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第8話滅びの境界、運命の分岐点




 世界が揺らいでいた。

 目の前に広がる光景が、まるで蜃気楼のように不確かだった。

 ここは、どこなのか?

 私は、今、どの世界にいるのか?


 「……これは、“境界の狭間”よ」


 リゼの声が響く。

 彼女は静かに私を見つめ、まるでこの状況をすべて理解しているかのように微笑んだ。


 「境界の……狭間?」


 「そう。あなたが”運命を決める”ための場所。すべての可能性が交錯し、一つの現実が選ばれる――その”瞬間”の中に、あなたは立っているのよ」


 私はゆっくりと周囲を見渡す。

 ここには何もない。

 ただ、白く霞んだ空間が無限に広がっているだけ。


 「……選べっていうの?」


 リゼは頷く。


 「ええ。でも――あなたは”どの運命が本物なのか”、まだ分かっていないのでしょう?」


 彼女の言葉に、私は息を呑んだ。


 確かに、私はまだ迷っている。

 この世界が”本来の世界”なのか、それとも”改変された世界”なのか。

 それすらも、私は正確に把握できていない。


 「……どうすればいい?」


 リゼは、微かに笑みを浮かべた。


 「簡単よ。“真実”を思い出せばいい」


揺らぐ記憶、呼び覚まされる過去


 ――ザァァァァァ……


 まただ。

 頭の奥で、ノイズのような音が響く。


 この感覚には、覚えがある。

 これは、私の記憶の中に”別の世界の情報”が入り込もうとしている証拠だ。


 “確定”してしまう。

 私は、その言葉を思い出す。


 だが、今の私は確信していた。

 “確定”しなければ、私は何も選べない。

 この世界を守ることも、何かを取り戻すこともできない。


 ――だから、私はすべてを思い出す。


 「……ッ!」


 私の中に、一つの光景が浮かび上がる。


 それは、“書き換えられる前の世界”の記憶。


改変前の世界、その真実


 そこにいたのは、私と――エリックだった。


 だが、そのエリックは今の彼とは違う。

 冷たく、どこか機械的な眼差し。

 まるで、“決められた役割を演じている”かのような違和感。


 「……アリシア、僕たちは”選択を迫られている”」


 「選択?」


 「この世界を維持するか、それとも”正しい世界”へ戻るか――その選択だよ」


 “正しい世界”?

 私は彼の言葉を反芻する。


 「待って、それはどういう意味?」


 エリックは少しだけ躊躇い、それから静かに答えた。


 「この世界は”偽物”なんだ」


 私は息を呑んだ。


 「偽物……?」


 エリックは淡々と続ける。


 「そう。この世界は、“あるべき世界”が改変された結果生まれた”虚構の世界”に過ぎない」


 “改変された世界”。


 では、私は……?


 「……私も、この”偽りの世界”の一部なの?」


 「違う。君は”例外”だ。だからこそ、君にはこの世界を”終わらせる権利”がある」


 終わらせる――?

 私は思わず身震いした。


 この世界を、消滅させるというのか?


リゼの選択、そして私の答え


 「……アリシア、思い出した?」


 ふと、リゼの声が響く。

 私はゆっくりと彼女を見る。


 「あなたも知っているはずよ。この世界は”間違っている”」


 「でも……この世界にも、生きている人がいる」


 「ええ。でも、それは”本来の世界”では存在しなかった人たちよ」


 リゼの言葉に、私は震えた。


 「つまり、この世界を消せば――“本来いなかったはずの人々”は消える?」


 「そう」


 私の手が、かすかに震える。


 この世界を消せば、多くの命が失われる。

 でも、この世界を維持すれば、“本来あるべき世界”は戻ってこない。


 どちらかを選ばなければならない。


 「アリシア」


 リゼが、私の手を取った。


 「どんな選択をしても、あなたは”間違い”ではない。だから――選んで」


 私は、静かに目を閉じた。


 どちらの世界を選ぶのか。

 それは、私自身の”存在意義”を決める選択でもあった。


 私は、そっと目を開けた。


 「……私は――」


 そして、その瞬間――


 世界は”確定”した。


 ――続く。

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