勇者vs勇者
やっと戦闘までたどり着きましたー。
さてさてこの戦いどうなることやら。
戦闘描写って難しいですね。
アドバイスがあれば宜しくお願いします。
魔王を倒し世界を救った仲間達が、敵意を込めた眼差しで俺達に敵対する。
『暴食』のアサルト。
両手剣から繰り出される一撃の破壊力は俺達の中では最も高く、鋼の様に鍛え上げられた身体は最高の防御力を誇る厄介な相手だ。
今は身の丈程の大剣を中段で構え、鋭い視線をこちらに向けている。
『嫉妬』のシグマ。
刀から繰り出す最速の剣撃と居合いの構えから放つ様々剣技は対空・遠距離にも対応可能であり隙がない。
剣速を生かした連撃にも要注意だ。
彼は両足を大きく開き、腰を落としながら右手を刀に添えて居合いの構えを取っている。
『傲慢』のウイルバ。
光系の魔法を得意とし回復や支援をメインとする後衛だが、魔法攻撃の威力が非常に高く、無尽蔵かと思える程の豊富な魔力量を持つ危険な相手だ。
三対二の状況では彼の存在は厄介だ。
彼はニタニタ笑いながらこちらの様子を伺っている。
対する俺達は・・・
瞬発力と素早さを生かしたヒット・アンド・アウェイ攻撃を得意とするリリット。
体術メインの攻撃だが、魔力も高く付与魔法を織り交ぜた攻撃は、兎人族の特性である常人を遥かに上回る素早さと瞬発力との相乗効果で、爆発的な攻撃力を発揮する心強い味方だ。
俺は片手剣を両手に一本ずつ持って戦う二刀流スタイルだ。
魔法も一通り使用可能な為、普段はオールラウンダーな位置付けだが、今回は剣術メインだろう。
「ウィンフリーが居ないのは助かるけど、難しいね。」
「確かに不利だな。戦略が必要かもな。」
俺達は相手の強さを知っているだけに、無策で飛び込むのは危険と感じたので、策を練ろうと考えていた。
「あのさー、どうせすぐ終わるんだから、とっとと始めよー!」
ウイルバが話しかけると同時に、魔法攻撃を仕掛けてきた。
俺達の頭上から彼の放った魔法が降り注いで来る。
「ちっ。先手を打たれたか。まあ、いいさ。やるぞ!」
「いっくよー!」
俺達は彼等に向かって飛び出した。
先程迄俺達の立って居た場所周辺を次々と光の雨が降り注ぎ、激しい轟音と土煙が上がった。
ウイルバの放った流星雨の魔法だ。
並の魔物の集団なら一掃出来る程の魔法を、笑いながらいきなり軽々と放ってくるとは思わなかった。
あれは反則だろうと文句を言いたかったが、相手のペースに乗せられたら負けなので、俺は目の前に迫る敵に集中した。
ウイルバを後方に下げ、アサルトとシグマが彼を守る様に前に出る陣形を取り、完璧な布陣で俺達を迎え撃つつもりの様だ。
「リリットはシグマを。」
「分かったわ。」
俺はアサルトに狙いを定め、真後ろから付いてきたリリットに指示をした。
俺の横にリリットが並び、シグマを見据える。
と、同時にアサルトが全身に光を纏いながら大剣を大きく振りかぶり不適に笑った。
不味い。一撃でケリをつもりだ。そう俺は直感した。
「跳べ。リリット!」
俺は腰を落とし、両足に魔力を込めながら跳躍した。
リリットは俺の声に驚きながらもアサルトの様子に気が付いたのか、ほぼ同時に飛び上がった。
「究極奥義 審判!」
アサルトが叫びながら大剣を振り降ろし、その力を解き放つ。間一髪で飛び上がった俺の目の前で究極奥義が炸裂する。
衝撃は閃光と共に周辺の大地を粉々に砕き吹き飛ばし、その凄まじい爆発は直撃を免れた俺をも巻き込んだ。
激しい痛みが身体を襲ったが、俺は両腕をクロスさせ全身に力を込めながら、何とか範囲外への脱出に成功した。
リリットは瞬発力の高さ故、俺より高い位置迄飛び上がれたらしくダメージは無さそうだ。一安心だ。
油断した、直撃だったら戦闘は終わっていただろう。
究極奥義は俺達の最大攻撃力の必殺技だ、発動迄に時間が掛かる筈なのにアサルトは短時間で発動出来たのだ。
シグマ・ウイルバも同じと思った方が良さそうだ。
明らかに前より能力が上がっているので要注意だ。
ダメージは負ったものの、審判を堪え切り、体制を整えようとしていた俺に突然何かが向かって来る。
ウイルバの魔法攻撃だった。俺は舌打ちしながら剣で迎撃する。
予め分かっていたなら威力を相殺出来たが、今の状態では完全には相殺し切れず、俺は再びダメージを受け空中でバランスを崩してしまった。
完全にしてやられた。今の俺は格好の的となっている。
このチャンスをアイツが見逃す筈が無いと・・・
悪い予感は的中してしまう。
シグマが光を纏いながら居合いの構えを取ったまま視線を俺に向けニヤリと笑っている。
究極奥義だ。間違いない。
全身から汗が吹き出し、血の気が引いて行く・・・
何も出来ないまま終わってたまるか。と思うも打つ手が無く、悔しさの余り噛み締めた奥歯がギリリと音を立てた。
シグマの笑顔が消え、瞳に殺気が宿る。
殺られる!と思ったその時だった。
「ぐあっ!」
シグマが何かに吹き飛ばされた・・・
「リリット?」
シグマの立っていた場所・・・そこには今、リリットが立っていた。
アサルトの攻撃を交わしたリリットは、シグマが俺に狙いを定めているのに気付き、上空から一瞬で攻撃を仕掛けたのだ。
対物盾という魔法は、盾を装備していない者が防御用に使用するが、リリットは空中からの攻撃時にそれを足場として利用し、相手目掛けて急降下攻撃を仕掛けるという、瞬発力を生かす為に編み出したオリジナル多角攻撃が有り、それをシグマに使用したのだ。
「助かった。リリット有難うな。」
九死に一生を得た俺はリリットの横に降り立ち、ボンポンとリリットの頭を撫でた。
ホントはギュッと抱き締めてチューしたい位感謝しているのだが内職にしておこう。
「えへへー。トーマの役に立てて良かったよ。」
リリットの嬉しそうにニマニマしながら頬を染める姿が可愛く、俺の頬も緩み、冷静さを取り戻す事が出来た。
やはりパートナーが居るというのは大きい。
おっと、今のうちに魔法で回復しておこう。
「あはははー!リリットにすっ飛ばされるなんて、シグマ格好悪ー!」
相変わらず生意気な口調のウイルバだが、シグマをきっちり回復している。抜け目の無い奴だ。
しかし、俺の方も回復を終えて準備万端だ。
兎に角、振り出しに戻ったな、仕切り直しといこうか。
「さあ、第二ラウンドだ。」
「うん。」
俺はアサルトへ、リリットはシグマ目掛けて飛び込んでいった。
戦闘再開だ。
先ずは先制だ。俺は素早くアサルトとの間合いを詰めながら剣を振る。
アサルトは大剣だ。一撃の破壊力は恐ろしいが取り回しが悪いので、二刀流の俺は懐に飛び込み、戦い易い接近戦に持ち込む狙いだ。
俺の剣とアサルトの大剣がガキンと音を響かせぶつかり合う。
素早さ優先なので俺の剣に威力は無いが、速度の劣るアサルトの大剣では受け止めるのが精一杯の様だった。よし、成功だ。
しかも、俺は二刀流だからまだもう一本の剣が残っている。
今なら確実に一撃を叩き込む事が可能だが、油断は出来ない。
一対一なら迷わず攻撃だが、向こうにはフリーのウイルバが居るからだ。
俺がウイルバならここで強力な魔法を放ち、一気に畳み掛けるだろう。
先程、体制を崩した俺を真っ先に攻撃してきたのも奴だったのだから、何かしらのアクションを起こすに違いないので動きを警戒する。
(やはりな・・・)
案の定、このタイミングでウイルバが魔法を放って来た。
おや?強力な魔法攻撃ではなかった。
中位魔法の光球弾だったので、俺は回避せずに剣で相殺した。
ウイルバは自分の魔法攻撃が迎撃されたのにもかかわらず、ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべていた。
全力で戦うつもりはなく、ただ俺達の邪魔をして遊んでいるという感じでイラッと来るが、ここは我慢だ。
という事は、強力な魔法攻撃が暫くは来ないと思っていいだろう。
さて、当面の相手のアサルトだが・・・
「ウオオオォー!」
叫びながら俺の剣を振りほどき、ウイルバの魔法を迎撃したばかりの俺に向け力任せに横斬りを放って来た。
俺は両手の剣で受け止める・・・!!重い!!流石アサルトだ。
ガードしているのにそのまま二メートル程後方へ飛ばされてしまった。
間髪入れずにアサルトの追撃が俺の頭上に迫り来る。
俺は片方の剣で受け流しながら横へ避けると、そこに狙い澄ました様にウイルバの魔法が飛んで来る。
想定内だ・・・俺は素早く魔法を剣で迎撃した。
ウイルバが本気にならなければ二対一でも何とか持ちこたえられそうだ。
しかし、ウイルバにリリットを狙われたら厄介だな。
俺は二人の攻撃を何度か防御主体で避けながら位置を調節して、リリットとウイルバの間に潜り込み、ウイルバの射線を塞ぎながら、リリットとシグマの状況を確認する。
二人共素早さを生かした攻撃を得意とするが、攻撃スタイルの違いだろうか、戦況はリリットが優勢の様だ。
シグマには居合いの構えからの様々な攻撃方法が有り、その一撃の威力は非常に高い上に間合いも広い。
しかも、その攻撃を掻い潜ったとしても、刀ならではの素早い剣技が接近戦でその力を更に発揮する。
接近戦タイプには天敵とも思える相手だが、リリットはそれを覆せる程の能力を持っている。
『素早さ』と『瞬発力』だ。
この二つの能力は俺達6人の中ではリリットがずば抜けており、次がシグマだろうか。
攻守においてその能力を存分に生かして戦うのもその二人だ。
シグマは居合いで牽制又は攻撃し、飛び込んで来たら迎撃というスタイルだが、リリットは相手の攻撃を回避し、一気に飛び込んで攻撃という真逆のスタイルだ。
両者がぶつかり合った場合、優劣を決定するのは素早さと瞬発力だ。
当然、リリットが優勢になるだろう。
しかも、リリットは離れては近付きを繰返し、得意の多角攻撃で的を絞らせずにシグマを翻弄し、居合いの構えすら取らせない。
このまま押し切って貰えれば有難いが・・・やはり難しいな。
相手はシグマだ、流石に決定打は放てない様だし、ウイルバの回復も的確だ。
射線を塞いでも回復魔法は範囲内は必中なので防げない。
俺もフォロー出来る程の余裕など無い。
平行線だ・・・。
今は互角の状況だが、ウイルバが本気になってしまったら勝ち目は無い。
追い詰められているのは俺達だ。
リリットが優勢な今の内に俺の方を何とかしなければ!!
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