九話
バーベキューの後片付けを終え、叔父さんとユースケと花火しながら楽しんだ
俺は疲れた。だからこそ一旦部屋に戻りたかった。その最中にタカノリの部屋に向かった。
流石にあんなみょうちくりんな事を言っていたとはいえ、あいつは友達だ。飯も食ってないはずだろうから心配にもなる。
「おい、起きてるのか?」
「…」
返事は無く、妙な沈黙が間に下りる。薄気味の悪い沈黙がその場に下りる。
あいつはまだ気分が悪いのだろうか? まぁ、そっとしておいてやろうと俺は踵を向いた。
キィ――――
俺が部屋の方に向かおうとしたとき、微かにドアの開く音がした。
背後を振り返る。ドアは小ぶり一つ分くらいの隙間を残すように開いている。
「……」
そこからタカノリの顔が俺を見ていた。部屋の中からは電気が点いていないらしく暗闇そのままだった。
タカノリの顔は白く、無表情だった。あいつが大人しい性格なのは承知の上だがこんな顔をするのは初めてだ。
その瞳が見開かれていてぎょろぎょろと不気味にドアの外の様子を覗った後に俺の方向に固定された。
それでいてタカノリの奴は何も言わず俺の方をただ見ているだけだった。カメレオンの目みたいな不気味な挙動は少し引いた。
「…お前、起きてたのか?」
「…」
俺の問いにタカノリは答えない。只じっと視線をよこしているだけだ。
無性に腹が立った。こっちはここまで心配してやっているのに、無視なのか。
「…おい」
そう言った時、タカノリが笑った。ゾッとする表情だった。
目は全く笑っていないくせに、口元だけは綺麗な逆弧を描く感じで歪んでいる。
タカノリはそこまで明るい性格ではなくどちらかといえば大人しいやつだったがこんな顔をするような人間じゃなかった。
狂気に魅入られたタカノリの目は、何か別の存在に憑りつかれ…いや、魅入られてしまっているような気がしたのだ。
それでも自分の中の不安を吹き飛ばしたかっらから何か言い返してやろうと思ったが、俺は気づいてしまったいた。
…タカノリが俺の方じゃなく、俺の背後の方に視線を向けているっぽいって事に。
「―――――っ!」
思わず俺も背後を向いてしまっていた。階段の反対側の壁の隅が陰になっていた。
よく見ると何かが動いた…様な気がした。注意深く観察しようと顔を伸ばすがそこには何も無かった。そして次の瞬間
――――――――――バ タ ン !
空気が震えるような大きな音と共にドアが閉められた。
俺はタカノリがおかしくなってしまったと、ようやく確信できたのであった。
あの洞窟のせいかそれだけじゃないのかはわからない。ただ、あいつはもう普通じゃなくなってしまったのだと、ようやく得心が行ってしまった。