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5.親も普通じゃない!!

※小町視点

 そんなこんなで、あっという間に名古屋に行く日がやってきた。


 それまでの間も日根君の凄まじいアタックがあったのは言うまでもないと思うけれど・・・クラスの子達の前でまでやらかしてくれたのはいただけない。


 でも、クラスの子の何人かは日根君の気持ちに気付いていたようで、同情的な視線を送られた。


 そんなもん送るくらいなら日根君を止めろ。


 ああ、ホントに憂鬱だ。イケメンおもてなし武将を見られるのは嬉しいけど・・・日根君のアタックがだんだん巧妙になってきていて、私のツボを押さえているというか、グラッときてしまうようなやり方をしてくるようになった。


 おそらく、今までの経験から私の好きな言動を予測しているのだろうけれど・・・くそぅ、年上キラーの技術、パネェな!!


「あ、小町さん。こっちですよ」


 私の名前を呼んでひらひらと手を振るイケメン・・・くっ、私服姿は格別だな!!眼福です!ご馳走様!!


 言うまでもないだろうが、そのイケメンは日根君である。


 そして、名前呼びになるくらい親しくなった・・・わけではなく。これが日根君の作戦の1つというだけだ。


 そう。私は男性に名前で呼ばれるのに弱い。そのことを嗅ぎ当てた日根君がオソロシイ。


「日根君、待った?」


 私がゆっくりと歩み寄ると、日根君は輝くばかりの笑顔をうかべて、首を横に振った。


「いいえ。待ってませんよ?ま、小町さんのためなら1時間でも2時間でも待ちますけど」


「―――ッ、は、恥ずかしいセリフを平然と言わないッッ!!」


「くく・・・」


 こ、こいつ・・・!!


 ホントに私をオトす気満々で、手加減なんぞしてくれない。こちとら恋愛ごとなんぞに慣れていないのに!


「凱、お前、常にそんな感じで先生を口説いてるのか・・・?」


 私が顔色を赤くしたり青くしたりしていると、若干呆れの混じった声(かなりの美声)が飛んできた。


 そちらを見れば、経済雑誌にも良く載っている美魔王(若く見えるおじ様の意)――日根君のお父さん(御歳45歳)――が困ったように笑って立っていた。


「うん、まぁね」


「まったく・・・うちの息子が随分とご迷惑をおかけしているようで」


「あ、いえ・・・凱君のお父様でいらっしゃいますね?私、担任の深山小町と申します」


「凱の父です。こうしてお会いするのは初めてですね。恥ずかしながら、子ども達のことは妻にまかせっきりなもので」


 日根父はにこりと笑うその顔が日根君にとても良く似ていた。


 日根母には3者面談などで何度か会っているけど、輸入業をしている日根父は忙しく飛び回っているから、これが初対面となる。


「お忙しいようですね」


「ええ。それに凱も未来(みらい)(日根弟)も中等部に入ってからは寮生活になりましたし、すっかりコミュニケーション不足です。まぁ、今回のように仕事関係のことには連れまわしてはいるんですが」


「凱君も未来君も学校ではとても優秀ですよ。お仕事の関係でお出かけする時に学校の話も聞いてあげたら喜ぶと思います」


「ええ、心がけます」


 なーんて、普通に会話出来ているのが不思議でしょうがないんですが!


 この泥棒猫!とか、テンプレなことを言われるとは思ってなかったけども、もうちょっと嫌な顔をされるとは思ってた。


 だって、大事な跡取り息子が、9つも上の、しかも担任にたぶらかされてるってことになるわけだし―――いや、たぶらかしてないけどさ!!


 だって、探偵使って調べたりとかしたんでしょ!?――コワイヨ、オカネモチ!!――あっさり納得しすぎでない???


 表情に出さないでそんなことを考えていたら、日根父が苦笑いをうかべた。


「深山先生には本当に申し訳なく思ってます・・・ですが、凱からは逃げられないと思って、諦めてください・・・」


「はっ?」


「凱のことをよろしくお願いします」


「はぁああっ!?」


 ちょっと待て!!何でいきなりお願いされてんの!?親公認!?親公認なのか!!?


「小町せんせー、諦めた方が良いよー。兄貴ってほんっとにしつこいし。こうと決めたらてこでも動かないから。

 父さんも母さんもそこんとこ、よーくわかってるから反対するだけ無駄って思ってるしさー」


 プチ混乱している私の肩をポン、と叩いてきたのは先程日根父との話題にもあがった、日根弟・未来君だ。


「え、だって、素行調査・・・」


「あー・・・、それ、暗黒からの情報?・・・やっぱ、こっちの動き知られてんだー。恋愛ごとなんて興味ないクセに・・・」


 ほんの少し気まずそうにそう言って、日根君はそっと視線を逸らした。


「素行調査は凱が必要としてただけですよ。先生をオトすネタを探るために。・・・我々はその伝手を紹介しただけですから。

 元々、妻から先生のことはよく聞いていましたし・・・それに、あのカロリー学院の教師というだけで全く問題ありませんから」


「オトすネタ・・・まぁ、そこは納得ですが。カロリー学院の教師というだけで問題なしって・・・理事長の人を見る目にも当たり外れはありますよ?」


「いやいや。外れの方はまず3年以上は勤まらないですよ」


「・・・まぁ、そうなんですけど・・・」


「生徒からも人気があるようですし」


 ニコニコニコニコ・・・。


 いたたまれないッ!!!


 生徒が涙目で板書するのを見て楽しんでるドSですよ!!?私!!


「いえ~・・・あのぉ・・・」


「小町さんはドSだけど、TPOを選んでるから偉いと思いますよ。俺は敢えてTPOを選ばずに小町さんを口説いてますけど♪」


「いやいや!せめて選んで!!っていうか、思考を読まないで!!!」


「ドS、ですか・・・まぁ、凱の相手をするにはそれくらいじゃないと難しいですよ。ただ大人しいだけのお嬢さんや我が儘たっぷりな小娘とかでは1日ともたないでしょう」


 日根父の口から小娘とか出たー!!!え、やっぱ魔王?息子に似て俺様!?


「父さん、父さん」


「ん?何だ?未来」


「化けの皮剥がれかかってるよー?」


「ふっ、驚け。わざとだ」


「なーんだ。そっかー」


 未来君・・・なーんだ。そっかーって・・・納得するところなのか!!?


「それでお茶目なつもりか?親父のせいで小町さんが引いてるだろ?」


 いやいや、日根君?最初ッから引きまくりだから!!!


「おお、それはすみません。いやいや、最近凱の周りをうろつく小娘がどうも鬱陶しくてですね。つい・・・」


「・・・あぁ・・・元々、その対抗策として呼ばれたんですよね、私・・・」


「ええ、ついでに正式に婚約者として発表してしまおうかと思いまして。よろしくお願いしますね、先生」


「・・・って、はぁあああ!?それ、本気で言ってんですか!!?」


 日根父の爆弾発言に、私は全力でツッコミを入れた。


 外堀埋めるって・・・もう、コンクリで固められて、ガッチガチってことかい!!!

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