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そうしてお姫様は、

血塗れピエロはそれでも微笑む。

作者: 東亭和子
掲載日:2017/09/16

 サーカスが都にやって来た。

 人々が夢中になって観ているという。

「姫様も観たいですか?」

 うずうずとしている私を見て侍女が微笑む。

「ええ!だってとっても素晴らしいんでしょう?」

 観に行った侍女が興奮しながら話してくれた。

 それはとても素晴らしかった、と。

「まるでこの世のものではないようだと」

 だから私も観てみたいと思った。

 

 末の姫である私に父王は甘い。

 私がサーカスが観たいと言ったら王宮へと招いてくれた。

 初めて観るサーカスは圧巻の一言で、ただただ呆然と観ていた。

 本当になんて素晴らしいのだろう。

 大きな動物を操る男も、人間ピラミッドの男女も、空中ブランコを操る美女も。

 とてもとても素晴らしかった。


「ご招待ありがとうございます」

 ピエロが王の前に出て挨拶をする。

「今日は我がサーカスにとって記念日となりましょう」

 そう言うとピエロは頭を下げた。

 同時に王が崩れ落ちる。

 何が起こったのか分からなかった。

 やがて王の体から赤い血が流れているのが見えた。

 慌てた家臣がピエロを拘束しようとするが無駄だった。

 動物を操っていた男が家臣を次々と殺していく。

 人間ピラミッドの男女が逃げ惑う侍女を殺していく。

 空中ブランコの美女が踊るように家族を殺していく。

 それは夢のような光景だった。


 気がつくと私一人になっていた。

 傍で守っていた侍女も血まみれで倒れている。

「愚かで可愛い姫君のおかげで仕事が楽に片付きました」

 ピエロが目の前に立ってお礼を言っている。

 優雅な仕種だが、体は血まみれだ。

 まだ呆然としている私を見てピエロが微笑む。

「さようなら。王国最後の姫君」

 冷たい痛みが首筋を伝う。

 私の血を浴びたピエロが微笑む。

 その微笑を美しいと思ったのを最後に私の意識は途絶えた。


全ては一瞬のことだった。

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