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第9話滅びの扉、運命の再構築


 世界が”確定”した瞬間、私の視界は白い光に包まれた。

 まるで、全てがゼロに還るかのような、純白の虚無。


 だが、私はその中に立ち続けていた。

 この世界を”終わらせる”ために。

 あるいは――“新たな世界を創造する”ために。


 「……選んだのね」


 リゼの声が響く。

 彼女は静かに私を見つめ、その瞳に何の感情も宿していなかった。


 「ええ、決めたわ」


 私の言葉に、リゼは微かに微笑んだ。


 「あなたの選択が、どんな結末をもたらすのか――見せてもらうわ」


 その瞬間、私の周囲に無数の”文字”が現れた。

 それは、この世界の”物語”。

 かつて書かれ、私が改変し、今まさに終わろうとしている”虚構の記録”。


 私は静かに手を伸ばし、目の前に浮かぶ一つの”物語の断片”を掴んだ。


 ――“アリシア・フォン・ルクレティア、婚約破棄され、断罪される”。


 それは、かつての私がたどるはずだった運命。

 私はそれを握りつぶし、“新たな運命”を書き換える。


 スキル発動:「運命改変ストーリーリライト


崩壊する世界、流れ込む異物


 ――ギギギギギ……


 世界が悲鳴を上げる。

 私が”物語の結末”を塗り替えたことで、この世界の法則が崩壊を始めたのだ。


 「アリシア!!」


 突如、遠くから声が聞こえた。

 振り向くと、そこにはフェリクスがいた。

 彼の銀髪が光を反射し、揺らいでいる。


 「なぜ、こんなことを……!」


 フェリクスの瞳には、焦燥と恐怖が混ざり合っていた。

 私が何をしようとしているのか、彼は理解している。


 「……これは、私の責任よ」


 私は静かに答える。


 「この世界は、私が創った”間違い”だから」


 フェリクスは驚いたように目を見開いた。

 だが、次の瞬間、彼の表情は強い決意に変わる。


 「それでも……それでも、僕は君を守りたい!」


 彼は私に手を伸ばす。

 しかし――


 ――ズシャァァァァァン!!


 突如、空間が裂け、漆黒の裂け目が現れた。

 その裂け目の奥から、無数の黒い腕がフェリクスへと伸びる。


 「なっ……!」


 彼は抵抗する間もなく、その腕に絡め取られた。

 そして――


 フェリクスの姿が、世界の裂け目の向こうへと引きずり込まれる。


 「フェリクス!!」


 私は叫び、彼の手を掴もうとする。

 だが、指先がわずかに触れた瞬間、フェリクスの身体は粒子となって霧散した。


 “この世界に存在しなかったもの”は、世界の改変によって消滅する。


 それは、私自身が選んだ結果だった。


消えた世界、残された者たち


 私は震える手を見つめる。


 「……これで、よかったの?」


 私の問いに、誰も答えなかった。


 リゼも、ただ静かに佇んでいるだけだった。


 やがて、白い光が消え、私は”現実”の世界へと戻る。


 ――いや、それは”新しい現実”だった。


 私は学園の庭に立っていた。

 しかし、そこにはもう”かつての学園”はなかった。


 建物の形は同じなのに、そこにいる人々は――私の知る彼らではない。


 「アリシア様?」


 声がした。

 振り向くと、そこには見覚えのある少女がいた。


 だが――彼女の瞳には、私を知る記憶がない。


 「あなた……誰?」


 その瞬間、私は理解した。

 私が”改変した世界”は、私の知る世界とは全く異なるものだったのだ。


 私は、別の世界に来てしまった。


 ――続く。

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