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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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3/7

第3話 仲間とは

ペタリ、と足音。

2人の背後だった。


???「……助かった」


振り向くと、男が1人立っていた。

息が荒く、目が落ち着かない。


男「さっきの集団、去ったんだろ」


男が距離を詰めてくる。


男「俺、見てたよ。あんたら、戦わないタイプなんだよな?」


ハルトは答えない。

男の視線が、ソラではなく――ハルトの手元を見ている。


男「なぁ、」


男は笑おうとして失敗したような顔になる。


男「生き残りたいんだ。もう、それだけでいい」


1歩。


男「誰かを信じたいとか、どうでもいい。最後に立ってりゃ、勝ちなんだろ?」


そして。

武器に手が伸びた瞬間――


男「……っ!」


男が地面を強く蹴った。

ハルトが動くより早く、ソラが前に出た。


ソラ「悪いけどさ、」


ソラの足元に、水が滲む。

どこから現れたか分からない。地面から、空気から。


ソラ「僕、それ嫌いなんだよね」


水の形が徐々に変わる。

そして、透明な刃となりその形を保っている。


ソラ「流水刃(りゅうすいじん)!」


男「――っ!?」


男が構え直すよりも早く、水の刃が横薙ぎに走った。

肉を裂く感触は、音にはならない。血も最小限だ。

男はその場に崩れ落ちた。

倒れ方だけが、それが致命傷だと教えてくれた。


【参加者数:118】


ハルトは、初めてソラを見る目を変えた。


ハルト「……水か」


ソラ「あぁ。僕の属性が水で能力が確率操作水流(オッズ・リップル)って言うらしい。僕、結構賭けで物事を決めるタイプでさ、今のも賭けで決めたから」


ソラは軽く肩を回す。


ハルト「ソラらしいな」


ソラ「まぁさっき初めて技使ったけど。体が勝手に動いちゃって」


ハルトは何も言わなかった。

ただ1つ、確かなことがある。

戦わない選択は、誰かが許してくれる前提では成り立たない。それでも――


ハルト「行くぞ」


ソラ「了解!」


2人はまた歩き出す。

選択の重さだけが、確実に増えていた。


戦いの後は、いつも静かだ。

血も、傷も残ってない。

地面は最初から何も起きていなかったかのように整っている。


ハルト「死んだ人間がいた感じ、しない」


ソラ「不思議だな」


ソラは頭の後ろで手を組んだ。

ハルトは歩きながら続ける。


ハルト「痕跡が残らなければ、判断も鈍る。“さっきまで誰かがいた”って実感も薄れる」


ソラ「つまり、」


ソラが軽く笑う。


ソラ「人を殺しやすい世界?」


ハルト「……そうとも言える」


同時に、人が死んだことを悼みにくい世界でもある。


少し開けた場所に出た。

高低差の少ない平原。遠くまで見渡せるが、隠れる場所が少ない。


ソラ「ここは?」


ハルト「さっきよりはいいが、長居はできないな。少し休憩しよう」


ハルトはすぐに言った。


ハルト「見通しが良すぎる。監視されている前提で動いた方がいい」


近くの岩に腰をかけながら息を吐いた。

その時だ。

少し離れたところから、男の声が聞こえた。その声は怒鳴っているようだ。


ソラ「……聞こえた?」


ハルト「あぁ。様子を見るか」


2人は岩陰に身を寄せ、声の方を見る。

平原の少し離れた場所に、3人組がいた。

配置からして、どう見ても仲間内だ。


???「だから言っただろ!あそこで引くべきだったんだよ!」


1人が怒鳴る。痩せ型の慎重そうな男だ。


???「今さら何言ってんだよ!3人いれば行けたんだよ!ビビって下がったのはそっちだろ!!」


返すのは、大柄で勢い任せの男。


???「ちょっと、落ち着いてよ!」


間に入るのは女。

おそらく調停役であろうその声は、どこか必死だった。


女「今喧嘩しても意味ないから!まずは方針を――」


大柄な男「……なぁ、」


男の声が、一段低くなる。


大柄な男「さっきからお前、逃げ道の方ばっか見てんだよ。生き残る気、あんの?」


女の動きが固まった。


痩せ型の男「よせ、俺も悪かった。だから仲間割れなんて――」


大柄な男「仲間?」


大柄な男が鼻で笑った。


大柄な男「都合のいい時だけだろ。邪魔なら、殺すだけだ」


刃が抜かれる。

女がちらりとこちらを見た。助けを求める視線。

けれど距離はある。ハルトは動かない。ソラも、動けなかった。


女「……っ!」


最初に倒れたのは女だった。

声を上げる暇もなく、崩れ落ちる。


痩せ型の男「おい!やりすぎだろ!」


痩せ型の男は叫んだ。


大柄な男「次は、お前だ」


迷いがない。逃げることもできず、短い金属音が何度か響いた。やがて痩せ型の男も、地面に倒れこむ。


【参加者数:113】


数字だけが、淡々と結果を残した。

大柄の男は肩で息をしながら、周囲を見回す。

ハルトたちのいる方角には、視線は向けない。自分の内側しか、見ていない目だ。

やがて男は、何かから逃げるように走り去った。

残されたのは、綺麗な地面だけ。

少しすると、その“死んだはずの場所”の輪郭さえ曖昧になっていった。


ソラ「……助けなくて、良かったのか?」


ソラがぽつりと聞いた。ハルトは、平原から目を逸らさない。


ハルト「助けてたら、俺たちが切られる。この世界では、情だけで生きていけない」


ソラ「……」


ソラは、眉をひそめた。


ハルト「そろそろ行くか?」


言い出した瞬間。空が暗くなった。夜だ。


ソラ「……!?急に暗くなるのかよ!」


驚いた表情で言った。


ハルト「……暗い場所での移動は危険だ。しょうがない、明るくなるまでここで待つか」


冷静に判断した。ソラはそれを承認した。


その夜、エリア東側の廃構造区では、風が異様に静かだった。

崩れた鉄骨と割れたコンクリートが折り重なり、月明かりすら地面に届かない。その暗がりの中心を、五人の参加者が固まって進んでいた。


「……ここら辺にいるらしい。見たよな、さっきの」

「あぁ、1人だ。単独行動」


参加者は全員、同じ考えを持っていた。

数で押せば勝てる。

この世界では、それが“正解”のはずだった。

その瞬間。

一番後ろを歩いていた男が、音もなく消えた。


「……おい?」


誰も気づかなかった。

倒れる音も、攻撃も気配もない。ただ、『いない』。


「……逃げたのか?」


その疑問が口に出される前に、別の男が膝をついた。

喉元に、刃物の感触だけを残して。


「な、何が――!」


影が、動いた。

いや、正確には影しか動いてない。

月明かりに照らされた壁。そこに映る人影が、一つ増えている。

だが、実体はどこにもない。


「分散しろ!背中を――」


号令を出そうとした男の声が、途中で途切れた。

その瞬間だけ、視界の端に“何か”が映った。

黒いコート。無表情な横顔。

()()()は、存在していなかった。

呼吸も、足音も、殺気すらも消したまま、

必要な瞬間だけ、現れては消える。


【シャドウ・フェード】

存在そのものを、世界から一時的に削除する能力。


「くそ……見えねぇ……!」


残った2人は、背中合わせに武器を構えた。

次に倒れたのは、恐怖で足を止めたほうだった。

最後の一人が、必死に後退したとき――

影の中から、ナイフが伸びた。


クロウ「っ……!」


クロウの肩に、かすかに血が滲む。

ほんの一瞬の油断。

ほんの一瞬、“存在している時間”が長かった。

だが、それで十分だった。

男が倒れる音だけが、静寂に響いた。

クロウは立ち尽くし、自分の血を一瞥したあと、静かに舌打ちした。

血の気配を消しきれないまま、彼は壁にもたれ、肩の傷を押さえる。


クロウ「……面倒だ」


呟いた瞬間。


???「でも、綺麗だったよ」


背後から、声。

クロウは一瞬で距離を取った。

そこに立っていたのは、3人。


???「はじめまして」


透き通る声、その声だけが、静寂な夜に響いた。

To be continued…

第4話 裏切りと信頼

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