第10話 120%のぶつかり合い
クリオ『潜在制御:解除
――対象:120%』
次の瞬間、世界のバランスが崩れる。
クリオは告げた後、どこかへ消えてしまった。
ラウル「――っ!!」
最初に変化したのは、ラウルだった。
炎の色が色を失う。
赤でも橙でもない、白に近い熱。
ラウル「……ははっ」
ラウルが笑う。
ラウル「最高だ……身体が……熱を求めている!!」
踏み込む度、地面を蒸発させる。
爆風が全てを包む。
続いて、影が動く。
クロウの足元から伸びる影が、もはや“影”ではなかった。
立体化し、刃が空間そのものを切る。
クロウ「……ふっ」
クロウは明らかに笑っていた。
今まで見せなかった、クロウの笑った顔。
雷が、暴れる。
ハルトの一歩が地面に触れた瞬間、空間が“遅れて”割れる。
踏み込んだ感触がない。
足裏が地面を捉える前に、すでに次の位置にいる。
ハルト「速すぎる……!!」
身体が思考を置き去りにして動く。
その力は、他にも影響していた。
ミナ「……だめ……情報を……」
ミナは視野とレイのログをハルトに共有していた。
しかし、
ミナ「……情報を送れない!!」
レイ「……ハルトたちの力が強すぎて、伝達が遮断されている」
アイラ「あれが……ハルト?」
遠くで見たいたソラたちもその力に驚かされている。
ソラ「なんだあの力!?あいつ、大丈夫なのか!?」
ユリカ「なにあれ!?すご〜い!!」
ブラン「ラウル、やっぱすげぇよ」
三つ巴の戦いは、2ラウンド目に突入した。
ラウル「白焔解放!!」
ラウルが腕を振り下ろした。
炎が爆発しながら燃え広がり、全てを押し潰す。
ミナ「ハルト!!」
ミナの叫びが届くより早く、雷となって跳んだ。
ハルト「瞬避!!」
雷が弾けた瞬間、ハルトは――笑っていた。
ハルト「……あはっ」
自分でも驚くほど軽い声。
ハルト『やべぇ……止まれねぇ』
今までずっと戦いを、
「終わらせる側」だった。
「抑える側」だった。
「誰かが死なないように」立っていた。
でも今は違う。
世界が、速い。
敵が、強い。
そして――楽しい。
ハルト「雷装解放!!」
雷が再び弾ける。
だがさっきよりも雑で、荒い。
ラウル「いい顔になったじゃねぇか!!」
ラウルが吼えた。
炎が、もはや制御されていない。
白焔が身体の周囲で暴れている。
クロウ「お前ら……」
影が割り込む。
クロウの声は、どこか楽しそうだった。
クロウ「置いていくなよ」
影が、三次元的に跳ねる。
地面から、壁から、空間そのものから。
クロウ「影界侵食!!」
影が、炎と雷を包むほどに広がる。
その影は、空間を切り裂く。
ハルト「っ、来た!!」
雷が跳ぶ。
ラウルも炎で押し返す。
クロウの影が、ギリギリで2人をかすめる。
3人とも同時に思った。
同じだ。
強さが、全部同じラインにいる。
ハルト・ラウル・クロウ『最高だ!!』
3人は歯を剥き出しにして叫ぶ。
ハルト・ラウル・クロウ「試したい!!俺の……全てを!!」
正義とか、理想とか、犠牲とか、すべて関係ない。
今は、自分の強さを出し切りたい。
ハルトは鎌を振り回しながら叫ぶ。
ハルト「今なら――」
雷が、完全に感情と同期する。
ハルト「今なら全部ぶつけられる!!」
3人が同時に踏み込む。
雷。
炎。
影。
全ての出力が上がる。
これは――存在同士のぶつかり合い。
ハルト「天雷終焉!!」
雷が解き放たれる。
鎌を振り抜いた瞬間、雷は刃となり、意志となり、一直線に世界を断ち切りにいく。
迷いはない。
止める理由もない。
ただ――ぶつける。
ラウル「獄焔壊界!!」
白焔が爆ぜる。
熱量そのものが塊となり、飲み込もうと膨張する。
迎え撃つ。
世界を炎で塗り替える。
そして――ぶつける。
クロウ「無明断罪!!」
影が地面から、空間から、存在の裏側から伸びる。
斬るでもなく、飲み込むでもなく。
すべてを消す。
進路を断つ。
余地を奪う。
また――ぶつける。
衝突。
3つの力が完全に同一点で噛み合った。
轟音。
爆発。
そして、音が消えた。
止まった。
誰もがそう思った瞬間。
――世界が、押し返した。
衝撃波が、全方向へ解き放たれる。
3人の身体が、同時に弾かれた。
ハルトは、地面を転がり膝をつく。
雷が、消えかけている。
だが倒れない。
ハルト「……っは」
息を吐き、笑う。
ハルト「……決まらねぇか」
ラウルも、数メートル先で立ち上がる。
炎は揺らぎ、肩で息をしながら歯を剥く。
ラウル「全部ぶつけて、まだ足りねぇなんてな!!」
クロウは、影の中から姿を現す。
影は薄れ、呼吸は荒い。
それでも、立っている。
ミナ「……互角」
淡々と、そう告げた。
レイ「出力、威力、到達点、全部……同じだ」
3人の間に、ゆっくりと距離が生まれる。
誰も倒れていない。
誰も優位に立っていない。
全員は、確信していた。
もう一度やれば、耐えれない。
雷が、微かに鳴る。
炎が、燻る。
影が、揺れる。
3人は、互いを見据えたまま。
次の一歩を――踏み出す。
次で終わる。
120%の力は、まだ残っている。
削り切った先の“最後の火種”。
ハルトは鎌を構え、静かに息を吸った。
ハルト「これで……決める」
雷が無理やり引き出される。
さっきより遅く、
さっきより重い。
それでも――確実に殺せる一撃。
ラウル「……はっ」
短く笑う。
ラウルの炎も、明らかに様子が違った。
燃え盛るのではなく、凝縮されている。
ラウル「いいな、最後にふさわしい!」
炎が、心臓の鼓動に合わせて脈打つ。
クロウ「……はぁ」
クロウも動く。
だが、影を広げなかった。
代わりに、影を一点に集中させる。
刃でも、拘束でもない、“最後の影”。
クロウ『もう、どれが来ても……運次第だ』
それでも、構えを解かない。
三人が、同時に踏み出す。
雷が走る。
炎が吼える。
影が裂ける。
――その瞬間。
???「――やめろ」
空間が、止まる。
ハルト「……なに?」
ハルトが戸惑いを見せる。
ラウルとクロウも理解が出来なかった。
クロウ『……誰だ』
戦場の中央に、空間が折り畳まれるようにして、人影が現れる。
2人。
???「これ以上、続けてはならない」
To be continued…
第11話 世界の真実




