クリスマスはいつになっても特別です
「……もう少し、なんかうまくいかなかったかな。」
翔太は呟いた。彼の前には豪華なディナーの席がまだ余韻を残していたものの、少し笑うしかなかった。
予約したレストランは、店側のミスで二人の席が用意されていなかった。しかたなく、すぐ近くのテーブルに案内され、最初は雰囲気がガラリと変わってしまった。
「うーん、まぁ、こういう日だから仕方ないか。」
美咲は肩をすくめ、そんな翔太の言葉に微笑んだ。
その後、夜のイルミネーションを見に行こうとしたけれど、クリスマスイベントの影響で人混みがひどくて、二人の世界を作るのはなかなか難しかった。騒がしい雰囲気に、翔太は少し肩を落としながらも、美咲と楽しんでいる自分を感じた。
帰り道、最寄駅に向かって歩いていると、美咲がついに言った。
「じゃ、私こっちだから。」
「うん、わかってる。ありがとう。」
翔太は美咲のほうを見つめ、心の中で告白を決意していた。しかし、そこでは言えなかった。美咲の目をじっと見ると、心の中の言葉が口にできない。
でも──
「……待って!」
翔太は突然、勢いよく美咲に声をかけた。そのまま駅に向かっていた美咲が振り返ると、翔太はもう電車のホームに足を踏み入れようとしていた。
「どうしたの?」
翔太は笑った。「俺、やっぱりもっと美咲と一緒にいたかったんだ。」
美咲は目を丸くして、しばらく静かに翔太を見ていた。でも、そんな彼を見た美咲の顔にも、何かを感じた。
「でも、駅は違うんじゃ……?」
「いや、ちょっとだけね。」
翔太は美咲の最寄駅に着くと、少し気まずいけど自然に話しながら彼女の家まで送った。
家の前に着いたとき、翔太は美咲を見つめ、決心したように深く息をついた。
「……美咲、俺、本当は今日、言いたかったんだ。」
美咲はちょっと驚いた表情をしたが、笑顔を浮かべた。
「え、なに?」
「いや、こんなふうに大人っぽく告白しようとするの、全然向いてなかったなって。だけど、伝えたくて……あの、俺、やっぱり美咲が好きだ。」
翔太は真っ直ぐに美咲を見つめた。すると、美咲はくすっと笑った。
「ありがとう、翔太。でも、そんなに大人っぽく告白しようとしなくても、私はあなたのこと、好きだよ。」
翔太は驚いて言葉を失った。美咲の言葉は、予想していなかったけれど、心からのものだった。
「本当に?」
「うん。だから……ありがとう。こちらこそ、よろしくね。」
それから、二人は自然に笑いながらお別れの言葉を交わし、翔太は一歩踏み出して美咲の家を後にした。
──初めての、ふたりの恋の始まりだった。