表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の知らない私の話(仮題)  作者: 大吟醸
第一章
1/2

これは薬のせいなのか、それとも…(仮題)

実在する薬の名前を使っていますが、フィクションです。実際にこの薬を飲んだ方がこのような体験をするわけではありません。閲覧されるときには、フィクションであることを受け止めて読まれてください。場合によっては、不愉快に感じる方もいるかもしれません。その場合は、ご一報ください。書きたい内容に影響がない限り、善処します。

 今日も一日疲れた。一体何時になったらこの退屈な、刺激のない繰り返しから解放されるんだろう…


 今年の11月で28歳になる。一昨年の誕生日に、結婚するつもりで5年付き合っていた女性から別れを告げられた。それからは毎日、ただ過ぎて行く毎日を漫然と繰り返している。こんなにショックを受けると思わなかった。自身にこんなに繊細な部分があるとは思わなかった。彼女といるときには感じたことはなかったが、明かりの点いていない暗い部屋に帰るたびに、自分は独りなのだと思い知らされる。そうして、仕事の疲れからか、喪失感からか、全身の力が抜けたように、玄関に座り込む日々が続いている。これではいけないと自分を奮い立たせようとするのだが、もう習慣になってしまったらしく、なかなか抜け出すことができない。


 こんな状態ではあるものの、仕事に手を抜いたことはない。休みも返上して、ほぼ毎日出勤している。仕事をこなすのが遅いだけで、別に何の自慢にもならないし、仕事をしているときはこの脱力感を忘れることができるので、私にとっても会社にとっても好都合なだけだが…


 玄関にへたり込んで10分くらい経っただろうか。腕時計を見ると、日付が変わる頃になっていた。気を取り直して、体と支えるための左手に力を入れて立ち上がる。足が震える。自分の考えを実行せず、立つことを拒絶するような足を開いた右手で叩く。こんな時間から食事をとる気にはならないが、せめてシャワーだけは浴びておきたい。汚れたままの体で布団に入るのは、何よりも私が嫌うことだ。誰かがそうしているのを見ることさえも嫌なくらいに。


 風呂場まで移動し、鏡を見ると、明らかに不健康そうな顔をした男が映っている。目の下には年季の入ったクマが居座っている。まるでゾンビみたいだ、と自嘲する。こんな顔でよく人前に立てたものだ。


 シャワーを終え、布団に潜るが、なかなか寝付けない。これもいつものこと。ここ一年くらいは、ずっと布団に入ったまま、日が昇って明るくなるまで寝付けずにいる。体は疲れているはずなのに、不思議と目が冴えてしまっている。


 そういえば、昨日眠れないことを理由にかかった精神科でもらった薬があったことを思い出した。すぐに、携帯の明かりを頼りに、鞄の中に入れっぱなしになっていた袋を取りだす。その時、リフレックスとフルニトラゼパムという薬だと初めて知った。恐らく睡眠障害だろうということで処方された薬だ。説明書きには「夕食後服用」とだけ書いてある。夕食は取っていないけれど、大丈夫だろう。


 携帯の明かりで足下を照らしながら、冷蔵庫から出しっぱなしになっていたお茶のペットボトルを探し、口をつけてそのまま流し込む。これで眠れるかもしれないという期待と、眠れなかったらどうしようという不安の入り混じる中、意識が遠のいて行き、そのまま眠りに落ちて行った。こんな時間に眠るのは本当に久しぶりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ