14.俺様崩壊!?
小町視点
「ふぉおお・・・信長様がちょーかっちょいい・・・、慶次っ、さすがのイケメン・・・!!」
はい、どうも。小町さんですよ!
いや、もう!さいっこうですよ!!
テンションアゲアゲですよ!!!
ええ、お察しの通り、名古屋おもてなし武将隊を見に来ました!婚約者(仮)となった日根君と。
まぁ、完全においてけぼりなのは、本人も納得の上だろう。それに、昨日の夜はちゃんと我慢したんだから、今日ははじけたって良いだろう!うん!誰が許さなくても私が許す!
「・・・ここまで反応が良いとは思わなかった・・・つか、放置プレイとか・・・くっ、さすがのドS・・・!」
とかなんとか、ブツブツ言ってるけど、そもそもこれを報酬にしたのは日根君なんだから、文句は言わせない。
そんなわけで、思いっきり楽しむことにした私は、婚約者(仮)兼お財布の日根君を引きつれ、グッズを大量に買い漁り、おもてなし演武を楽しみ、武将全員と写真をツーショットで撮ってもらった。
もちろん、カメラマンは日根君である。ただ、表面にこやかなのに黒いオーラをまとってるのが怖いんですけど。
「――絶対にオトす・・・確実にオトす・・・よそ見なんて絶対させない・・・」
ちょ、待て待て、呪うつもりか!!・・・つか、俺様発動か!?おもてなし武将がドン引いてんじゃないか!
「ひ、日根君?」
「凱ですよ、小町さん・・・ホラ、凱って呼んで?ね?」
ひ~~!なんか、怖いんですけど!!美形が真顔で迫るなぁああ!!
「が、凱、君?」
「――次、清州城に行きましょうか?」
名前で呼んだら機嫌が治ったらしい。にこやかにそう提案される。
「・・・っていうか、清州城って・・・」
「コスプレするって、約束したでしょう?」
張り合ってる!?おもてなし武将と張り合ってるんですか!!?いや、もちろん、やってもらいたいけども!!!
というわけで、日根家のリムジン(今日は私と日根・・・が、凱君の貸し切り)に乗り、清州城へと向かう。
つーか、モノローグで日根君って呼ぶのまで感じ取るのかよ!!
今、日根君って考えただけで、「小町さん?」って真っ黒笑顔を向けられたんだけど!!!アンタ、腹黒属性じゃないでしょうが!!俺様キャラ崩壊してるってば!!
なんてビビりまくってた私ですが・・・さすがのイケメン。武将コスプレが非常にお似合いで・・・清州城をバックに凱君のコスプレ撮影会をしてしまいましたとさ。
そして現在、甲冑を着込んで私の好み度がUPした凱君がまたも張り合いだしているわけです。
原因は私が「イケメン武将、最高」とか呟いたせいなんだけどね。つか、凱君を見て呟いたつもりが、なんか、おもてなし武将を思い返して呟いたってとられたようで・・・。
「・・・おもてなし武将隊と俺、どっちがカッコいいですか?」
グイグイ来る凱君に思わず後退る。
「ちょ、チョイ待って、凱君!」
トン、と背中に何かがぶつかる感覚がして・・・っていうか、背後壁っすよ!壁!!追い詰められてるよ!!私!!
ドン、と顔の脇に手をつかれて・・・って、いわゆる壁ドン!?・・・いやいや、近い!顔近い!!
「・・・小町さん」
「うひぁあああ!?」
「――う゛っ・・・っっ!」
至近距離で名前を囁かれて、ときめく・・・んじゃなく、叫び声をあげて足を振り上げた私は―――まぁ、ヒロインにはなれないね、うん。
「が、凱君・・・ご、ごめん・・・大丈夫?つ、つい、足が」
壁ドンされてつい足が出るってなんじゃそりゃ、だよね・・・。こりゃ、嫌われるんじゃないだろうか、さすがに。
そう思ったら、ズキッと心臓が痛くなって・・・って乙女かーいっっ!!え、マジか?私。いつの間にやらオトされていたようだ。
たぶん、あのお嬢様方から助け出してくれた時、だよなぁ・・・。結構ホッとしたんだわ、あの時。
しかし、あらぬ所への思わぬ攻撃は凱君といえどキツかったらしく。しゃがみ込んで悶絶している。
えーっと、こういう時は腰を叩くんだっけか?
「凱君・・・ごめんねー・・・」
ぽんぽんぽん・・・。
「――い、いえ・・・反撃が来ることを、予想してなかった俺が悪いです・・・精神的ドSだとばかり思っていたので・・・」
いやいや、無意識ですってば。意識的にやってないから。つか、どんだけ危険人物だと思われてんの?私。
精神的ドSは否定しようもないけど、肉体的ドSは範疇外だからね!?
「いやいや、あのね、凱君。私、肉体的に痛めつけるのが好きなワケじゃないからね?つい、ついよ?つい、イケメンの顔が近くにあって、テンパっちゃって・・・」
「・・・俺、イケメンです?」
おう・・・。自覚あるだろうが。
「イケメンでしょうが」
「いえ・・・小町さん的に、イケメンですか?」
「・・・だ、だから、言ってんじゃんさ。イケメン最高って」
「じゃ、俺だけで我慢してください。よそ見しないで・・・俺だけ見て・・・」
むぎゃーーーっ!!!涙目のイケメンが縋ってくるとか!!どんな罠!!?
これ、例えイケメンでも年上がやったらダメなヤツだよ。年下だから良いんだって!
大混乱中の私の裾をちょい、と掴んで。凱君が小首を傾げる。・・・くそぅ、あざといぞ!絵になるな!イケメン。
「小町さん、俺だけ、見てて」
「~~っ!!わ、わかった!!わかったから!!そんな目で見るな!!」
一昔前のCMのうるうるおめめのチワワを思い出すだろうが!!
ほんっとに、俺様キャラ崩壊してしまったよ・・・。
「――言質、とったから。・・・よそ見したら、お仕置き。わかった?“小町”?」
――とか、一瞬でも思った私が悪かった。・・・コイツ、やっぱり俺様だ!!マジで手段選ばねェな!!




