7.攻めの一手
凱視点
新幹線のグリーン車。右列2席左列2席という一般の席よりも少しばかり余裕のある車両の中に入った瞬間、すぐ隣から「くそぅ、ブルジョワめ」という呟きが聞こえた。
当人は聞こえてないと思っているようだが、前を歩く両親や弟の未来にもしっかりと聞こえていたらしく、ふるり、と肩が一斉に震えたのを俺は見逃さなかった。
ほら、おもしろい人だろう?
こういう人だから、俺の他にも目をつけていた奴はいたはずだ。でも、渡さない。
そのために、そいつらが在学中ということで二の足を踏んでいる間に、俺は外堀を埋めて先に動いたのだから。
「小町さんは俺の隣で良いですよね」
確認じゃなくて、断定で言えば、小町さんはコクンと頷いた。・・・珍しく可愛らしい仕草だ。
まぁ、両親やあまり絡みのない未来の隣よりも、担任する生徒である俺の隣の方が気が楽だろう。
***
車中での会話は少しばかりヒヤヒヤした。
探偵を雇った話はあれで終わりかと思ったのだが、やっぱりこっそりと調べられたことに違和感というか、疑問があったらしい。
嫌がられたか、と心配になったが、イケメン好きだから言い寄られるのも悪くない、なんて言われたもんだから、俺は有頂天だ。
絶対に俺自身が好きだと言わせてみせる。そういう意味ではこの旅行中はずっと一緒にいられるからアピールし放題だ。