今どき男子も一目惚れします!
松井翔太は、半人前のくせに大きな野心を抱く、IT企業の営業職。
日々、クライアントのために頭をフル回転させ、仕事に没頭しているが、そんな忙しい日々の中で、ふとした瞬間に心の隙間を感じることがあった。
仕事では無敵の自信を持っているものの、心の奥に抱える「恋愛」に対しては、まるで自信がなかった。
彼の心を惹きつける女性は、いつもどこか遠い存在で、年上の落ち着いた雰囲気の女性に憧れがあった。
けれど、その「年上の女性」に対して、どう接すればよいのか分からず、手を出せずにいた。
そんなある日、翔太が訪れた新しいクライアント先のオフィスで、彼の目に留まったのは一人の女性だった。
「松井さん、こちらがご担当の田島さんです。」
担当者が紹介してきたのは、年齢的には自分より少し年上だろうという、落ち着いた雰囲気の女性――田島美咲。
彼女は、清潔感のある白いシャツに、シンプルな黒のスカート。背筋がピンと伸びたその姿勢と、冷静で穏やかな笑顔が印象的だった。
「はじめまして、田島美咲です。よろしくお願いします。」
その一言で、翔太の心は瞬時に引き寄せられた。
ああ、この人だ――と心の中で呟いた。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
翔太は、少し緊張した様子で答えた。
それでも、心の中で自分に言い聞かせていた。「大丈夫、大丈夫。無理しなくても、自然に接すればいい。」と。
ミーティングが始まると、美咲は頼りにされる存在で、仕事の話をリードしていった。
その頼もしい姿に、翔太はすぐに感銘を受け、思わずその目を離せなかった。
⸻
数日後、翔太は何度も何度もその美咲のことを考えていた。
仕事の合間に、偶然、オフィスの廊下ですれ違った際に、彼女が微笑んでくれたことに心が躍った。
「お疲れ様です、松井さん。」
その微笑みと一言に、翔太は完全に心を奪われた。
どうしてこんなにもドキドキするのだろう。年上の女性なんて、あまり関心がなかったのに――
「田島さん、こちらこそお疲れ様です。」
慌てて答える翔太だが、その声が少しだけ震えているのを感じていた。
その後も何度か彼女と顔を合わせるうちに、翔太は徐々に彼女に対して恋心を抱き始めていた。
それでも、彼女にはあまりに遠すぎる存在に感じていたため、積極的に話しかけることができなかった。
だが、ある日のこと。
翔太が昼休み、オフィスビルのカフェテリアでひとりで食事をしていたとき――
「松井さん、ここに座ってもいいですか?」
振り向くと、そこには美咲が立っていた。
彼女は普段の落ち着いた雰囲気そのままに、少し驚いた顔をしていたが、翔太はその瞬間、胸が高鳴った。
「え、あ、はい、もちろん!」
翔太は慌てて席を立ち、席を空けた。
「ありがとうございます。最近、ここのカフェのサンドイッチが美味しくて。」
美咲がにっこり笑いながら言った。
その言葉を聞いて、翔太は思わず心の中で呟いた。
「こんな自然に、話せるなんて。」
⸻
こうして、翔太と美咲の距離は少しずつ縮まっていくことになる。
だが、翔太が自分の気持ちに気づいたとき、すでに彼女には誰かがいるのではないかという不安が胸に広がる。
彼は、自分の気持ちをどう伝えるべきか、悩み始めるのであった。