第5話 戦いの意味
4人で歩き始めて、すぐに分かった。
速度が揃っている。
無理に合わせているわけじゃない。
ミナ「……安心だね」
ミナが何気なく言った。
ミナ「信頼できる仲間がいるとさ、自分を守ってくれるみたいな感じがあるんだよね」
ソラが笑う。
ソラ「嬉しいな、信頼されてるって」
信頼――だがいつかは壊れてしまうのだろう。
この世界はたった1人しか生き残れないのだから。
ミナ「……待って。誰か来る……」
3人、いや4人いる。
その気配がどんどん増してきた。
???「おらぁ!!」
突然、前方から炎が襲った。
ハルト「まずいっ!」
ミナ「旋風陣!」
4人を回転する風が包む。
炎からギリギリ身を守れた。
ソラ「あっぶねぇ。いきなりなんだよ!」
最初に姿を現したのは、赤熱した空気を纏い、指先に炎を灯す男。
後から3人現れた。
レイ「情報可視化」
レイが4人の情報を読み取った。
ラウル
属性:炎
能力:火力加熱
【高火力アタッカー】
ケイル
属性:雷
能力:蓄電王冠
【エネルギー蓄積】
ガルド
属性:重力
能力:重力装甲
【前衛タンク】
ブラン
属性:鋼
能力:武器最適化
【万能武装】
ラウル「……へぇ。耐えるか」
ラウルが笑う。
レイ「あそこ、同盟組んでる。正面からぶつかるタイプ」
ソラ「なるほどなぁ」
ソラが苦笑する。
ガルド「通る。邪魔するなら殺す」
ガルドが1歩前へ出る。
それだけで、圧が生まれた。
ハルト「先に手を出したのはそっちだろ」
ガルド「あぁ?」
その圧だけで分かった。
負ける。今戦ったら死ぬ。
ハルト「俺たちになんの用がある。力比べがしたいなら、別の相手を探せ」
一瞬の沈黙。
ラウルが口を開いた。
ラウル「邪魔だったからやった。別にお前らには興味ねぇよ」
ブラン「行くぞ、こんな弱者相手にしてる暇ねぇだろ」
ガルド「そうだな。俺たちは強ぇやつを探してんだ。今回は見逃してやる。次はないと思え」
そう言い残して4人は歩き出した。
ケイルが振り向き、ハルトと目が合った。
その目には、雷を宿しているようだった。
ラウル「いいのか、あんなやつ放っておいて」
ガルド「弱ぇやつは成長してから殺す。そうでもしなきゃ満足できねぇからな」
その言葉がはっきりと刺さった。
4人は何事もなかったかのように去っていく。
巨大な圧、手も足も出ない。
ソラ「……なんだあいつら」
ハルト「今まで会った奴らとは違う。存在感がデカすぎる」
レイが静かに頷いた。
レイ「次は、無傷じゃ済まない」
ハルトは拳を握る。
正面からやり合えば、消耗戦となる。
だが――
ハルト「……壊す価値がある」
誰に言うわけでもなく、そう呟いた。
【参加者数:91】
数字が減る。
改めて、死を実感した。
その時、空気が変わった。
誰かが前に立っている。
白い服、整いすぎた姿、感情の薄い笑顔の少女。
ソラ「……誰だ?」
ソラが静かに言う。
レイ「……どういうこと?」
即座に反応した。
レイ「ログが……ない?」
敵意はない。
だが、違和感だ。
???「初めまして、でいいのかな?」
その声は、静かで優しかった。
このエリアは荒れ果てていた。
草木は枯れ、砂嵐が吹き、視界は不安定だった。
だが、4人は気にせず歩き続ける。
ゼイン「荒れてるな」
毒の匂いを纏った銀髪が、風に揺れる。
先頭を歩くのはクロウ。
存在が影と溶け合い、距離感すら曖昧になる。
クロウ「……来る」
その言葉だけで、3人は理解した。
プレイヤーの集団。人数は数十人。
動きは荒いが、殺意だけは本物。
ユリカ「うわー、多いねぇ」
ユリカは楽しそうに言った。
ユリカ「殲滅しがいあるじゃん!」
一方的な殺戮が始まった。
クロウは影に溶けた。
集団の1人が叫ぶ前に、喉元に黒い線が走り、声が途切れる。
「消えた!?どこだ!?」
「上だ!!」
違う。クロウは“存在だけ残して姿を残さない”。
恐怖が連鎖し、敵の動きが乱れる。
ユリカ「ほいっと」
ユリカが指を弾く。
見えない思考の刃がプレイヤーたちの脳に入り込み、
敵と見方の区別を崩す。
ユリカ
・属性:精神
・能力思考侵入
【精神妨害】
「おい!後ろだ!」
「違う、そいつは――」
混線した判断が、勝手に味方を削っていく。
ゼインの手には小さなナイフ。
そのナイフで次々とプレイヤーを切る。
その傷は浅い。だが、それだけで十分だった。
ゼイン「毒が回る感覚、知ってるか?」
力が抜けてく。
武器を持つ力も無くなり、次第に立てなくなった。
ゼイン
・属性:毒
・能力:遅効侵蝕
【持久削り】
最後にバルクが動いた。
バルク「退屈だ」
その巨体が踏み込むたび、地面が揺れる。
ゼインにより動けなくなったプレイヤーを、次々と吹き飛ばす。
バルク
・属性:獣
・能力:暴走強化
【単騎破壊】
バルク「もっと来い……もっと……!」
ユリカ「はいはい、落ち着いてー」
ユリカが軽く制しながらも、止める気はない。
戦闘は――成立してなかった。
ただの処理だった。
【参加者数:72】
ゼインが眉をひそめる。
ゼイン「……妙だな」
ユリカ「何が?」
ユリカが手先でくるくると毛先を弄ぶ。
ゼイン「あんな人数、よく同盟を組めたな」
ユリカ「確かにー」
バルク「いいじゃねぇか、大量に殺れたんだからよ。まぁ弱かったけどな」
バルクは腕を回しながら言った。
クロウは話には入ってこなかった。
どうやら戦い続けた疲労で少し休んでいるようだ。
バルク「残りのやつらもさっさと終わらせようぜ」
ゼイン「そうだな、さっさとこんなゲーム終わらせよう」
ユリカ「えー、もうちょっと楽しみたいのに……」
クロウは何も言わなかった。
ただ、影の奥で静かに目を細めた。
To be continued…
第6話 優しさは続かない




