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尊敬

〈友人の事で相談したい事があります。今日の夕方都合つきますか?〉

 

 と、寅之助にみなみからメールがきた。

 寅之助は、みなみのいつもシンプルにまとまったメールの文章が結構気に入っていた。初めてみなみのメールを見たときは、本当にみなみからのメールか疑ってしまった。いつもの明るくて、かわいいタイプのみなみにしては、用件のみが書いてあり、絵文字もない。一見、男性からのメールかと見間違うほどだった。 しかし、あまり女性とのメール経験がない寅之助には、そのほうが気を使わずにメールできて楽だった。


 〈了解! 仕事終わったら連絡するよ〉

 

 と、寅之助もシンプルに返事のメールをした。


          ♡

          ♡

          ♡

   

「寅之助さん! 急にお時間とらせてしまって、ごめんなさい!」

 

 と、みなみが待ち合わせのレストランに、慌てて駆け込んできた。



「全然いいよ。何か、みなみの友達に大変なことでも起きた?」

 

 と、寅之助が心配そうに聞いた。



「そうなんです。友人が、離婚の危機になってしまって……

 どうしたらいいのかわからなくて、男性である寅之助さんのアドバイスを聞いて欲しいって、友人に頼まれたんです」

 

 と、みなみが真剣な表情で言った。



「ええっ?  離婚の危機? それは大変だ……わかったよ。

 でも話を聞く前に、まず何か注文しよう。食べながらじっくりその話聞くよ」

 

 と、寅之助がレストランのメニューをみなみに渡した。


       ♡

       ♡

       ♡


「そうかぁ……結婚して6年もたつと、そういう事も起きてくるのかぁ……

 なんかその二人は、お互いに素直になれなくなっているように思うな。

 これは聞いた話なんだけど、男女の恋している期間は最長でも2年間らしい。

 ”恋は盲目” っていう言葉にあるように、恋している時はお互いに相手の良い所しか見えなくなっていて、恋が冷めると今まで見えていなかった悪い部分も見えてくるようになる。それまではなんの努力もしないで愛せた人が、そこからは愛するのに努力が必要になってくる。だから多分、その友達夫婦は高校時代からの付き合いだという事だから完全に恋の期間は終わっている事になる。となると、ここで必要なのはお互いの努力かもしれないね。

 幸いなことに、みなみの友人の遙さんは ”どうしたら愛せるのか” と、みなみや僕に相談して愛するための努力をしている。 

 その努力は決して無駄にはならないと思うよ!」

 

 と、寅之助が力強く断言した。



「寅之助さんがそう言ってくれると、本当に心強いです。 

 男性の視点から考えて、どうしたらいいと思いますか?」

 

 と、みなみが少しほっとしながら聞いた。



「そうだね。まず、浅田君? っだっけ? 

 その彼は、男としてのプライドがひどく傷つけられてしまったんだと思う。 

 まずは、そこを回復する必要があるだろうね」

 

 と、寅之助が意見を述べた。

 


「どうしたら回復できるでしょうか?」

 

 と、みなみが真剣に聞いた。



「そうだなぁ……まず、遙さんには男性のプライドに対する認識を改めてもらう必要があるね。男性にとってのプライドっていうのは、”プライドの高い人” という意味で使われる悪いイメージのものとは、違うんだ。 

 男性にとってのプライドは、言い換えれば ”男性にもともと備わっているアイデンティティー” と言ったらわかりやすいかな? 

 だから、それを傷つけられたり、破壊されると、”男性の存在価値自体に、傷や死を招く” と、そのくらい重要に考えて日頃から気をつけて接することが大切だと思うよ。」

 

 と、寅之助が遙へのアドバイスを語った。



「そうなんですね。知りませんでした…… 

 そういわれてみれば、そうかもしれないです。 

 小さい男の子からおじいさんまで、男性はみんな ”男性としてのプライド” が、もともと備わっているような気がします」

 

 と、みなみが納得しながら言った。



「そうなんだよ。だから、僕はそういう点では本当に幸せなんだ。 

 みなみが僕の事を心から尊敬してくれている事がわかるからね」

 

 と、寅之助が笑顔で言った。



「そんな。ヘヘッ! 照れます……

 私のほうこそ、寅之助さんのように心から尊敬できる人に出会えて、本当に幸せです」

 

 と、頬を赤らめるみなみ。



「ハハッ! そんな風に言ってもらえて、僕も照れるよ……」

 

 と、寅之助も赤くなる。



「ヘヘッ! ええっと……今日は本当にありがとうございます!

 帰ったらさっそく、寅之助さんのアドバイスを遙に伝えますね」

 

 と、みなみがまだ頬を赤らめながら、寅之助に心からお礼を言った。



「あっ! あと、遙さん夫婦はお互いに傷つけ合ってしまったことで、お互いを許せなくなっていると思うんだ。その場合、まずはお互いの傷が癒されないと、お互いに許しあうことは難しい。 

 だから、今から二人の心の傷が癒されるように祈った方がいいと思う。

 イエス様も、

   『もし、あなたがたのうちふたりが、どんな事でも、

    地上で心を一つにして祈るなら、天におられるわたしの父は、

    それをかなえてくださいます』

                      と、言っておられるしね。」

 

 と、寅之助が提案した。



「本当にそうですね。遙は、浅田君に恨みがあるようにも感じるんです。

 長い付き合いの中で、お互いに傷つけあってしまったのかもしれません。

 わかりました。是非、お祈りしましょう!」

 

 と、納得してお祈りの姿勢をとるみなみ。



「愛して下さる天のお父様。浅田さん夫妻の心の傷を癒してください。

 互いに赦し合い、愛し合い、尊敬し合えるように助けてください。 

 しゅイエス・キリストの御名みなによりお祈り致します。

 アーメン」

 

 寅之助とみなみは心を合わせて、浅田夫妻のために神に祈りを捧げた。

※本文『』内は新改訳聖書のマタイ18章19節から引用しています。

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