二人は魔物持
連続投稿第二弾です。
後でもう1話行きます。
短編の方も宜しくお願いします。
止め処なく無く湧き上がる衝動・・・
その強大過ぎる力は俺の心に牙を剥く。
心の中の俺はその攻撃を正面から受け止め、弾き返した。
俺の心が警告を発する!!
避けようという甘い選択肢であったならば、俺の心は間違いなく呑み込まれていただろう。
それ程の攻撃力を持っているのだ。
そんな俺を嘲笑うかのように攻撃は続く・・・
「くっ!不味いな・・・」
気が付くと俺の左右から同時にソレは襲い掛かって来た。
その力の巨大さに驚愕する!!
どちらも俺の常識を超える生命を持った魔物であるかのように、蠢ながら俺の心を削り取っていく。
「ま、負けてたまるかぁ!!」
俺は有りったけの力を投入し、勝負に出た。
右側のソレは俺の攻撃を、まるでゴム毬の様に変形させて吸収し、弾ける様にカウンターを放ち何事も無かったかの様に元に戻る。
対する左側のソレは俺の攻撃を受け止め、表面を波打たせながら全体に流して完全に吸収した。そして何事も無かった様に攻撃を続けた。
圧倒的な力の前で俺の心が悲鳴を上げ、沈黙した。
・・・俺は・・・敗北した・・・
「ちょっと!!トーマ?大丈夫??」
「あららー?」
俺は倒れた。鼻血を流し、幸せそうに・・・
髪を撫でる優しい感触、後頭部から伝わって来る柔らかく温かい感触に包まれながら俺は目を覚ました。
「あっ、トーマ!!急に倒れたからびっくりしたよ。」
リリットが赤い瞳を大きく見開いて覗き込んできた。
目の前にそびえ立つ巨大な二つの何かに遮られて顔全体は見えない。
意識が次第に覚醒していき、俺は今の状況に気が付いた。
「ひ、膝枕??・・・っ!!」
俺は慌てて飛び起きた。
「きゃっ!!」
「ふがっ!!」
気が付くと俺はリリットのはち切れんばかりの胸、先程の戦いで俺の心を打ち砕いたモンスターに顔を埋めていたのだった・・・
「もう。慌てるからだよ。ま、それだけ元気なら大丈夫だね!!」
そう言うと、両手でゆっくりと俺の顔を夢の世界から解放した。
普通に話掛けているリリットだが、余程恥ずかしかったのだろう。
長い耳をクルクルと小さく丸め、真っ赤になりながら俺から顔を反らし俯いている。
無理も無い。
勇者といっても、彼女は俺の一つ下の17歳の少女だ。
当たり前の反応だ。
俺も今迄は勇者として必死に戦っていたので、色恋沙汰とは無縁だった。
魔王亡き現在、普通のラブリーライフを満喫したいと思っている。
俺にとって今の彼女の仕草は殿堂入り決定だ。
正直、俺にとってリリットは可愛さナンバーワンだ。
あの長いモフモフ耳も大好きです!!
しかも、可憐な顔立ちなのに魔物持というギャップが俺にトドメを刺す。
サイコーです!!
とはいっても、先ずは今のこの気まずい状況を何とかしなければならない。
「ゴメン!!」
サイテーな今の俺は、謝る事位しか思い付かなかった。
「だ、大丈夫だから!!ちょっとびっくりしただけだから!!ト、トーマにならこれくらっ!!!」
彼女は慌てて両手で口を塞ぐ。
真っ赤だった顔が更に赤く染まる。
「俺になら?何だ?」
「トーマのバカァァァー!!エッチィィィー!!」
そう言うとリリットは背中を向けてしまった。
どうやら怒らせてしまったようだ。
長い付き合いだからこそ分かる。
この場合は放っておこう・・・
「あはははー!!最高よー!!」
「出たな!!もう一人の魔物持め。」
「んー?魔物持?何の事かなー?」
「内緒だ!!」
相変わらずの口調で俺に話掛けて来る創造神。
この世界において唯一無二の神。
その優しき金色の瞳と整った顔立ちは正に女神!!
スラリと伸びる手足とスレンダーボディーは透き通る様な白い肌との相乗効果で芸術の域すら越えている。
しかも、スレンダーなのにその胸部には、俺の心を打ち砕く程の柔らかく巨大な魔物が住まう。
実際の年齢は不明だが、見た目20歳の彼女は俺の中では美女ナンバーワンだ!!ああ、女神さま!!
「何か熱い視線を感じるー。トーマったらそんなに私の事が好きなのー?」
ピンクに染まる頬に両手を当て、くねくねと体を揺らしながら俺の様子を伺っている。
確実に遊ばれている!!ならばと思い、悪ノリして答える。
「ああ、大好きだ。お前が欲しい!!」
幾らなんでも悪ノリし過ぎかとも思ったが、女神相手にこの台詞はちょっと恥ずかしい。
これでちょっとは懲りるだろうとルシエルを見つめた。
「えっ??」
ルシエルは先程のポーズのまま、全身を真っ赤に染めて・・・固まっていた・・・
「ちょっとトーマやり過ぎよ!!」
リリットの機嫌が直った様だ。良かった。
「ルシエルも少しは懲りたろ。少し残念だけどな。」
あれだけの美女だ、一度位口説いてみたい。
ま、無理だけど。
「ルシエルさん美人だもんね・・・アタシなんて・・・」
なにを言っているのだろう?リリットとルシエルは対極の存在だ。
甲乙など付けられる筈もない。
リリットは自分の魅力が分かっていない。教えてあげよう。
「俺の中では、リリットは可愛さナンバーワンだし、モフモフ耳も大好きだ。その魅力が誰にも分からないなら俺が責任取る!!だから自信持てよ!!」
俺はサムズアップした右手を彼女に向けた。
「・・・大好き?・・・責任取る?・・・」
譫言の様に囁いたリリットも、全身を真っ赤に染めて固まってしまった・・・
色欲王誕生の瞬間であった。
「もしもしー?お二人さん?」
返事が無い・・・
女性の扱いは難しいもんだと酒場の親父が言ってた事を思い出した。
正にその通りだ!!
「まいったな・・・」
後ろ髪をポリポリとしながら大きく溜息をついた。
トーマは気付いていなかった。
二人の美女を口説き落としてしまった事を・・・
最後まで読んでいただき有り難う御座います。
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