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現代恋物語  作者: taku
8/11

気づきたくなかった気持ち?酔った時は要注意

ここ数日、美咲は翔太とのLINEの返信をあえて遅らせていた。

話したい気持ちがなかったわけじゃない。ただ、あの駅前で見かけた光景が胸に残っていて、素直になれなかった。


(別に、彼が誰と会ってようと関係ない……はずなのに。)


でも、思っていたよりずっと、心がざわついていた。


──耐えきれなくなったのは、金曜の夜。


「ねぇ翔太くん、今って空いてたりする?飲まない?」


メッセージを送ってから、心臓がバクバクした。

3分後に返ってきた「行く!」の一言に、美咲はふっと笑っていた。



居酒屋の個室で、乾杯から始まった夜は、いつもより気楽で、ちょっとだけ特別だった。


「だから私さ、最近ちょっと考えてたんだよね。男の子って、なんでああも鈍感なのかな~って!」


「えっ、俺?なんかした?」


「うーん……どうだろうね?」


気づけば、美咲の頬はほんのり赤く染まっていた。

梅酒を3杯も飲んで、軽く酔っていた。


翔太が頼んだ唐揚げを1つ取って、「これおいしいね」と笑う彼女の笑顔に、翔太も少し顔をほころばせた。


「なぁ美咲さん。」


「ん?」


「最近、ちょっと避けてた?」


「えー……そんなことない……かも……あるかも……」


ごまかすように、グラスに口をつける。


「俺、なんかしたんなら謝るけど……俺、美咲さんのこと、ちゃんと考えてるよ。」


美咲は一瞬きょとんとした後、笑った。


「……ダメだよ。そんな顔で言われたら、好きになっちゃうかも……」


翔太の手が止まる。

彼女は酔ったように笑っている。けれど、その声はどこか本気の響きを持っていた。


「……え、今、なんて?」


「えー?なに言ったっけ?……んー、忘れた!」


唐突に立ち上がり、お手洗いに向かう美咲の背中を、翔太はただ見送ることしかできなかった。


(……本気か、冗談か。どっちだよ……)


けれど、胸の奥で何かが確かに弾けた気がした。



翌朝、美咲はソファで目を覚ました。


「ん……あれ、昨日ちゃんと帰ったんだ……」


スマホを確認すると、翔太から「無事に帰れた?水たくさん飲んでね」とメッセージ。


(……そういえば、昨日、何話したっけ?)


断片的にしか思い出せない。けれど、妙に胸がドキドキしていた。

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