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第4話 錬金術

 足元にある小さな取っ手を掴み、開いてみると――そこには地下へと続く階段が伸びていた。

 まさか地下があるなんて……って一瞬思案するが、おかしなことに気づく。


「ちょっと待って……なんで下に繋がってるの? これって車だよね?」


「そうなの。特別製なの」


「そうなんだ……」


 意味は分からないが、とにかく今はシャルトーチを救うことが先決だ。

 おかしいことは後から考えるとしよう。

 考えたところで意味なんて理解できないだろうけど。


 階段を下りて行くと、長い廊下に出る。

 廊下はどこまでも伸びているような、無限に続いているような気がした。

 左右には一定間隔で扉があり、部屋も無尽蔵にあるように思える。


「扉……これのどこかに入ればいいんだ」


「そうなの。そこの部屋に入るなの」


「ここ?」


 肩に乗るリリルは手前から一番目の、左側にある扉を指さす。

 私は言われるがままその扉の前に立つ。


 扉は白色で、下におろすタイプのドアノブが付いている。

 ドアノブは抵抗なく下がり、入り口はすんなりと開く。


「ここって……」


「ここは錬金術の部屋なの」


【錬金術の部屋?」


 扉の中は無機質ながら広々とした空間で、中央には大きなツボ一つある。

 ツボは人間が数人入る程度の大きさで、その迫力に私は感嘆の声を上げた。

 しかしそれだけしかない部屋なのだが……どういう場所なんだろう。

 

 リリルは『錬金術の部屋』なんて言っているが、言葉だけで考えるなら錬金術を使用する部屋だと察する。

 何をどうすればいいのかはまったくわからない。


「それで、ここで何すればいいの?」


「今から使用方法をシェアするなの」


 リリルが目を閉じ、何かを念じ始める。

 すると私の頭の中に、この部屋と能力の利用方法が流れこんできた。


「さすがリリル。有能な子だね」


「えへへ。嬉しいなの」


 喜ぶリリル。

 能力の使い方も理解した。

 早速錬金術を使用するとするか。


 ツボの前に立ち、『錬金術』を使うことを意図する。

 すると空中に半透明なタブレットのようなものが浮かび上がり、私はそれをジッと見つめた。


「これを操作して何を作成するか指示するわけだ」


 浮かび上がった物には錬金術で作成できる一覧が表示されている。

 この中から作成したい項目をタップすると、アイテムを生み出すことができるというわけだ。

 後は私の魔力によって性能が左右されるらしいが……何を作れば良いんだろう。


「リリル。どれを作ればシャルトーチを助けてあげられるの?」


「毒消しなの」


「毒消し……ゲームの中では一般的なアイテムだな」


 そんなのでシャルトーチを助けてあげることができるのだろうか。

 私はリリルの言葉に一抹の不安を覚えるも、彼女を信じることにしよう。

 リリルが嘘を言うとも思えない。

 仲間の言葉を信じよう。


 浮かび上がるタブレット上に表示される言葉をスワイプし、毒消しを見つけた。

 そして毒消しをタップすると――必要な素材が表示される。


「必要な素材はお金で解決できるみたいだけど、今の所持金は……」


 文字の中に、私の現在の所持金が表示されている。


「12ギラ……ギラってこの世界の通貨なんだよね」


「うんなの」


 ゴブリンを倒したことにより得た収入が12ギラ。

 毒消しの素材はというと……3ギラで用意できるみたいだ。

 

「十分用意できるね。よし、作成開始だ」


 毒消しの素材を購入ボタンをタッチ。

 すると私の所持金が9ギラに減り、それと同時にツボが光り出す。


「ツボに向かって手を突き出し、魔力を注入すればいいってわけね」


 魔力の使い方は自然と理解できていた。

 両手から黒いエネルギーのような物が吐き出される。

 ツボがその魔力を吸収し、激しい光を放っていた。


「できたなの」


「もう完成?」


 ツボの中から、天を突くような光の柱が生じる。

 どうやら中で毒消しが完成したようだ。

 

 ツボにはハシゴが立てかけられているが――リリルが器用にそれを駆け上がり、中から毒消しを取って来てくれる。


「はいなの」


「ありがとう。シャルトーチの元に戻りましょう」


 毒消しは透明なビンの中に入った赤い液状の物。

 これをシャルトーチに飲ませばいいってわけだ。


 私はシャルトーチのいる場所まで走って戻る。

 彼女は車の外で癇癪を起しているようで、近くにあった岩を殴りつける場面に出くわした。


「全て憎いですわ! 何で私の思い通りにならないの!」


 シャルトーチの拳は岩を破壊する。

 鬼に取り憑かれていることにより、細い女の子の体からは想像もできないほどの力を発揮していた。


 これは近づいたら危ないな……どうするべきか。

 そう悩んでいると、肩に乗っているリリルが優しく口を開く。


「リリルが飲ませてくるなの」


「そんな……危ないよ」


「大丈夫なの。リリル、避けるの得意なの」


「…………」


 リリルが心配ではあるが……ここは彼女を信じよう。

 私は頷き、リリルに毒消しを手渡す。


「お願い」


「任せてなの」

 

 リリルは自分の大きさ程ある毒消しのビンを手にし、地面に着地する。

 そこから稲妻のような速度でシャルトーチに駆け寄り、彼女の背中を駆け上っていく。


「何をしてますの!?」


「えいなの」


 シャルトーチは腕を振り回してリリルを振り払おうとするが――リリルはシャルトーチの頭の上に乗り、彼女の口に毒消しを流し込む。

 

 ナイス! と私はガッツポーズを取る。

 咳き込むシャルトーチではあったが――毒消しを飲んだのだろう、黒い瘴気のような物が四散するのが目に見えた。


「ううう……」


 その場に崩れ落ちるシャルトーチ。

 私は彼女のもとに駆け寄る。


「大丈夫?」


「すみません……暴走していたみたいです」


「シャルトーチ……」


 彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべ、私を見上げていた。

 鬼の力で暴走するのは彼女の意志ではない。

 ただその呪いにいいようにされているだけなのだ。


「でも効果があって良かった。ただの毒消しなのに、抜群の効き目だったね」


「毒消し……そんな物で症状が治まったのですか?」


「そうみたい。リリルの言った通りだったね」


「えっへん。って言いたいところだけど、すごいのはチドリ様の魔力のおかげなの」


「そうなの?」


 リリルは頷き、話を続ける。


「チドリ様の魔力によって錬金術で作成するアイテムの性能は左右されるなの。だからただの毒消しでも、チドリ様の魔力を持ってすれば万能の回復薬に早変わりなの」


「おお……ってことは私の魔力が高いってことだよね」


「うんなの。チドリ様の魔力は――9999なの」


「「9999!?」」


 私とシャルトーチの驚きの言葉が重なり合う。

 まさか魔力が9999とは……

 私は数字に驚くだけだが、シャルトーチは驚愕にガタガタ震えだした。


「魔力9999……そんなの聞いたことありませんわ!」


「あー、私も聞いたことないなぁ。主人公を魔力特化に育てても、999が限界だったもんね。というかリリル、私の魔力が分かるんだ」


「うんなの。リリルは人の能力を分析できる『魔眼』を持ってるなの」


「『魔眼』……なんて役立つ子なの。私のサポートしてくれるし、本当に最高の仲間と出会えた気分」


「チドリ様の役に立ててうれしいなの!」


 リリルが頬ずりをしてくる。

 うん、一生頬ずりしててもいいぐらいに気持ちいい。

 私からも頬ずりをし、ポワポワと温かくなるやりとりをする。


「あの!」


「はい?」


 シャルトーチが何か言いたげに、真剣な表情を浮かべている。

 何を言おうとしているのだろう。

 私はリリルと頬ずりをしながら、彼女の方を見た。

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