第16話 脱出方法
トア「どっちから聞きたい?脱出方法か全員17歳の理由」
ソラが勢いよく立ち上がる。
ソラ「僕は早く17歳の理由を聞きたい!ずっと気になってて」
レイ「私も後者。何か分かるかもしれない」
レイも続けて話す。
カイ「俺たちも初耳だな。少し気になる」
カイとエルマは顔を合わせる。
2人は知らないようだ。
クロウ「ただの偶然じゃないのか?ありえねぇ確率だが、0パーって訳じゃねぇし」
クロウは未だに疑っている。
トアは首を横に振り、静かに言う。
トア「偶然じゃない。この世界が“望んでいる”んだ」
ミナ「望んでいるって、AIが?」
トア「まぁ正確に言うと、17歳がこの環境に最適なんだ」
ラウルは腕を組み考える。
ラウル「なんで17歳なんだ?別に歳とか関係ねぇと思うが」
トア「じゃあ、少し複雑な話をしよう」
ラウル「えーまじかよ」
ラウルは頭を抱える。
ユリカ「いいよ、話して」
トア「まず、17歳って何になる前?」
突然問いかける。
エルマはすぐに答えた。
エルマ「大人になる直前の歳?」
トア「そう、子供と大人の“分岐点”。その強い“分岐点”を持つ人間だけが、AIによって選ばれて転送された」
アイラが呟く。
アイラ「でも、17歳なんていっぱいいるよ。そんな中なんで私たちなの?」
トアは黙る。
数秒の沈黙がやけに長い。
トア「……ここからは、少し言いづらい内容なんだけど」
ガルド「なんだ?気にせず言っていいぞ」
バルク「そうだ。遠慮はいらん」
トアの視線が全員をなぞる。
トア「……僕含め全員、強い“喪失”か“傷”を経験している」
全員の背筋が凍る。
トアは続ける。
トア「傷と言っても心の傷。家族、事故、裏切り、孤独、後悔、形は違っても、“取り返せない何か”を持っている」
静寂。
それぞれの視線が、床へ落ちる。
誰も互いを見ない。
見なくても、わかってしまうから。
ゼイン「……なぜ、わざわざそんな必要があるんだ?」
静寂の中、ゼインは問う。
トア「ここからは私の考察、この世界を管理しているAIは、人間を“状態変化”で評価している可能性が高い」
ノア「状態変化?」
ノアが反応する。
トア「人間は、安定している時よりも、極限のマイナス状態からプラスへ転じる瞬間に、最も大きな出力を記録している」
セラ「マイナスからプラス……」
セラは小さく息をのむ。
トアの考察は続く。
トア「絶望から立ち上がる時。喪失のあとに守ると決めた時。諦めかけた後に一歩踏み出す時。この逆転するエネルギーを、AIは人類最大の可能性と定義している」
ブラン「感情を燃料扱いか」
ブランは低く吐き捨てる。
トアは否定しない。
トア「あくまで今まで得たプログラムからの考察だけど、ほぼ合ってるはず」
ケイル「僕たちを酷い扱いするな、AIは」
ケイルは小さく目を伏せる。
トア「この2つが最大限出力を上げる条件。それに私たちが当てはまったってこと」
トアは下を向く。
トア「……ごめんねみんな、悲しい思いさせちゃって」
トアは頭を下げる。
フィオ「もとからそういう運命なんだし、謝る必要はないよ」
フィオは優しく声をかける。
ハルト「AIの目的はあるのか?そこまでする必要があるなら、何かしらあると思うが」
ハルトは目線をトアに向ける。
トア「残念だけど、その部分は分からなかった。恐らく目的こそ知られたくないから、厳重にプログラムされているらしくて」
トアは少し落ち込む。
ハルト「そっか、仕方ないな。とにかく目的はなんだろうと、ここから脱出しないとな」
リン「じゃあ本題にいきましょ。ここから脱出する方法、私が説明するよ」
???「いや、私から説明させて」
突然聞き覚えのある声。
感情のないその声。
リン「……君は?」
???「ハルトくんたち、久しぶりね」
クリオだ。
相変わらず突然やって来る。
クリオ「いいかな、私が話して」
リン「う、うん。いいけど……」
リンは戸惑っている。
今初めて会ったようだ。
それはカイとエルマ、加えてトアも。
クリオ「ありがと。それじゃあ……」
ハルト「待って」
ハルトは途中で止める。
ハルト「……君は、何者だ?そして、“どっち側”なんだ?」
クリオは淡々と話す。
クリオ「私は“ナビゲーションユニット”。そしてプログラム上、どちら側の味方にもついていません。AIが私に命令するならそれに従う。あなたたちが私に質問するなら、答えられるとこまで答える。そして、」
クリオの表情が少し和らぐ。
クリオ「どちらかと言うと、私は気になる方につく気でいます」
クリオの目線がハルトに向く。
ハルトはそれに気づいていない。
トア「じゃあ、今は味方ってことでいいかな」
クリオ「はい。安心して聞いてください」
クリオは説明を始める。
クリオ「それじゃあ改めて、ここからの脱出について情報を提供します。ですが、私には情報開示レベルが制御されていますので、予めご承知を」
その声はいつもより機械的で、感情の温度が削ぎ落とされている。
皆が静まる。
クリオ「この世界の中心部。そこに“コア”が存在します。この世界を維持している中枢構造体……いわば、心臓のようなものです」
ざわり、と場が揺れる。
クリオ「コアの構造は多層式。外殻は物理的防御、内側は情報層。通常の手段では破壊は不可能です」
少し間が空く。
まるで、言っていい範囲を確認しているみたいに。
ハルト「俺たちには壊せないのか?」
クリオはハルトに視線を向ける。
クリオ「コアを破壊できれば、その時点でプログラムは壊れ、あなたたちは元の世界に戻れます。しかし、先程も言ったように破壊はほぼ不可能です」
ラウル「じゃあどうすればいいんだよ。壊せなきゃもう無理だろ」
ラウルは不機嫌になる。
クリオ「なので、遠回りですが裏ルートからの脱出を試みます」
ミナ「裏ルート?」
ミナは首を傾げる。
クリオの目がトアに向く。
クリオ「トアの能力:構造解析。これにより、コアの“裏側”へ接続している隠し経路を解析できます」
次にリンを見る。
クリオ「解析で見つけたその経路を、リンの能力:短距離転移で強引に空間へ固定。道を“開く”」
誰かが小さく息を呑んだ。
クリオ「ただし――」
クリオの声が一段低くなる。
クリオ「二人の能力出力を最大限使用した場合でも、通路の維持時間は極めて短いと予測されます。数十秒単位の可能性が高い。さらに、一度その道が閉じたら、プログラムはそれに最適化し二度と開かなくなる」
失敗は許されない。
やり直しも、無い。
クロウ「そこさえ何とかなれば現世に戻れるんだろ。俺らがちゃちゃっと済ませばそれで終わりだ」
クロウは簡単そうに話す。
しかし、クリオは首を横に振る。
クリオ「いいえ、あなたたちが開ける道は現世への道ではなく“裏世界”、つまりAIのいる場所への道です」
皆は混乱する。
クロウ「は?どういうことだよ?そこに連れてってどうする気だ」
クロウは問い詰める。
クリオ「管理者のAIのプログラムを止めることができれば、コアを機能を停止できる。機能が停止したコアは破壊されたと等しい状態です。つまり、あなたたちがAIのプログラムを停止、もしくは破壊できれば現世に戻ることができます」
ほんの一瞬、静寂になる。
レイ「……なるほど、元凶となる物を破壊して間接的に停止させる。そんなところかな」
ソラ「少し面倒だけど、それしか方法がないならしょうがないな」
ユリカ「でも、そのAIって簡単に壊せるものなの?実態がなければ触れることすらできなそうだし」
クリオの瞳が僅かに揺れる。
クリオ「ご安心を。簡単にしか説明できませんが、管理者はAIでも人の姿をしています。ほぼ人間と言っても過言ではありません。なので、AIのプレイヤーのように倒すだけで構いません」
一同は安心する。
その時、クリオに“ノイズ”のような間が起きる。
しかし、皆はそれに気づかなかった。
レイ「……そういえば、AIのプレイヤーのこと忘れてた」
ソラ「そうじゃん!そいつらはどうするの?」
クリオは耳に手を当てながら答える。
クリオ「今の状態は完全に敵意を表しています。恐らく管理者の仕業でしょう。裏世界の侵入を阻止されない為に、排除を推奨します」
【参加者数:64】
残りのプレイヤーが表示される。
ハルト「それじゃあ、そのコアに向かいながら残りの奴らを倒そう」
全員が同意。
その時、空が暗くなった。
夜は、ゆっくり深まっていった。
To be continued…
第17話 伝えたい想い




