな二人のために自分達は何ができるか。
それは……二人が結ばれやすいよう、動くことだけ。
「じゃあ、打ち合わせ通りに私は直ぐに神殿入りするよ」
「うむ。結婚はラフェル達と同じ時期にせねばならないが……早めに一緒に暮らせば、相性の問題という説明も周りに浸透するだろうし……」
「私とラスティ、ブリジットとラフェル……婚約者が変わっても、その関係性は良好って見せつけられるもんね?」
アニスは国王の前で見せていた外面モードを再度被り、優雅なカーテシーをして見せる。
そして、にっこりと微笑んでラスティに告げた。
「では、未来の旦那様? 真面目すぎるブリジット達の罪悪感を煽らないよう……目一杯、愛してくださいませ? 甘やかすのも忘れちゃ嫌だよ?」
「あぁ。勿論だ、未来の伴侶殿。目一杯、愛させてもらおう。というか、元々お前のことはかなり甘やかしてるだろう」
「そうでした‼︎」
そう言い合った二人は、ぷぷっと噴き出さずにいられなかった。