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勇者と創造神

初の連載形式での投稿です。

短編を幾つか投稿してるのですが、なろうでは、あっという間に新規投稿の波に呑まれてしまいまして・・・なかなか読んで貰えないので、今回は不定期ですが、連載形式でチャレンジしてみます。


まずは、お試しで3話まで投稿しますので、是非読んでみて下さい。


あと、もし宜しければ、自分なりに、一生懸命書き上げた短編も読んでやって下さいませ。


皆さんの評価・感想・ブクマがやる気スイッチです。

短編共々宜しくお願いします。








  異世界「ルシエル・グランデ」


創造神ルシエルによって創られた世界の一角に閃光が走る。


直後、目が眩む程の光が周辺を包み込み、大地を激しく揺るがす轟音と衝撃が駆け抜け、空間が裂ける。


数刻後、辺りは静寂に包み込まれた・・・










「どうして創造神(ルシエル)が俺達を・・・」


銀髪の澄みきった青い瞳を持つ青年は、静寂を破り、悲しげに問いかけた。


「うーん。貴方は分からないかもしれないけどー、私の力を越えちゃう貴方達は危険なの・・・いずれ世界を滅ぼしてしまうのよねー。だから何とかしたかったんだけどー、貴方達に返り討ちにされちゃったって訳。」


青年に問いかけられた創造神(ルシエル)は、首を斜めに傾けながら人差し指を顎に当て、青年の方を見つめながらあっけらかんと答えた。


背中まで真っ直ぐと伸ばされた金色の髪、煌めく金色の瞳は優しさで溢れ、鼻筋の通った整った顔つきと尖った両耳は、神々しく、正に女神!トップクラスの美女だ。


先程の戦いで、力の大半を失ってはいるが、世界ある限り消滅することは無い。流石は神である、至って元気だ。


「俺達が世界を滅ぼす?世界の為に魔王(ジハード)を倒した俺達がかぁ!!」


創造神(ルシエル)の突拍子な答えに青年は激怒した。

その青年こそ魔王(ジハード)を倒し、世界を救った六人の勇者の一人、トーマ本人だったからである。





魔王(ジハード)、圧倒的な魔力と強靭な肉体と力を持ち、多くの魔族や魔物を従え、永きに渡り世界を支配した存在。

多くの国が滅ぼされ、人々は彼等に奴隷の様に扱われる日々に夢も希望も失っていった。


永遠とも思われた絶望の中に、希望の光が差した。

トーマ達六人の勇者達である。


彼等は類い稀な力で魔王軍から多くの国と人々を救い、創造神(ルシエル)が遣わせた勇者と呼ばれ、魔王軍と激しい戦いを繰り広げ、死闘の末遂に魔王(ジハード)を打ち破り、世界を救ったのである。


その彼等に突如刃を向けたのが、創造神(ルシエル)であったのだ。

結果はトーマ達の勝利を以て現在に至る。

経緯を考えれば、トーマが怒るのは当然の事である。





更にもう一人。


「アタシもトーマと同じ!!納得いかないわ!!」


トーマの右横に立っていた少女が頬をプクーっと膨らませながら両手を腰に当て叫ぶ。


少女の名はリリット。六人の勇者の一人である。


肩まで伸びたライトブラウンの髪と赤色の大きな瞳、小振りの鼻と薄いピンクの唇、透明感漂う可憐な顔立ちは、見る者の心を鷲掴みにする。


更にその魅力を引き立てるように突き出す二つの突起・・・


・・・胸・・・ではなく、頭の上部から伸びている長いモフモフの耳がモフリストの心を擽るというオマケ付き。

彼女は兎人族なのだ。


そのリリットはルシエルの目の前に飛び出し、胸の前で腕組みをして問いかけた。


「命懸けで世界を救ったのよ!皆が笑顔でいられるように!自分の為じゃなく、世界の平和を心から願って戦ったんだよ!なのに・・なの・に・・・・」


リリットの赤色の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちる。

無理も無い。彼女達の戦いはそれ程の激戦だったのだ。


彼女の思いを察し、背後からそっと抱きしめるトーマ。


「グスッ、・・トーマ・・・」


リリットは両肩から伸びているトーマの腕に両手をそっと重ねた。トーマは優しくリリットを見つめている。


「あ、有り難う。トーマ」


リリットは頬を赤く染めながら、その大きな瞳でトーマを見つめる。


慌てて視線を外し、彼女を抱きしめていた両手を引っ込めたトーマは、大きく深呼吸する。


『ヤベー!超カワイー!ウサ耳サイコー!!』


ちょっとだけ壊れかけたトーマは何とか現実に戻って来た。


「と、取り敢えずその辺の事、ルシエルに聞いてみようぜ!!」


リリットの頭を右手で撫でながら、トーマはルシエルへ視線を移動した。


頭を撫でられた少女は満足そうに両目を閉じ、長いモフモフ耳をペタンと垂らし、気持ち良さそうにしながら頷いた。





「さて、創造神(ルシエル)さん?人々の幸せを願い、世界の平和の為に魔王(ジハード)を倒した俺達に、刃を向けただけでなく、俺達がいずれ世界を滅ぼすなどという絵空事を語った理由、全て聞かせて貰おうか?」


「んー。そーねー・・・」


ルシエルは気の無い返事をしながらニヤリと笑う。

直後、トーマとリリットの視界が光に包まれた・・・

そして、小さく呟く。


「あの二人なら・・・。そして、いつか・・・。」





ルシエルは視線を移動する。

その視線の先で、残りの勇者達4人を捉える。

彼等は先の戦闘で裂けた空間に手を伸ばし、魔力を注ぎ込んでいた。


端から見たら勇者達が空間を修復しているように見えたであろう。


しかし、ルシエルは気付いている。


彼等は既に、勇者という仮面を被った別の存在だという事を。


彼等が今、起こそうとしている禁忌に・・・


と同時に、もう止める事は出来ないという現実に・・・





「今は無理でも、いつか必ず・・・」


そう囁きながら、トーマとリリットを見つめた。





何が起きたのか理解出来ない二人の脳裏に、ルシエルの声が響き渡る。


「驚かせてごめんねー!説明するより見てもらった方が早いと思ったからー。先ずは、私が見てきた世界を救った歴代の勇者達のその後を体験してみてねー!」


そして、二人の視界に歴代の勇者達の姿が次々と早送りのように脳裏に浮かんでは消えて行く・・・


二人はその光景に絶句した・・・





「こんな事って・・・」


勇者達は世界を救った英雄だが、その力は人々にとっては強大過ぎた。

各国は彼等を手中に入れようと様々な手段で勧誘した。

勇者が居る国と居ない国とでは力が違い過ぎるからだ。

やがて勇者達を巡る争いが発生し、平和は終わりを告げる。


結局、人々は勇者達の力を求めてしまうのだ。


勇者達は自らの存在が戦乱の火種となってしまった事と、誰かを守る為に力を使えば、他の誰かを傷付ける事に気が付き苦悩する。


苦悩し、弱った勇者達の心は自らの中にある強大な力に呑み込まれ暴走した。

勇者達にとってもその力は強大過ぎる力だったのだ・・・

放って置いてもいずれ暴走するであろう。

それ程までに凶悪な力なのだ。





トーマやリリット自身にも覚えが無い訳でも無い。

気付かない振りをして誤魔化している。





歴代の勇者達は、世界を滅ぼしていく。


黒いオーラを纏い魔王の如く蹂躙する者。


暴君と化し、他国を征服する者。


魔物を率いて延々暴れ捲る者・・・。


その他、見ているだけでも嫌になる程の奇行の数々。


全ての者が、只の殺戮者に成り下がっていた。


そこは夢も希望も無い、絶望が蔓延する世界が広がっていた。





「これが、真実なのか・・・。なら、俺達の力は何の為に!」


折れかけるトーマの心。

心の中を負の感情が駆け回って行く・・・


「理解して貰えたみたいね。」


視界が元に戻るとルシエルが話掛けてくる。


「頼む、少し時間をくれ。」


トーマはルシエルにそう言って、直ぐにリリットを探す。


彼女は心の優しい少女だ。

あんな惨状を見せられたら普通でいられる訳がない。

そう思った彼は彼女の事を優先した。


「リリット・・・」


「・・・」


返事は無い。

余程ショックが大きかったのか、瞳に涙を浮かべながら呆然と立ち尽くしている。

トーマも同じ心境だ。


今の彼には彼女を励ます術はない。精々手を握ってやるのが精一杯だった。


「ん・・・トーマ?・・・有り難う・・・」


今の彼女の心は折れかけてボロボロな状態だ。

返事が返せたというだけでも驚愕に値する。


トーマはそんな彼女から視線を外し、ルシエルを見つめた。

彼にはどうしても確認したい事があつた。


「アンタが世界を守る為に俺達に刃を向けた理由は分かった。その思いも知らず叩き潰してしまって申し訳ない。だが、俺がそうなるとは限らないだろ!!」


トーマの問いかけにルシエルは即答する。


「今の貴方達は彼等と同じにしか見えないけど?」


「えっ?」


驚くトーマを尻目に話を続ける。


「私と戦っていた時の貴方達の力には、強く純粋な迷い無き意思の力が宿って眩しかったけどー?今はどうかしらねー?」


ルシエルの言葉にハッとする二人、

確かにルシエルの言う通り、二人の心の奥底にある強大な力が抑えきれない程に膨れ上がっている。


「折れかけた心と迷いの中で淀んだ意志が、瘴気化して貴方達から滲み出てるように見えるんだけどー?」


二人はルシエルの言葉で我に帰る。

そして、理解した。


今の自分達に起こっている変化と歴代の勇者達を暴走させた原因を・・・


自らの中にある強大過ぎる力は、世界を救うという様な明確な強い意思で抑えているだけに過ぎず、心に迷いや弱さが生じれば、たちまち暴れ出す両刃の剣・・・


確かに魔王討伐後は何をしたらいいのか分からず、悶々とした日々を送っており、そんな自分に嫌悪を抱き、どうでもよくなってしまう自分が居た。

何か切っ掛けが有れば感情が爆発してしまうかもしれない。


互いの繋いでいた手が力強く握られる。

自分達の心の迷いと強大過ぎる力こそが全ての元凶だったのだ。


「そういう事か・・・」


リリットも気が付いた様だ。トーマを見つめ、頷いた。


二人から滲み出ていた瘴気は、いつの間にか消えている。


反対に、徐々にではあるが、強靭な意思を具現化したかの様な光が二人から漏れだしている。


何かしらの答えにたどり着いた事は明白だ。


ルシエルはそんな二人を嬉しそうに見つめている。

ルシエルにとって二人は特別な存在なのだ。


二人の世界を救いたいという真っ直ぐな思いは誰よりも強く眩しい。

もしかしたらその心の強さで、歴代の勇者達の様にならずに世界を守る存在になってくれると期待していたのだ。


特にトーマの心はこの世界に誕生した時から眩しい光を放っていて、ルシエルはそんなトーマが愛しく、ずっと見守っていたのだった。


二人の瞳に光が宿る。

と、同時に二人から眩い光が溢れ出し、二人を包み込んだ。





「答えが出たみたいだねー!!」


トーマとリリットはルシエルに会心の笑顔を返した。


「俺の敵は自分という事だろ!!だったら簡単だ!!命続く限り自分と戦い続ければいい。奴等は自分の力の本質を理解せず戦う事無く負けたんだ!!だから俺は絶対負けない!!」


「アタシも元気出たー!!自分に負けないよー!!あんな風になりたくないもんねー!!」


満面の笑みを浮かべたリリットは、トーマの右腕に体を寄せ腕を絡めた。


「貴方達最高よー!!試練を乗り越えちゃうなんてー!!見込んだ通りだったわー!!嬉しいわー!!」


ルシエルも、ニパァーと笑いながら、嬉しそうにトーマの空いている左腕に体を寄せ、ぎゅーっと腕を絡めたのだった。


最後までお読み頂き有り難う御座います。


今作も短編も評価・感想・ブクマ受付中です。

読まれた方、宜しくお願いします。

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(グランデール社・異世界帰還者保護事業部創設者)ルシエル・グランデールの祝福

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