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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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20/22

第20話 残るもの

合体AIの討伐後。

前線の回復のため一度休憩をとる。

次々と起き上がり、最後にラウルが目を覚ます。


ケイル「ラウル、ごめん。今まで心配かけちゃって」


ケイルは頭を下げる。


ラウル「まったく、世話のかかるやつだぜ」


ラウルの顔は笑顔だった。


トア「みんな立てそうだね。そろそろ行こう。コアはもうすぐ……そこ?」


トアの目の先には大地の中心。

しかし、空間が歪み、地面が呼吸するように脈打っている。

そこにあった、世界の心臓部。

巨大な黒い球体。

表面には無数の幾何学模様が流れ、まるで思考している生き物のように脈動している。


ハルト「……あれが、コア」


ハルトが呟く。

皆は次々と近づく。

近づくだけで頭の奥がざわつく。

ノイズのような音が脳に直接触れてくる。

トアが一歩前に出る。


トア「それじゃあ、行くよ」


瞳が淡く発光する。


トア「内界透視(インナースキャン)!」


空間に透明な線が無数に走る。


世界の構造式。

見えないはずの設計図が展開される。


アイラ「すご……」


アイラは息を飲む。

コアの内部。

層、層、層。

防壁の奥に、一本だけ異質なラインがある。

この世界の構造と“噛み合っていない”経路。


トア「ここだ!“裏側”へ接続してる隠し経路……!」


だが解析は簡単ではない。

トアの額に汗が滲む。


トア「これ……無理やり後付けされた裏口だ……しかも常時変形してる……!」


線が崩れ、再構築され、逃げる。

トアは歯を食いしばる。


トア「捕まえるんだ……構造の固定を……!」


指を振るたびに空間がカチリと音を立てて凍りつく。

逃げ続けていた経路が、ついに一点に縫い止められる。


カイ「リン!今だ!!」


リンが前に出る。


リン「任せて!」


小さく息を吸う。


リン「虚空裂孔(ヴォイドスカー)!」


彼女の足元の空間がひび割れる。

見えない壁に、無理やり刃物を突き立てるように。

ギギギギ、と世界が悲鳴を上げる。

空間が裂ける。

暗い縦の亀裂、向こうは見えない。

光も音も吸い込まれている。


レイ「……開いた!」


全員は安堵し、喜ぶ。


ミナ「よかったぁ!」


クロウ「それじゃあ、さっさと行くぞ」


だが、その瞬間。


トア「……え?」


トアの視界に、解析ログが流れ込む。

さっきまで無かった警告。


構造バランス。

存在数。

世界安定率。


数値が急激に下がる。


トア「ちょっと待って……これ……」


トアの顔から血の気が引く。

コア全体の演算式が見える。


世界=〈プレイヤー総数+AI存在数〉×基盤演算領域


トア「……嘘でしょ」


全員が向こうへ渡った場合のシミュレーション。


結果

世界崩壊率:99.8%


演算暴走。

基盤消失。

この世界そのものがバグとなり消える。


ラウル「おい、どうした」


ラウルたちは嫌な予感を感じる。


トア「……全員が“裏世界”へ行った場合、この世界の全てそのものが崩壊する」


全員の背すじが凍る。

誰もが思考が止まった。


レイ「……ということは、」


トア「誰かが1人、残らないといけない……」


トアの手が震える。

視線の先、いつの間にかクリオが静かに立っていた。

その目がわずかに揺れる。


クリオ「……私は、伝えようとした」


かすれた声。

皆が一斉に振り向く。


クリオ「脱出方法を説明していた時……最後の情報を言おうとした瞬間」


あの時のノイズ。

音が歪み、通信が途切れた瞬間。


クリオ「AIが通信領域に干渉し、言語出力がブロックされた」


クリオの声はいつも通り無機質なのに、どこか重い。


クリオ「……申し訳ないです」


つまり、最初からAIは。


リン「……気づかせないつもりだったんだ」


リンが亀裂の前で立ち尽くす。

向こうへ行ける。

でも、全員は行けない。

世界の心臓の鼓動が、不安定に早まっていく。


ハルト「……その、残った1人はどうなる?」


クリオは無表情で答える。


クリオ「AIは新たにルールを追加しました。それが、“場外の境界線の縮小”。そして、その境界線は限りなく0になるまで止まりません」


その言葉で、レイは気づく。


レイ「まさか、場外となったプレイヤーは……」


クリオ「その場で排除となります」


言葉が詰まる。

誰も動かない。

誰も目を合わせない。

言葉にした瞬間、現実になるから。


ミナ「待って、誰か1人残っても場外になるなら……ここには誰もいなくなるじゃん!残ったとしても世界が崩壊しちゃうよ!」


ミナはクリオに問い詰める。

クリオは冷静に答える。


クリオ「裏世界に無理やり行くとなった場合、AIが想定してない行動により、バグを起こします。バグによりプレイヤーがいなくなると、プログラムが強制停止し全てが崩壊します」


クリオは周りを見渡す。

すぐそこには場外の境界線が。


クリオ「しかし、想定されたプログラムによりプレイヤーがいなくなった場合、バグは起きずにコアのみが存在する世界となります」


亀裂がさらに不安定になる。

向こう側がちらりと見える。

真っ暗な一本道。

その奥に、微かに光る一点。


クリオ「私が残れば良いのですが、プレイヤーとして存在してない私が残っても、意味なく終わります」


世界の鼓動が、カウントダウンのように鳴る。

ハルトの表情が絶望へと変わる。

全員で帰ろうと、そう決めた理想。

簡単に打ち砕かれたのだ。

レイが唇を噛む。

ソラのコインが、指の中で音を立てる。

ミナの視線が、揺れる。


静寂。


その時、誰かの足が僅かに動く。


???「……僕が、残る」


To be continued…

第21話 意味のある終わり

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