第18話 最適解
夜がほどけ、世界に朝という名の薄い光が差し込む。
色の抜けた空。静かな風。
ここはもう、優しい朝を許されない場所。
誰も眠気の顔をしていない。
目だけが、研がれた刃みたいに静か。
トアが前に出る。
トア「クリオに教えてもらった話だと、ここからはコア一直線だ。そして、AIプレイヤーも敵対してる。途中で来るやつは全部、止める」
覚悟ははっきりしている。
赤い点が複数、こちらに向かって動いていた。
リン「やっぱり、コアに行かせないために対策してきたか」
目の前に多くのAIプレイヤー。
レイが周囲を見て口を開く。
レイ「ここからは分担しよう。前線と護衛。突破速度を落とさない構成がいい」
皆が頷く。
レイ「守りが崩れたら終わり。役割は固定する」
ハルトは迷わず言う。
ハルト「俺は前に出る」
その声に、ラウルも答える。
ラウル「当然だろ。俺も前線だ」
クロウ「なら俺もだ」
ガルド、バルクもそれに続く。
ユリカは一瞬考え、護衛に立つ。
ソラも静かに並ぶ。
その後も次々と続き、前衛組が決まる。
前衛:ハルト、ソラ、ラウル、クロウ、ケイル、ガルド、バルク、ゼイン、カイ、エルマ
護衛組も決まる。
護衛:ミナ、レイ、ブラン、アイラ、ノア、フィオ、セラ、ユリカ、リン、トア
ノアが両手を広げる。
ノア「皆さん、お願いします!」
淡い光がアイラ、ミナ、レイに流れる。
アイラが息を吸う。
アイラ「回復、任せてください!」
ミナは全員に視覚を共有する。
レイの情報可視化でAIプレイヤーの行動情報を得る。
ノアのバフにより、どちらも鮮明に見える。
ミナ「私たちも、役に立ってみせる!」
ミナはハルトの方を見る。
もう甘い空気はない。
あるのは、前に進む意志だけ。
遠くで地面が割れる音。
最初のAIプレイヤーが現れる。
感情のない目、機械的な殺意。
ハルト「相手は人間じゃない」
ハルトが一歩踏み出す。
ラウル「なら遠慮はいらねぇ!」
ラウルは笑う。
クロウ「元から遠慮なんてなかったけどな」
クロウは影を広げる。
AIプレイヤーが突進してくる。
ハルトの身体が消える。
次の瞬間には、AIの胴体が裂ける。
ラウル「おらおら行くぜぇ!」
ラウルは走りながら次々とAIを燃やしていく。
クロウ「ふっ、つまらん」
クロウは影から影に潜り、AIを切り裂く。
バルク「来い、兄弟!」
ガルド「行くぞ、ブラザー!」
ガルドが正面から叩き潰す。
バルクが追撃。
ケイル「僕だって!」
ケイルはハルトの後につづき、加勢する。
雷の速さにAIはついていけない。
そして、気づいたら倒れている。
ゼイン「1人、また1人」
ゼインは次々と短剣で切る。
傷は浅いが、そこから毒は入り込む。
毒を入れこまれたAIは、遅効により動けなくなる。
ソラ「助かるぜ、ゼイン!」
ソラはゼインにより動けなくなったAIを、水刃によりトドメを刺す。
カイ「止まるな!エルマ!」
エルマ「当たり前よ!カイ!」
カイは見えない斬撃によりAIを切り裂く。
エルマは時間を遅延させ、易々とAIを倒していく。
レイ「残りAIプレイヤー数…46…43…38…」
誰も勢いを止めない。
圧倒的な数相手でも、前線は崩れない。
ハルトは地面を踏み込む。
その先には複数のAI。
ハルト「突雷断!」
一瞬の間に、全て切り裂いた。
AIは倒れ込み、光の粒子が飛び交っていく。
レイ「残り、20。この調子なら大丈夫」
レイは安心した声で言う。
奥からはまたもやAI。
その数はまさに20体。
ハルト「あとはあいつらだけか。よし、行くぞ!」
その時、地面が揺れる。
遠く、AIが光り始める。
1体ではない、全てのAI。
金属と光が流れ、中央へ吸い寄せられる。
ソラ「なんだあれ!?」
ゼイン「これは、止めに行った方がいいか?」
その言葉にハルトは地面を大きく蹴る。
そして、鎌を大きく振りかぶる。
しかし、間に合わなかった。
無数のAIパーツが空中で絡み合う。
腕が何本も生まれ、目が増え、核が重なっていく。
ハルトはその衝撃波により吹き飛ばされる。
ハルト「ぐっ……!」
ブランは吹き飛ばされたハルトを受け止める。
ハルト「助かった。ありがとう」
ブラン「礼はいらねぇ。それより、あれはなんだ?」
やがて、一つの巨大な存在が立つ。
人型だが、人ではない。
ハルト「……恐らく、AI同士を合体させてより強い個体を造るつもりだ」
ラウル「へへっ!雑魚がいくら集まったところで所詮は雑魚だ!そのでけぇ身体、俺が燃やし尽くしてやる!!」
ラウルは巨大な合体AIに突進する。
その時、レイはあることに気づく。
レイ「……!?待て!そいつは……!」
ラウルは気にせずに攻撃を仕掛ける。
ラウル「業炎爆砕!!」
圧縮された火球が一直線に伸び、合体AIにぶつかる。
大量の煙が舞う。
ラウル「ははっ!やっぱり雑魚だぜ!!」
しかし、その煙から出てきたのは無傷の合体AI。
一同は驚く。
ラウル「は!?確かに当たったはずだぞ!いくら硬くても無傷じゃ済まねぇ!!」
その瞬間、合体AIの巨大な腕がラウルを襲う。
その勢いは、速く、重い。
ラウル「ぐはっ……!」
一撃でラウルは吹き飛ばされる。
アイラはすぐさま回復する。
アイラ「大丈夫!?」
ラウルは立ち上がり、腹を押さえる。
ラウル「くそっ!なんだよあいつ!さっきのやつらよりも明らかに別格だぞ!」
まるで攻撃が無かったかのように、合体AIは動き出す。
レイ「……あの個体は、今までのAIとは違う。恐らく……」
バルク「よし、俺たちが行くぞ!兄弟!」
ガルド「俺たちの連携だ!ブラザー!」
バルクとガルドはレイが話終わるよりも先に走り出す。
レイ「ちょ、最後まで人の話を聞いて!」
2人は右足に狙いを定める。
拳が同時に振りかぶる。
ガルド「重力偏向!!」
バルク「流星打撃!!」
二つの拳が同時にぶつかる。
火花が散り、衝撃波が生まれる。
今度は効いた。
だが次の瞬間、砕けた部分が液体のように再構成。
構造が変わる。
ガルド「なんだと!?」
バルク「俺たちの攻撃が!?」
合体AIが2人目掛けて大きく蹴る。
ガルド・バルク「がっ……!」
ブランは2人を受け止めるが、勢いが強く受け止めきれない。
ブラン「くっ……なんて勢いだ!」
ブランの能力:武器最適化により、鋼の足裏から炎を噴射し勢いをつける。
なんとかブランは2人を抑えきれた。
ブラン「おい、大丈夫か!?」
ガルド「……あぁ、問題ない」
バルク「……俺も、無事だ」
身体はボロボロだが、立ちあがる。
レイ「もう、説明するからよく聞いて。あの個体は……」
エルマ「物理攻撃がダメなら……!ユリカ、行くよ!」
ユリカ「分かった!エルマちゃん!」
またもやAIに攻撃を仕掛ける。
レイ「だからぁ!人の話を……!!」
エルマ「時間擦過!」
エルマは時間を遅延させ、動きを鈍らせる。
合体AIは何か察知し、避ける体勢をとる。
ユリカ「思考侵入!」
ユリカは思考を妨害し、混乱させる。
能力自体は、効いている。
そして、エルマの放った斬撃が合体AIの腕部分に当たる。
エルマ「よし、当たった!」
ユリカ「ちゃんと効いてるよ!」
しかし次の瞬間、その傷は消える。
エルマ「えっ!?」
ユリカ「また!?」
合体AIはまたもや動き出す。
距離がどんどん近づいていく。
レイ「もう!ちゃんと説明するから聞いてよ!」
ようやく皆はレイの言葉に気づく。
ユリカ「あっ、レイちゃん。ごめんね」
エルマ「あら、気づかなかったわ」
レイ「……。」
レイはしょんぼりする。
レイ「まぁいいや。とにかく、私が言いたいのはあの個体は複数回の攻撃じゃダメ。一発で仕留めないと」
ラウル「一発で?」
レイは頷く。
レイ「そう。あの個体、一言で言うと攻撃を受けた瞬間に分析して、無効化してる」
ラウル「なんだと!?俺のあの一撃でもダメなのかよ!!」
レイは少し考る。
レイ「多分、煙でよく見えなかったけど、その間に再生したと思う。だから、それ以上の火力が必要」
攻撃は効かなかったんじゃない。
効いていたが、その後に無効化されていたのだ。
クロウ「まて、俺が考えるに、こん中で一番最大火力を出せるのはラウルだ。おいお前、もう1回やってこい」
クロウはラウルに視線を向ける。
ラウル「お前、誰に指図してんだよ!」
レイ「ダメ、ラウルの攻撃はもう効かない」
レイもラウルの方を見る。
ラウル「は?なんでだよ」
ラウルは少しキレている。
レイ「だってラウル、あのAIに攻撃したでしょ。もうその時点であなたの攻撃は無効化されてるから、いくら攻撃しようと効かないよ。あの個体、ラウルの最大火力でギリ倒せるくらい硬いのに。だから私の話を聞いてれば……」
ラウル「ギクッ」
クロウ「何やってんだよお前」
ラウルは申し訳なさそうに下を向く。
合体AIはもうすぐそこにいた。
合体AIの腕が変形。
砲身が形成される。
クロウ「まずいっ!」
光線が放たれる。
直線ではなく、曲がり、追尾する。
リン「危ない!」
リンが転移を発動する。
ギリギリのところで回避できた。
レイ「……っ!助かった」
だが余裕はない。
ハルトは拳を握る。
ハルト「じゃあどうすればいいんだ。俺が行ったところで無駄足だし……」
その瞬間、ハルトの脳内に一つの雷が落ちる。
可能性は低い。
ハルト「……いや、もうこれしかない」
ハルトは後ろを振り向く。
そこには、ケイルの姿。
To be continued…
第19話 信頼




