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第12話 山火事

「ああ……綺麗な景色が……」


 華やかな景色が一変、焦土と化した悲惨な山の風景。

 これを私がやったのか。

 あまりのショックに、私は焦げた地面に膝をつく。


「バレるよね……私が悪いよね」


「えっと……そうですわね」


 シャルは気の利いたことを言おうとするが、言葉が出てこないようだ。

 あまりにも悲惨な景観に、ただ顔を青くするばかり。


「ま、まぁやっちゃったものは仕方ないよね……バレる前に逃げたらいいと思うし」


「それは良くないと思う。悪いことしちゃったから、謝りに行かないと」


「誰に謝りに行くの?」


「町の代表とか?」


「代表か……会いたくないな」


 ルキアは代表のことを頭の中に思い描いたのか、ゲッソリとした表情をする。

 そんなに会いたくないんだ。

 どんな人なんだろう。

 まぁルキアが会いたくないなら、私も会いたくはないけど。


「とにかくその人に会いに行こう。けじめはつけなきゃだし」


 会いたくはないが会いに行かなければ。

 自分がしでかしたことは、自分が責任を取らないと。


「はぁ……」


「ルキア、どうしたの?」


「いやー、やっぱり私、魔術の才能も無いんだ。リリルに教えてもらったけど全然使えないんだ」


 リリルに魔術を習っていたルキアであったが、最後まで使えるようにはならなかった。

 彼女は大きな魔力を備えているのは確かなようだが、なんとも不思議な話だ。


「リリル、どういうこと?」


「分からないなの。基本的な攻撃魔術も使えないなの。【スキル】が関係しているかもしれないけど……」


 【スキル】とは特殊能力のこと。

 私のスキルは【キャンピングカー】で――あれをスキルと言っていいのか正直疑問に思う所だけど、とにかく個人個人違うものを持つ変わった力のことだ。


 ルキアのスキルは何なのか……聞いておきたいけどそれより火事の問題を解決しないと。


「基本的なこともできないのか……ルキアのことはまた後で考えよう。それより私の出頭が先だ」


「チドリ様は犯罪者じゃないなの!! ちゃんと謝ったら許してくれるはずなの」


「そうだといいんだけどねぇ」


 リリルは私をかばってくれるようなことを言ってくれるが、果たしてそう上手くいくだろうか。

 このまま投獄されて、一生牢屋の中で生活しないといけないかも。

 そんなことを想像すると、全身に寒気が走る。

 ああ、なんてことをやってしまったのだろう。

 

 魔力が高すぎるのも問題だな。

 というか、もう少しコントロールできるようにならないと。

 また同じ轍を踏むのは嫌だから。

 ま、次があればの話だけど。


 それから私たちは町に戻り、代表が住んでいる建物へと向かう。

 しかし町を歩いていると住人が、先頭を歩くルキアを揶揄するような言葉を投げつけてくる。

 こんなところは一刻も早く立ち去りたい。

 ルキアの潜在能力を知れば見直してくれるはずなんだけど……基本の攻撃魔術も使えないからな。

 もしかして絶望的なのかな、ルキアの評価を逆転させるのは。


「ここが代表の……って、なんだか騒がしいな」


「本当ですわね。何かあったのでしょうか」


 代表が住んでいるのは、周囲よりも一回り大きな建物だった。

 多くの人と会議をするためか、入り口から見える部屋は広い。

 そこに大勢の人が集まり、何かを話し合っている最中のようだ。

 

 もしかして山を燃やしたことを話しあっているのでは…… 

 私は冷や汗をかきながら、町の人達の集まりに近づいて行った。


「どうする……あんな化け物、俺たちじゃどうすることもできないぞ」


「それはそうなんだろうけど、でもどうにかしないと町が滅ぶぞ」


「そのどうにかをできないから困っているんだろ。くそっ。なんであんなやつが現れるんだ」


 青ざめた表情で会話をする住人たち。

 どうやらただ事ではないようだ。

 山火事のことでないことに、一旦ホッとする。


「山をも燃やしたとなると、相当近くまで来ているみたいだな」


「ああ……一刻も早く対処しないと」


 ギクッ! 

 山を燃やしたのは私です。

 再び汗を流し、私はソッと手を上げる。


「あのー」


「何だ君は?」


「ルキアと一緒にいた人間だな。何か用か?」


 周りと同じく羽が生えている白髪の老人。

 彼が町の代表のようだ。


 ルキアは彼を見るなり、急ぐようにして私の背後に隠れた。


「えっと、火事のことなんですけど」


「分かっている。あやつが現れたのだろう」


「あやつというのはよく分からないんだけど、私が」


「ふん、何も知らないくせに口を挟むな。ルキアと同じで、生産性の無い無駄なことを話す人間のようだよな」


「は? 無駄ってどういう意味?」


「そのままの意味だ。無意味で価値の無い、町のお荷物。これ以上分かりやすい表現は無いだろう?」


 カッチーン。

 私の怒りのボルテージが一気にマックスになる。

 人は誰だって価値がある。

 たとえ誰かにとっては無意味に思えたとしても、誰かにとっては大事なことなんて多々あるものだ。

 私にとってルキアは友達で、それだけで意味がある。

 それなのに私の友達を愚弄するとは……私は怒りのあまり、男に詰めよろうとする。


 が、


「その言葉、取り消してください」


「……人間。お前も無駄な話をしにきたのか」


 私が声を荒げる前に、威風堂々とした態度でシャルが口を開く。


「ルキア様は私の友人。彼女を愚弄するのは許しません」


「人間に許してもらわなくても結構。こちらはそれどころではない、さっさとお引き取り願おうか」


「あなたに大事なことがあるように、私にも大事なことがあります。ルキア様に謝罪をしてください。そうしていただけると帰らせていただきますから」


 男がシャルを睨みつける。

 シャルは怯むことなく、静かに男を見据えていた。


「シャルの言う通り、ルキアをバカにするのは許せない。彼女は弱いかも知れないけど……でも大きな力を秘めているのよ」


「ルキアに力が? ははは、それこそお前がルキアをバカにしているというもの。こいつに力なんてありやしないのさ」


 周囲がゲラゲラと笑う。

 全員が同意見であり、ルキアを見下している。

 なんて低能な連中なのだろうか。

 もう話し合いも必要無い。

 さっさとこの場を立ち去るとしよう。


 山の問題はあるけど、もうどうでもいいかも。


「シュウ! まずいぞ、あいつが町の近くを飛んでいる」


「まさか……町に近づいてきたのか!」


「どうするんだよ……あれと戦える者なんて、この町にいないぞ」


 騒然とする人々。

 代表の名前はシュウというらしく、走ってやって来た男の言葉に顔面蒼白となっている。

 緊迫した状況のようだが……ルキアに聞いたら分かるだろうか。


「ルキア、何が起きているのか分かる?」


「この騒ぎようから察するに……あの化け物が来たのかも」


「化け物?」


 ルキアも同じように顔を青くして私に頷く。


「うん。空の支配者と言われる、暴風のワイバーン。私たち鳥族の天敵なの」


「暴風のワイバーン……なんだか強そうな名前だね」


 『暴風のワイバーン』、それは間違いなくモンスターの名称だろう。

 ゲームの中には登場しなかったモンスターだ。

 ゲームの外側に来たから、想定外の敵に遭遇することもあるんだな。


 しかしこの怯えよう、強さは尋常ではないようだ。


「暴風のワイバーン……聞いたことはありますわ。二つ名を持つモンスターはAランク以上のモンスターに分類される。その中でも上位の強さを誇るのが暴風のワイバーン」


「Aランクモンスター……予想以上の強さかもね」


 モンスターはいくつかのランクに分けられているのだが……Aランクは単独はおろか、腕利きの戦士が集団で挑んでも勝ち目は薄いと言われているぐらいだ。

 住人たちが大騒ぎする理由がようやく分かった。

 これは危機的状況と呼んでも差し支えないほどだな。


「シュウ、どうすればいい?」


「シュウ……俺たちの町はどうなるんだ?」


「……戦うしかあるまい。命を賭して、鳥人の誇りをかけて!」


 身震いする住人たち。

 なるほど、特効を仕掛けるってことか。

 もう少し考えて挑めばいいのに……そういやゲームでも、獣人は無鉄砲なのが多かったなと思い出す。

 こんなのばっかなのかな、鳥人というのは。

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