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光を感じて、確かめて

雨あられのように降り注ぐ光弾。それは上下左右全ての方向から猛打を仕掛ける。

「くそがっ!」

「まだまだ!」

しかし最初のように光弾は命中しない。

俺とリリーファが、交互に本体であるシュナウザに攻撃を仕掛けているからだ。防御に光弾を転用させると攻撃に斑が出る。追尾しない光弾なら、動きながら射撃をすれば当たらない。

「むぅ!」

シュナウザは額に汗を流し攻防を行う。

流れは俺たちにあるが、決め手が足りない。

今は光弾をかわしながらの射撃がせいぜいだ。

「ならばこれで!」

シュナウザは身を転がして状況をリセットすべく、光弾を渦のように巻き上げた。

「うぅ…!」

旋風がホールに巻き起こる。

腕で顔を覆って風を防ぐ。

そしてシュナウザに目をやると、自分の目を疑う事実が起きていた。

光弾をまるで筋斗雲のようにして上に立ち、宙を駆けるシュナウザがいた。

「今度は貴殿方がワタシを捕まえる番です」

弱点の一つである機動力が、あっさりとカバーされた。

「この野郎! 当たれ!」

宙駆けるシュナウザを狙って弾丸を撃つが、射撃など素人の俺の弾が当たるはずがない。空中で爆発したとしても、すでにシュナウザはいない。

リリーファは使い慣れないブートバスターの重さで、砲弾の発射口が上に向かない。

「リリーファ、それこっちに寄越せ!」

走りながらリリーファに手を差し出す。そのときには、シュナウザは光弾を生成し終えていた。

(シュナウザに追い付かれる前に!)

「OK、テンシン! 交換だよ!」

リリーファは思い切りブートバスターを投げる。

ぐるぐると回転するブートバスターを手にした俺は、もう片方の手のライフルを確認もせずに後ろ方向に撃つ。

そんな適当な射撃だったが、背後を狙っていた光弾をいくつか撃ち落とした。

「テンシン、私に武器をっ──!」

やはりリリーファは膝を着いた。出血が多かったリリーファの限界が来たのだろう。

そして流れが変わった。

数発の光弾をコントロールするシュナウザは、素早く宙を動き回りながら多角的な攻撃を仕掛けてくる。

「ぐっ! だぁぁ!」

両手の武器で爆炎を巻き起こし壁とするも、光弾は的確な軌道を描く。

「もう諦めては如何ですか?」

満身創痍で戦う俺にシュナウザが語りかけてきた。

「貴方のような素材ならば此方側でも通用します」

「…参ったな。とうとう敵に勧誘されちまったよ」

「貴方が味方になって頂けるのならば、お嬢も戻って来られることでしょう」

「第一にはリリーファなのか」

「ワタシも月王には数え切れない御恩があります。王族を手にかけるのは本望ではありません」

シュナウザはその瞬間に、感慨深そうな顔をした。

「…だったら俺はもっとだな」

なぜか、俺は張り合うように喋り出していた。

「俺は王族にじゃねぇ、リリーファに助けられてきたと思ってんだ。恩とかそんなんじゃねぇ。リリーファだったから俺はここにいるんだよ!」

「…やれやれ、若気の至りとは言え、失うには惜しい素材でした!」

飛び交う怒号が終るとともに、弾丸と光弾が交差する。

爆ぜる弾丸をかわして光弾が降り注ぐ。

それを想定していた俺は、懸命に動き回る。

爆炎が光弾を防ぎ、爆煙が姿を遮る。

(恐らくシュナウザも余裕がなくなってきている)

俺は右手のライフルと、左手のブートバスターを交互に使いホール内を駆け巡る。

一刀一丁で精一杯の逃げに徹する。

(“光因子”。武器を扱う上での特殊なエネルギー源だと考えれる。それを有限なものだと仮定すると…、限界があるはず!)

一縷いちるの望みに勝利を託す。

そして、実際シュナウザの動きが遅くなってきている。光弾の制御も、持ち味の速さも落ちている。

「…っく!」

そして光弾の動きが鈍った。シュナウザのスタミナ切れだ。

初めのチャンスを逃さない。

「今だぁぁ!!」

膝を曲げて高く飛び込む。目指すはシュナウザの懐。

「おりゃぁぁ!!」

左手のブートバスターを大きく振りかぶる。

「ふんっ!」

すぐに立て直したシュナウザが光弾を振るう。

残った右手で咄嗟にガードをする。

計3発の光弾を受けきった右腕からライフルが落ちる。そして宙を飛ぶ俺の右腕は力なくだれた。

(残った左手で──、)

「──、決めてやる!」

左腕を肩から大きく振る。

「おぉりゃぁぁ!!」

──ッッ!!

当たった感覚、鈍い重みが体に伝わる。

“勝った!”

それは俺が見た幻覚だった──。

後ほんの数センチの距離、打突スタンプをするにも、引きがなければ打てない。

「死になさい!」

光の刃を纏った杖が胸を刺す──。


体力の限界は自覚していた。それもかなり昔からだ。

それを自覚しての身の振る舞いをしてきた。裏方に徹し、育成に力を注ぎ、指揮を執って勝利に貢献してきた。

齢80を超える老体で頑張りすぎたと言っても過言ではない。もとい、月では60を超えると長寿である。

そんなワタシを進軍の総指揮官にされた月王の腹の内は分からない。さらに、その軍団に王女が加わると知ったときは益々分からなくなった。

もしかしたら、このような状況を想定しておられたのかもしれない。

だとすれば自分に与えられた任務を果たすのが兵士の務めだ。

そんなとき、目の前に想定外の存在が現れた。

その若者は、どこまでも王女を信じ抜くと言った。その信頼はワタシのそれよりも確かで、強いものだった。

だからこそ、ここで殺すしかなかった。

彼に何か変えられる前に消すしかなかった。

そうしている内に張り切っている自分がいた。

年甲斐にもなく張り切ると、体が言うことを聞かなくなる。

──そして動きが鈍る。

「おりゃぁぁ!!」

その若者は最後まで希望を捨てなかった。

その気迫に気圧されたワタシは判断を誤った。

とっさに光弾を相手の武器にぶつけることで防御をした。若かりし頃のワタシならそんなことはしなかった。

若気の至りで人を殺め続け、それを武勇伝としていた伝説の兵士は既に死んでいた。

それでもワタシはここにいる。

王から授かった命がある内は逃げられない。

杖に光の刃を生成。それを胸に目掛けて突き立てる。

「──っ!?」

……全く、この地球ほしに来てから驚くことが沢山あった。

王女の裏切りに、次世代のホープであるドグマ・マスカルの敗北。そして輝く才を秘めた地球人。

当人は気付いていないようだ。

彼が、かつてワタシが纏ったような光を放っていることを。

(やっと…、隠居できます──)


シュナウザに渾身の一撃を叩き込む。

刃の反撃より微かに速く放った攻撃でシュナウザは瞳を閉じた。

落下しながら壁に叩き付けられたシュナウザは、再び動くことはなかった。

俺も勢いで後方に飛ばされる。

「テンシン──!」

あぁ……、こりゃ死んだかな。

何のクッションもなく、強い衝撃が俺を迎えた。

最後に聞いたリリーファの声を海馬に焼き付ける。

ガゴン!! ガジャン!!

とりあえず耳障りな轟音が響く。

そして体から重力がなくなっていくのが分かった。

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