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コーヒーが冷める時間に

市来希沙の名前を今まで市川希沙にしてました。すみません。

 恋のライバルだと思った相手が、それ程仲が進展していなくて安心した矢先、希沙から強烈な追撃を食らわされた。確かに、緑川に対する貢献度に関しては、彼女の方が上かも知れない。むしろ慣れない学級委員長という仕事では、日々彼に助けられていた。しかし、信頼関係はこれからでも築けるし、どっちかというと同じクラスのまりんの方が有利な気さえするのであった。


「歴史知識はこれからでも間に合います」

「ふーん。私の今までの蓄積に勝てると思って」

 希沙はコーヒーを飲み干すと、顎を上げてまりんを、上から目線で舐めるように見つめた。その尊大な態度に、まりんは彼我の差を感じた。


(負けるもんか)まりんの闘争心に火をつけたかどうかは知らずに、希沙は帰り支度を始める。

「付き合ってくださってありがとう」と礼を言うも、まりんの心は敵愾心に占領されていた。

会計を済ませると二人とも無言になり、それぞれの道へ帰って行った。まりんは、溝手の発達障害の調べ物もしなくてはならなかったので、過重が二倍になった。急かせられる心根は、どちらを優先させるか迷っていた。


 自室に戻り制服をハンガーにかけ私服に着替える。暑さが日増しに増長しつつあるのでラフなカットソーとジャージのボトムで、机に座り発達障害の分厚い本を読む。少し進むと眠気が軽く頭を撫でまわす。先ほどのコーヒーはそれ程効いてはくれないようだ。


 目次から見て要点だけ見ることにしたかったが、幼少時からの特徴を網羅している形式だったので飛ばし読みができない。この後、学校の予習復習に、日本史の調べ物をしなければならない。劇に使えそうな日本史の場面を頭にインプットした後、時代ごとの衣装や武具に馬具、時代背景や主要なセリフなどを調べ上げなければならない。


 市来希沙の高校と念努高校の偏差値の差が気になる。向こうはお嬢様高で学力も高い。まりんの高校は普通よりは上だが、どうしても差が出てくる。しかも相手は、いつから緑川のそばにいるかはわからないが、高一からのスタートとしても一年の開きがある。まりんはどちらを優先させるべきか考えてみた。


 溝手はフツメンだが、頭はいい。ただし、他人に対する配慮に欠けることが多く失言が目立つ。それにファッションやお洒落に気を使うことが少ないように思える。制服姿の男子高校生とはいえ、お洒落してるやつは最低眉カットぐらいはしている。そういう身だしなみの重要性が分かっていないように見える。


 かたや、緑川は凛とした気品のような物がうかがえる。演劇部の系列にいるせいか、他者から自分がどう映っているかを常に意識しているように感じられる。また、彼はどことなく上に立つ者としての覚悟を決めているような気がする。外見上の軍配は緑川に上がった。って何を比べているのだろうか、まりんは二人の品定めをしている自分が恥ずかしくなった。


 では、どちらのことが気にかかるか。さらにこっぱずかしい領域に差し掛かり、彼女は顔を赤らめた。溝手も発達障害というハンデを抱えていて、気になることもあるがどうしても同情に近く、やはり異性として頼れるのは緑川ということになった。もしかすると緑川は気が多くて、市来希沙の他にも、とりまきの女子高生に粉をかけている可能性もなくはなかったが、今は無視することにした。


 まりんは一旦、発達障害の本の最後のページを開いて、二週間でどのくらいまで読めるか試算してみた。結果、二週間で読み終えるのは、かなり無理だと判明したので、二度借りることにして本を閉じた。その後日本史の教科書を開いて、劇になりそうな事件を探すのであった。


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