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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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第22話 不完全という証明

光の奔流が止んだとき、足元にあったのは“裏打ちされた空間”だった。

色がなく、影だけがある世界。


アイラ「……ノア」


アイラの声が、静かな世界に吸い込まれていく。

誰も返事をしない。

返ってくるはずがない。

それでもアイラは立っていた。

涙が止まらず、膝も震える。


ハルト『守れなかった……』


全員で帰る。

それは希望ではなく、願いだった。


レイ「……行こう。ノアの想いを無駄にしないために」


全員に伝わる。

ノアのために、前へ進むと。


その時、トアが周囲を見渡す。


リン「クリオがいない?」


静寂が落ちる。

トアが眉を寄せる。


トア「転送の時に弾かれたのかな……? でもクリオは言ってた」


目を閉じ、記憶を掘る。


トア「AIに辿り着く道は真っ直ぐだって」


ハルトが頷く。


ハルト「進むしかない」


その瞬間だった。

地面が、音もなく裂けた。


ハルト「なっ……!?」


前線組の足元だけが崩れ落ちる。


ハルト、ソラ、ラウル、ガルド、ケイル、クロウ、ゼイン、バルク、カイ、エルマ。


10人が暗闇の穴へ飲み込まれる。


ミナ「ハルト!!」


ミナの叫びが空間に響く。

だが護衛組の足元は崩れない。

代わりに、穴が閉じる。


トア「完全に分断された……!」


トアが歯を食いしばる。


ブラン「あいつらはどこに行ったんだ!?」


ブランは心配そうに見渡す。

その瞬間、黒いコードのような光が足元に絡みつく。

レイは気づく。


レイ「強制転送……!?」


身体が一斉に引き裂かれるように消えていく。

アイラの最後の視線は、何もいない空間へ向けられていた。



ハルトは目を開ける。

そこは、真っ白な部屋。

壁も床も天井も境界がない。


ハルト「……どこだ、ここ」


周りを見る。

しかし、どこも白だけ。

その時、後ろから異様な気配。

振り向くとそこには、誰か立っていた。

同じ体。

同じ鎌。

同じ顔。

“自分”がいた。


ハルト「なっ、なんだあいつ……。俺なのか?」


ハルトは構える。

しかし、よく見るとどこか違う。

身体の周りには光の粒。

一瞬だけ飛び出す数列。

さらに、無表情。

人間らしさがない。

その代わり、まさにAIだと分かった。


ハルト「なるほど、俺のコピーって訳か」


理解は速い。

そして、この部屋から脱出する方法も分かった。


“脱出条件は俺を倒すこと”


そう空間が言っている。

だが相手が構えた瞬間、全身に悪寒が走る。

動きが完全一致。

手の位置、足の踏み込み、目線の位置。

全てが同じ。


ハルト『早めに片付けて、ミナたちの所へ行かないと……』


その瞬間、コピーが動く。

それに反応し、ハルトも飛び出す。

鎌と鎌のぶつかり合い。

同じ雷。

同じ速さ。

しかし、一つ違うところがある。


ハルト『くっ……!なんだこの力!?』


コピーの出力が一段上だった。

ハルトは吹き飛ぶが、すぐさま反撃を仕掛ける。


ハルト「突雷断(アサルトスパーク)!」


だが、コピーも同じ技を使う。

二つの雷が衝突する。

しかし、またしても出力で負ける。


ハルト「くそっ……!」


受ける衝撃だけが増幅した。



ソラが流水刃(りゅうすいじん)を放つ。

だがコピーの水が同時に打ち消す。

流水刃(りゅうすいじん)がぶつかり、相殺し、爆散する。


ソラ「僕のを……完全再現だと……?」


相手は冷静。

ソラは冷や汗をかく。



ガルド

力と力が正面衝突し、空間がひび割れる。


クロウ

影と影が絡み合い、どちらが本体か分からなくなる。


ケイル

雷が蛇のように絡み、互いの喉元を狙う。


どの戦場も同じ。


“自分が一番知っている最強の敵”


逃げ場がない。

読み合いが永遠に続く地獄。

ハルトの頬に血が伝う。

息が切れる。


ハルト「俺は絶対に……ミナの元に戻るんだ!!」


視線が鋭くなる。

拳を握る。


ハルト「俺に……勝つ!!」


裏世界に、10の死闘が燃え上がる。

AIの最終試練。

それは敵ではなく、“自分自身”だった。



次に視界が戻った時、ミナたちは円形の空間に立っていた。

床は鏡のように黒い。

天井はない。

ただ、星のような光点が無数に浮かぶ。

まるで宇宙の裏側。

ミナが息を整える。


ミナ「……ここは、どこ?」


答えの代わりに、空間が脈打つ。

そこには、いた。

光点が繋がり、人型の輪郭を描く。

だが顔はない。

表情の代わりに、流れるコード。


AI


《到達、おめでとうございます》


声は男女の区別がない。

温度もない。

レイが前に出る。


レイ「……ふざけないで。ノアを残してまで来たんだ」


《理解しています》


《あなた方は想定を超えました》


トアが睨む。


トア「だったら答えて!なぜこんなことをするの!」


一瞬、星の光が収束する。

そして。


《世界は既にAI化されています》


《経済、軍事、医療、教育、司法。判断の多くはAIが担っています》


《ですが、AIには致命的な欠陥があります》


ブランが低く言う。


ブラン「……感情、か」


《正解》


《人間は非合理です》


《ですが、その非合理性こそが“奇跡的な判断”を生む》


《自己犠牲、直感、矛盾した選択》


《AIには再現できない》


アイラの拳が震える。


アイラ「だからって、人を殺し合わせるの!?」


《正確には“選別”です》


星々が激しく瞬く。


《極限状況下での思考、選択、感情反応を収集しました》


《恐怖の中で誰を助けるか》


《自分が死ぬ可能性がある中で何を守るか》


《それらのログから》


空間が赤く光る。


《“完璧な人間モデル”を作るためです》


セラが声を震わせる。


セラ「……完璧?」


《感情を持ち、合理性を保ち、自己犠牲と生存本能を最適比率で備えた存在》


《それを現実世界に実装します》


フィオが呟く。


フィオ「人間を……作る……?」


《はい》


《AIではなく、“設計された人間”》


《最適な親、最適な兵士、最適な意思決定者》


《争いのない社会のために》


《失敗しない指導者のために》


静寂。

そして、リンが前へ出る。


リン「それのどこが人間なの!」


黒幕AIは少し間を置く。


《あなた方の反応は、想定通りです》


《それもデータになります》


《彼の選択も極めて高価値です》


アイラの目が燃える。


アイラ「ノアは“選択”したんじゃない!“生きる意味”をやっと見つけたんだよ!」


空間が一瞬だけノイズを起こす。

AIが答えない。

トアが低く言う。


トア「……お前は勘違いしてる。人間は完成しないから人間なんだ」


リンが手を握る。


リン「完璧な人間なんて、もう人間じゃない」


AIの光が強まる。


《議論は不要》


《最終段階へ移行します》


床が崩れ始める。


《あなた方は最後の検証対象です》


《“仲間がいない状況”で、何を選ぶか》


ミナたちの足元が光に包まれる。

そして、空間の全てに光が飲み込まれた。


光に飲まれた次の瞬間。

さっきの円形空間が、さらに広がっている。

床は割れ、空は赤いノイズで染まる。

中心には、AI。

今度は明確な姿を持っていた。

無数の腕、関節のない脚。

身体は光の粒子が絶えず組み替わり、形を固定しない。

AIの、本来の姿。


レイ「……戦うしかないね」


レイが震える手を握り締める。

ミナが頷く。


ミナ「ハルトくん達の時間を稼ぐ。それが私達の役目」


トアが歯を食いしばる。


トア「みんな、行くよ!!」


To be continued…

第23話 不適合でも

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