黄泉送りの力
思ってもいなかった自分の不思議な力。
主人公の天野巫女はその力で何ができるのか、その力の意味を探しながら成長できるのか、運命を受け入れて幸せになれるのかをご覧ください。
ママー‼ママー‼
私(天野巫女)の唯一の家族だったママが亡くなったのは私が中学の3年生の時だった。それから私の運命の針が動きはじめた。
ーとある田舎の神社ー
私はここの神社でママと神主のおじいちゃんと住んていた。おじいちゃんはママと親戚ではないんだけど、病弱なママと私の面倒をみてくれていた。それを不思議には思ってはいなく、普通の家族のように普通に育っていった。その時までは。
病弱なママが寝たきりになってしまったのは私が中学3年生になった頃。ある日ママが私を呼んで話してくれた。
「巫女、ママはね、代々続く黄泉送りの送り人なの。」
「黄泉送り?」
「そう。亡くなった人を黄泉に送ってあげる人のことよ。」
「よくわからないよ。」
「そうね、聞いたことも無いでしょうね今の世の中では必要も無いのかもしれないね。ママが巫女が小さい頃歌ってあげていた歌覚えてる?」
「覚えてるよ。あの歌聞いていつも安心して寝てた。」
「あの歌が代々伝わる黄泉送りの歌なの。亡くなる人の苦しみを取って安らかに黄泉の世界に連れていってくれる歌。そして亡くならない人にも安らぎを与える歌なの。子守唄ってあるでしょ?それも黄泉送りの歌からきてるのよ。ゴホッ、ゴホッ。」
「ママ大丈夫?もうお話はいいから横になって。」
「大丈夫よ巫女。どうやらママにはもうあまり時間が無いの。お話できるうちに巫女に伝えておかなければいけないの。」
「ママ、そんなこと言わないで。早く元気になってよ。」
「ありがとう巫女。」
ママは枕元から大きな綺麗な石がついたペンダントを出して、
「これを巫女にあげるわ。これは天使の涙っていう石がついたペンダント。黄泉送りの人が代々持っているものなの。あなたももうそろそろ黄泉送りの力が使えるはずだから。」
「そんなの分からないよ、力って何?」
「その時になればわかるわ巫女。」
ママからもらった綺麗な涙の形をした石のペンダント。それがママの形見になるなんて、私は力とか、黄泉送りとか、よくわからなかったけど、それが大事なものだということはわかった。
それからしばらくして、ママが、、、
「ハァハァ、おじいちゃん、ママは?」
学校に連絡があり、急いて私は帰ってきた。
町のお医者さんがきていて、意識か戻らなければ今日、明日の命と言われた。
「ママ、ママ、いやだよ。ママ、私をおいていかないで、1人にしないで、ママ!」
私の涙が天使の涙にかかった。その時天使の涙が光はじめた。それを見たおじいちゃんが、
「巫女や、あの歌を歌ってあげなさい。」
「こんなときに無理!ママがこんなときに。」
そう言ってママを見たらママが白い煙に包まれているように見えた。
「巫女や、見えたようだね。それが送り人の力じゃよ。亡くなる人が見えるんじゃ。」
私は涙で眼がかすんでいたのかと思っていたけど、涙をぬぐってもママの白い煙はきえなかった。
「ちがうもん、ママは死なないもん、ママ」
「巫女や、歌ってあげるんじゃ。ママのために。」
私は光る天使の涙をにぎりしめながら、ママが歌ってくれた歌を歌った。
そうしたらママの顔が安らかになり、そして眼を開けた。
「巫女。」
「ママ、ママ、」
「歌が聞こえたわ。巫女にも力が使えたのね、ありがとう。ということは私も最後の時がきたのね。」
「そんなことない、だって目を覚ましたじゃない。」
「巫女、この歌は亡くなる人に安らぎを与えて残される人への最後のメッセージを伝えるひと時をくれるの。だからもうお別れになるの。」
「そんなのイヤだよ、ママぁ、」
「巫女、その力はいつか誰かが必要としてくれる日がくるはず。そしていつかあなたの子供が受け継ぐの。私はそれは見れないけど、今の巫女を見れば安心して向こうに行けるわ。」
「ママ、そんなこと言わないで、おじいちゃん嘘でしょ、そんなの。」
おじいちゃんはゆっくり首を横にふった。
「巫女、その天使の涙は他の天使の涙と引き合うの。ママとパパもそう。だからあなたも運命の人を見つけてね。おじいさん、それまで巫女をお願いします。」
おじいちゃんはゆっくりうなづいた。
「巫女、もうそろそろ行くわ。だからあの歌を歌って送ってちょうだい。」
「イヤだよ、ママ、行かないで、」
「巫女や、歌ってあげなさい、そうすることでママは幸せにいけるのじゃよ。」
「ママ、」
ママもそっとうなずいた。そして深く目をつぶった。
私はグズグズに泣きながら黄泉送りの歌を歌った。すると見えていた白い煙が上に向かって一直線にのびた。ママは最後にありがとうと言って白い煙と共に向うに旅出っていった。
「ママー、ママー、ママー、」
私は最愛のママを失った。ママの言った話、その時はあまりよくわからなかったし、ママがいなくなった悲しみを乗り切るので精一杯だった。