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プロローグ:舞い降りた神

ディアノ-ル歴23年、先の世界大戦から1000年後のこの時代のアトラス大陸は暗黒時代へと突入していた。痩せた土地では作物が育たず、海は荒れに荒れ、漁が出来ず仕舞い、人々は一部の者を残し皆飢えていた。


それは不毛な大地で暮らす全てのアトラス大陸に住む種族にも例外なく当てはまる。


飢えで死ぬ確率は1000年前に比べて1、5倍。

道を歩けば死体が転がっており街に悪臭と病気を蔓延させ、死の病である疫病を巻き起こす。


悠々自給に暮らすのは限られた権力者のみ、市民は重い税を課せられた日々、疫病に恐怖しながら懸命に生きる中、レイバンダル反乱軍が民達の声を聞きようやく立ち上がる。それは圧政を辿る王に宣戦布告をし、5種族全てを巻き込んで世界はまた戦火に巻き込まれて行く。


★★★



この国は腐っている。それも中枢から。

人が行きかう大通りでは、亜人種であるエルフを奴隷にした商人が我が物顔で歩き、貧困層の住人を威圧しながら手元の鎖を引っ張る。その反動で首輪を付けられた若いエルフの女はバランスを崩し、石で出来た歩道に身体を強く打ち付ける。


「くそが」


商人は舌打ちをし、倒れ込んだエルフの腹を何度も蹴る。だがそれを止める人間は誰も居ない……


そして、ふと俺と目が合ったエルフは一瞬悲しそうな表情をして、弱ヶしく起き上がる。そんな顔するなよ……


「注目せよ! これよりこの国家反逆罪の男を処刑する。こいつは見せしめでもあり、二度と領主様に逆らう不届き者が世に出ぬ様にする為でもある!!」


向上をたらたらと垂れ流す、道化師みたいな衣装に身を包んだ男の後ろで俺は斬首台に固定された状態で身動き一つ取れない中、俺の首を撥ねるべく斬首台の鋭利な刃が落下する。


あぁ、ここで俺の人生は終わりか……



★★★



路地裏で孤児が息絶えて横たわっており、その死体にはウジが湧き、腐敗した臭いが路地裏に充満する。そして悲しい事に遺体は1つではない。沢山だ。


「惨い、これが人が治める世か?」


灰色のローブで鼻を覆い、路地裏を通り抜けた一人の男は騒がしい広場に近づき

、首が空を舞う光景に顔を背ける。だが背けた先の目線に入って来たのは路地裏で殺し合う貧困層市民の光景。


「ここまで酷いのか公国は……」


更に目線を広場の中央に向ければ、道化師が胴体を切り離された男の首に槍を突き刺し、高々と掲げて一般市民に見せている。


「もう我慢の限界だ」


そう吐き捨てた男は鞘から剣を抜き、その場から勢いよく跳躍。



突如、高台に舞い降りた灰色のローブに身を包む男は、一瞬の内に道化師の首を撥ね飛ばす。民達は出遅れたかの様に僅かな悲鳴を上げるも、


その声は直ぐに道化師の身体を高台から蹴り落とした男の声で掻き消される。


「民達よ今こそ立ち上がれ! 我らレイバンダル抵抗軍と共に!!」 


腐った街にようやく救いの手が舞い降りた。


★★★



「本当に行くのですね、一度人間界に行けば帰ってこれませんよ?」


「勿論、それは重々承知している」


旅の衣装一式が男が指を鳴らすと出現し、身支度をする青年。その傍らでは豊満な胸の女性が胸に手を当て、男の背に何度も行くのを辞めようとする。


「止まっていた時が動く時、貴方は人間に戻ります、それ」


「止してくれ女神様、先の大戦で生き残った神は二人。俺と貴方だけ……貴方を一人残して人間界に行くのは申し訳ないが、人間界にあいつの生きている気配がするんだ。だから俺は行く」


「でもあれ以来気配は感じとれませんよ?」


「それでもだ、行く価値はある」


銀色の装飾が施した剣を背に背負い、目の前にある扉に手をかける男。

その表情は暗い。


「直ぐに貴方が恋しくなります……」


白いドレスに身を包み、金色の長髪を風にたなびかせる若い女性は、絵になる様であった。その表情が悲しみに溢れていても……


男は金色のドアノブに手を伸ばすのを一瞬止めるが、一度だけ女神の方に振り返り、こう呟く。【ごめんな】っと。



扉の中に消えて行く男の背を見届けた女神はその場で泣き崩れる。


「何がごめんな……ですか! ……こんなにも貴方の事を思っているのに、どうして私じゃ駄目なんですか!」


その遅すぎる発言は人間界に向かった男には聞こえる訳もなく、辺りに拡散する。


「貴方が羨ましいですよ……アリエル」


天を仰ぎ、ツーっと頬を伝う涙。


彼女はこの広大な土地で一生きて行かなければならない。

それが女神に課せられた枷であるかの様に

次回更新は一章が完成したらなので1週間以内に更新

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