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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ


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第15話 最強になりたい

ユリカの震えていた手は、いつの間にかエルマにむいていた。

未来が決まる前に触れている。

結果の“直前”に指をかけている。

だったら。

「今」に触れないなら。

「決まる前」に触れればいい。


空間を裂く斬撃は――真下にズレた。


ユリカの視界が変わる。

色が消え、線だけの世界になる。

人の思考の流れ、選択の分岐。

時間が“結果へ流れていく前の揺らぎ”。

エルマが眉を動かす。


エルマ「……今……何をしたの?」


ユリカが答える。


ユリカ「時間は“結果を運ぶ川”。でも、その前に“流れ出す源”がある」


一歩踏み出す。


ユリカ「私は、そこに触れた」


エルマは遅延を最大限応用し、空間そのものまで遅延させた。

さらに、ユリカ自身にも遅延させることにより確実に当たる斬撃を飛ばした。

しかし、あくまで斬撃そのものは空間の遅延によってできたもの。

つまり、斬撃は“この世に実在しない”にほぼ等しい。

ユリカがそれに触れるためには……


エルマ「まさか……時間そのものに!?ありえない!」


エルマの瞳が初めて揺れる。

短時間遅延(クロノ・スロウ)は効いているのに、ユリカの動きだけが“予定から外れている”。

時間よりももっと深い。

“結果が決定する前の選択”に指が入ってくる感覚。

エルマは後退しながら何度も斬撃を放つ。


エルマ「嘘……嘘よ!私が最強なんだから!!あなたが勝てるはずはない!!」


ユリカ目掛けて飛ばされるが、攻撃の着弾が“予定からズレる”。

ユリカの目が強くなる。


ユリカ「この世界で“単独が最強”なんて幻想だよ」


エルマの表情が変わる。

焦り。


エルマ「違う!!私こそ最強よ!もう、誰にも私を止められないんだから!!」


両手を広げる。

空気が凍る。

世界が完全に止まったような圧。


エルマ「終局遅延領域(ジ・エンドオブクロノ)!!」


視界の全てが灰色に沈む。

動きはゼロ。

思考すら遅れる。

時間の全てを“終点”に押し込める。


だが。

その中心で、ユリカだけがゆっくり息をする。


ユリカ「もう、遅いよ」


エルマが目を見開く。

ユリカの周囲に、透明な波紋が広がる。


ユリカ「全干渉領域(フルインターフェア)


音が消える。


時間の流れ

思考の選択

能力の発動

因果の繋がり


すべてに“手”が伸びる。

ユリカが一歩進むたび、エルマの奥義の構造がほどけていく。


エルマ「……ダメよ……そんなの!!」


ユリカ「あなたは“遅らせる側”」


静かな声。


ユリカ「でも私は、“決まる前に触れる側”」


手を前に出す。


ユリカ「終わる未来は、選ばせない」


エルマの視界が白く割れる。

遅延が崩壊。

時間が通常に戻る瞬間、ユリカの干渉が確定する。

エルマは静かに崩れ落ちる。


静寂。

ユリカは立っている。

息は荒れ、視界がぼやける。

強い頭痛により、少しふらつく。

それでも、


ユリカ「届いたよ、レイちゃん」


小さく呟く。

世界の因果に、初めて“人間が触れた”瞬間だった。



同時に消える二人。

衝突音が連続する。


雷の直線加速

風の曲線機動


ぶつかるたびに衝撃波。

カイの斬撃が飛ぶ。

だが今度のハルトは読んでいる。

全ての斬撃を避け切る。


カイ『こいつ、拳の軌道から斬撃の動きを全て予測しやがった!』


カイは空中で構える。

手を広げ、風を集める。


カイ「全部受けてみろ!!」


全ての風の刃が、無数に広がる。


カイ「空裂刃(エアリッパー)連撃(ラッシュ)!!」


ハルトの周りに放電が爆発的に広がる。

雷光が体を包み、瞳が光る。


ハルト「雷装解放(テンペストドライブ)!!」


稲妻が周りを覆う。

雷と風がぶつかり合い、爆ぜる。

煙が大量に舞う。


カイ「くそ、邪魔だ!」


カイは風で煙を払うが、そこにはもうハルトはいなかった。

カイよりも上空に現れる。

ハルトが手を空へ向ける。

雲が割れ、雷鳴が地を鳴らす。


ハルト「確かにあんたは強い。だが、(おれ)の方が(あんた)より速い」


巨大な雷柱が天と地を繋ぐ。


ハルト「天雷終焉(テンライエンド)!!」


カイの目が鋭くなる。


カイ「来い!!お前ごと全てぶった斬ってやる!!」


両腕を上げる。

今まで以上に風が増す。


カイ「絶空断界(ゼックウダンカイ)!!」


周囲の空気を極限圧縮。

見えない刃が幾重にも重なる。


カイ「俺こそが最強だぁ!!」


衝突。

世界が白く光る。

だが、止まる。

押し合う力。

静止した光の中、ハルトは思い出す。



草原の上。

ハルトとラウルは2人で座っている。


ハルト「ソラが言ってたぞケイル、雷を吸収して戦ってるんだってな」


ハルトはソラが見た、ユリカへの攻撃について話した。


ケイル「まぁ、それが僕の戦い方みたいなとこがあるから」


ケイルは手に雷を宿す。

そして、それを吸収する。


ケイル「こんなふうに戦闘中にばらまいた雷を吸収して、一気に放つ。こうでもしないと、僕じゃ力不足だから」


ハルトは真似をする。

手のひらから雷を出し、取り込む。

しかし、上手くいかない。


ハルト「結構難しいな。よくできるな」


ケイルは下を向く。


ケイル「それでもユリカさんに負けたけどね」


その時、遠くから。


ユリカ「正直私の能力は戦闘向きじゃないし……」


声は小さいが、聞き取れた。


ケイル「……それ、僕が弱いって言ってるようなものだよね」


ケイルは振り返り、ボソッと言う。


ユリカ「あっ、聞こえちゃった?でもケイル君、強かったって!」


ケイル「今更そんな言葉で喜ばないよ……」


ケイルはさらにしょんぼりする。


ハルト「元気出せって。ほら、さっきの話の続きをしてくれよ。ほら、コツとかさ」


ハルトは慰めながら聞く。

ケイルは下を向いたまま話す。


ケイル「これは、僕のやり方だから伝わるか分からないけど……」



ハルトの頭の中で、ケイルの声が響く。


ハルト『電気を磁石のように……吸収する』


光の衝突の中。

ハルトの目が開く。


ハルト「放つ電気が陽極なら、俺は陰極の電気になってやる!!」


雷を身体へ引き込む。

皮膚が焼けるような痛み。

指先の感覚が消える。

視界が白飛びする。

血管が光り、自分が導線となる。


ハルト「おらぁぁ!!」


雷を“纏う”のではない。

“自分が雷になる”。

天雷終焉(テンライエンド)が形を変える。

一本の雷柱が、ハルトを通して放たれる。


カイ「……何だ、この出力は!?」


カイの断界が軋む。

少しずつ押し返される。


カイ「くそっ!最強は……俺なんだぁ!!」


だが、雷が貫通。

風を破壊。

ハルトは、切る。


ハルト「最強は何人いてもいいだろ。俺だって、最強だ」


直撃。

閃光。

轟音。

衝撃が全てを吹き飛ばす。


煙が晴れる。

地面に倒れるカイ。

風は消えている。

ハルトは膝をつきながらも、立っている。

体から煙が上がる。


カイ「……ふっ、やるじゃねぇか」


ハルトは息を荒げながら言う。


ハルト「仲間がいたからな」


空の雲がゆっくり流れる。

戦いの決着。

その時、空間が、紙のようにめくれた。


リン「ハルトくん!」


リンが周囲を見て、静かに頷く。


リン「……終わったみたいね」


ハルトは苦笑する。


ハルト「ギリギリだったけどな。ぐっ、痛ぇ……」


背中の大きな傷が痛む。

激しく動いたせいで、傷が広がっている。


カイ「……エルマはどうなった」


カイが地面に横たわったまま言う。


リン「ユリカさんの勝ちよ」


リンは少し笑顔だった。


カイ「……そうか、完全敗北だ。文句はねぇ」


カイはゆっくりと立ち上がる。

腹にできた傷を抑えながら歩く。


リン「みんなの所へ戻るよ」


リンは両手を広げる。

光の粒が四人を包む。

視界が白に染まる。


次の瞬間。

仲間たちのいる空間へ転送。

傷だらけのハルトたちの姿を見て、空気が張りつめる。

そこにはユリカとエルマの姿も。


ミナ「……どうだった?」


ハルトが親指を立てる。


ハルト「……勝った」


一拍遅れて、歓声と安堵の息。

アイラはハルトたちの傷を見て、すぐさま動く。


アイラ「酷い怪我……動かないで」


両手を重ねると、傷を水が覆う。


アイラ「生命修復(ヒーリングケア)


焼けるような痛みが、冷たい水に溶けるように消えていく。


ハルト「……助かる」


だかアイラの額には汗。


アイラ「深い……思ったよりも損傷が激しい」


その時、後ろから静かな声。


ノア「手伝うよ、アイラ」


目を閉じ、両手を胸の前で重ねる。

水が共鳴する。

ノアの能力:共鳴調律(レゾナンス・チューン)により、治癒力にバフがかかる。

アイラが驚く。


アイラ「治癒能力が上がってる!」


ノアが微笑む。

カイが拳を握る。


カイ「……痛みがなくなった」


骨の軋みが消え、裂けた筋肉が結び直される。

ハルトが背中を伸ばす。

傷が塞がり、痛みが取れる。


ハルト「これなら、動けるな」


ノア「無理しないでね」


戦闘の匂いが、少しだけ消える。


トア「準備、整ったね」


トアが静かに言う。


トア「これから脱出の説明、それと……」


少し間を空けて話す。


トア「なぜみんな17歳なのかを話す」


To be continued…

第16話 脱出方法

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