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現代恋物語  作者: taku
9/11

押すんだ!翔太!

あの夜、美咲が何を言ったのか、翔太はいまだにはっきり確信を持てずにいた。


本気かもしれない。

でも酔ってたし、冗談だったのかもしれない。


確かめたくても、翔太にはそれどころじゃない日々が続いていた。

担当していた案件で急なトラブルが起きて、上司からのプレッシャーと残業続き。


美咲に連絡をする余裕すら、正直なかった。


──気づけば、3週間が過ぎていた。


そしてようやく、全てが落ち着いた金曜日の午後。

翔太は恐る恐る、美咲にメッセージを送った。


「久しぶりに、飲みに行きませんか。」


数分後、返ってきた「いいよ。」の一言に、胸が少しだけ軽くなった。



店はあの時と同じ、ちょっと落ち着いた雰囲気の居酒屋だった。


「おつかれさま。」


「うん……美咲さんも、元気だった?」


「まあまあかな。翔太くんは忙しかったみたいだね。」


「うん……全然連絡できなくて、ごめん。」


少し間が空いた。でも、美咲は微笑んだ。


「忙しかったの、ちゃんとわかってるよ。……ちょっと寂しかったけど。」


翔太の胸がドクンと音を立てた。


「……俺も。ずっと会いたかった。」


「え?」


「……この前の、覚えてる?」


翔太の問いに、美咲は首をかしげた。


「え、どのこと?」


「飲んだあと……公園で、ちょっとだけ話したこと。」


「あー……え、私なんか変なこと言った?」


冗談っぽく笑う美咲。でも翔太は笑えなかった。


「そっか……覚えてないんだ。」


「ごめん……私、酔ってたし……」


美咲が曖昧に視線を落とす。翔太は少しだけうつむいたまま、テーブルに目を落とした。


だけど──そこで、ふっと息をつくと顔を上げた。


「いいんだ。……むしろ、ちゃんと伝えたかったから。覚えてないなら、もう一回言うチャンス、もらったってことだし。」


「え?」


「日を改めて、ちゃんと話したいことがあるんだ。……それまで、待っててもらえる?」


目を見て言った翔太の表情は真剣で、でもどこか柔らかくて。

美咲は驚いた顔をしながらも、ゆっくり頷いた。


「……うん。じゃあ、楽しみにしてる。」


店を出ると、冷たい風が街を通り抜けた。街にはイルミネーションが点りはじめ、カップルが肩を寄せ合って歩いていた。


翔太のスマホには、「12月24日」の予定がすでにそっと記されている。


“美咲に、本当の気持ちを伝える日。”


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