ペントハウス夜想曲
Twitterに投稿した『#架空読書独り語り』に加筆・修正したものです。
よろしくお願いします。
ブラック企業の社畜・ミムラは知人・タツノの頼みで高級マンションのペントハウスで暮らすことになる。引っ越し当日、ミムラを出迎えたのは顔の左半分に極彩色の刺青が入った男。全く違う世界に生きる2人はお互い無関心だったものの、徐々に歩み寄るようになる。
まず衝撃を受けたのが、ミムラもケイも、最初はお互いの仕事を聞いて心配しないってこと。
ミムラの仕事を聞いたケイは『あそこブラックらしいな』とか、ケイの前職を聞いたミムラは『需要あったんだ』とか。だからといって『そんなのダメだよ!』とか『大丈夫なの?』とかは1つもない。
でもミムラの仕事辞めさせる的な話になった中盤で、お互い初めて顔色を変えるのが二人の距離感が変わったのかなと思ったりした。
『君のそんな顔を見るのはもう嫌なんだよ!』というケイの台詞は、最後まで読むとさらにクる(泣)
あと面白かったのは二人の『衣食』と『住』が釣り合ってないところ笑
服は安い通販サイトで買うし、食事はミムラの仕事も関係あるのか卵かけご飯とお味噌汁とか、お好み焼き風のキャベツオムレツとか質素なもの。でも2人が住んでいるのは、都内一等地にある高級マンションのペントハウス。どう考えても釣り合いがとれない。
ミムラも全部思い出して、抱き合って泣いて、ようやっと幸せにと思ったらこんなんだった(泣) きっと、あの時ミムラを止めることが出来た筈だけど、止めなかった知人は間違っていたかどうかは読者次第になると思う。
コレ今更だけど、少年時代のケイの短絡さが、結果的に親への復讐になったかなと。ケイに『顔が汚い』と罵っていた父親が、ミムラの憶測通りになったなら個人的には『ざまぁみろ』と思う。ただ、この作品は、最後2ページのタツノ視点までは、すべてミムラの視点で書かれるので、ケイの両親が最終的にどうなったのか、ケイの家族に対する気持ちは明確ではないので、ケイ視点からも読んでみたかった。