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妹と……こんにゃく

作者: 新也

 嘘にはついていい嘘と悪い嘘がある。多くの人は嘘をついた経験があるだろう。今回はそんな嘘をテーマとした、お話である。


 俺の名前は中村太郎、年齢は20歳、滋賀の田舎から東京に上京し現在アパートで一人暮らしをしている現役の大学生だ。ところでいきなりだが俺は今、部屋で一人、昨日借りてきたAVを見てオナニーをしている。酒を飲んでいるせいかテンションが高めの状態だ。しかも自分の中の新境地を開くために先月からこんにゃくを用いてオナニーをするようになった。日本では有名なこんにゃくオナニースタイルだ。こんにゃくの弾力が心地よく俺のあそこにうまくマッチしており相性が最高なのだ。


 

 シコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコシコ………


 

 「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…   最高だぜ……」


 一発抜き終えた俺は酔っぱらっていたせいか何を思ったか使用済みのこんにゃくを捨てることなく皿に戻してラップをかけ冷蔵庫に戻してしまったのである。


 このことが原因でまさかあんなことになるなんて……




 翌日、目が覚めた俺は二日酔いの痛みに耐えながら学校に向かった。昨日飲み会で飲みすぎたことを後悔していた。授業を終え、帰宅した俺は鍵を開けようとするのだが最初から開いていたのである。


 「あれ? おかしいな鍵はかけたはず……」


 恐る恐る玄関を開けてみるとそこには女物の靴が置いてあり、女性がエプロンを着けて立っていた。


 「遅いよ、お兄ちゃん もう夜中の8時だよ!」


 見慣れた顔がする。妹だ、妹の春香である。そういえば妹は今年東京の大学を受験するため下見の為に今日、俺の部屋に泊まると連絡をもらっていたことをすっかり忘れていた。


 「どうやって入ったんだ? 鍵かかってただろう」


 「お母さんからお兄ちゃんの部屋の合鍵を借りたの! もうこんな時間だよ、お兄ちゃんの分の料理も作ったから早く食べようよ」


 「お…おう 悪いな遅くなっちまって 食べようか」


 「うん!」


 「いただきます!」


  机の上にはご飯に味噌汁、サンマの塩焼き、ほうれん草のおひたし、こんにゃくの味噌田楽が並んでいた。


 「おっ! うまそう 料理できるようになったんだな」


 「お母さんにみっちりと教えてもらったからね! ほら お兄ちゃんの大好きなこんにゃくの味噌田楽だよ」


 「うまそうなこんにゃくの味噌田楽だな どれ味見を…… あ…あれ……こんにゃく? こんにゃく……こんにゃくだと!?」


  その時、俺は思い出した。昨日酔っぱらっている最中オナニーにこんにゃくを使い使用後捨てずに冷蔵庫にしまったことを……


 「ど… どうしたのお兄ちゃん いきなり大声で」


 「春香…ここにある食材って全部冷蔵庫にあった物か?……」


 「んっ?そうだよ」


 「こんにゃくもか?」


 「そうだよ! 冷蔵庫の奥にしまってあったお皿の上にあったこんにゃくを使ったんだよ」



  な…何てことだろうか… これは これは! これは!! 俺の使用済みこんにゃくじゃあないか!!!


 「早く食べてみて! 感想聞きたいから」


 「お…おう……」


  やばい…これはもう食べなければいけない空気だ。妹がこちらを見ている。食べなければいけないのか、この使用済みこんにゃくを…… 恐る恐る箸でこんにゃくをつまみ口元に持っていく。妹が早く味の感想を聞きたいのかキラキラした目でこちらを凝視している。


 覚悟を決めろ…俺!!!


 パクッ


 こんにゃくを口の中に入れる俺、正直味のほうは味噌が多くかかっていたせいか味噌の味しかせず味噌が好きな俺にとってはおいしく感じたのだが気分は最悪だ…気持ちが悪い……


 「お…おいしいです……」


 「本当?うれしいなあ 料理の勉強がんばった甲斐があったよ どれどれ私もこんにゃくの味噌田楽を…」

 

 「まっ 待て!」


 「なっ 何!?」


 「食べるのか? そのこんにゃく…」


 「えっ 食べるよ あたりまえでしょ」


 どうするよオイ、このままだと妹が俺の使用済みこんにゃくを食べてしまうことになる。それはヤバすぎる、かわいそうだ! 正直に言うべきか、そのこんにゃく昨日オナニーしたときにあそこをシゴいたこんにゃくなんだと……いや、言えない、そんなこと言えるはずがない。言ったらドン引かれるだろう…しかし、言わねば妹が使用済みこんにゃくを食すことになる。お兄ちゃん失格だぞ、それは。


 「春香…(震え声) そのこんにゃくな……実は……」


 「んっ? こんにゃくが何?」


  言えー! 言うのだ中村太郎! 正直になれ!勇気を持て!妹の為だろ、お兄ちゃんとして妹を守るのは当然だろうが!! 覚悟を決めろ!!!


  「友達が群馬の旅行先でお土産として買ってきてくれた有名こんにゃく店のこんにゃくなんだよ。すごいうまいらしいぜ!!」


 俺の嘘つきーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!! 

そのこんにゃくスーパーで買った普通のこんにゃくで、しかもオナニーでシゴいた使用済みのこんにゃくだろうがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


何で嘘をついたんだ俺のバカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


 パクッ



 「あっ…」


 時すでに遅し、食べてしまった、妹が食べてしまったのである。俺の使用済みこんにゃくを……


 「どうだ?そのこんにゃくの味、おいしいだろ……」


 何、のんきに味の感想を聞いているんだ、俺の最低野郎ーーーーーーーーー!!!


 もぐもぐ


 「ん~~? 何だろう少し臭みを感じるけどきっとこれが有名こんにゃく店のこだわりの味なんだね(笑)おいしいよ、このこんにゃく!」


 その後、使用済みこんにゃくを笑顔で食べ続ける妹を見て主人公、中村太郎は決心した。

お父さん、お母さん、ごめんなさい…僕は親不孝者です。妹にオナニーでシゴいた使用済みのこんにゃくを食べさせ嘘をつきました。 

神様、もう僕は嘘をつきません、今回のことは反省しています。だから許してください。この日を境に中村太郎は正直に生きようと決意したのである。


 翌日の朝、妹が俺に腹痛を訴えお腹を壊し下痢でトイレにこもってしまった。

その原因が俺の使用済みこんにゃくのせいかどうかなのかは定かではない。


 


 

ご愛読ありがとうございました。

今回の作品はホラーとギャグを織り交ぜたホラーギャグをテーマに書いてみました。


書き終わって思ったことは、しばらく自分はこんにゃくを食べたくないと思いました。


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